【投げ銭】ピカソを褒めてみる
今日はピカソを褒めてみます。
出だしで「今日は」とか書いてみましたが、たぶん誰も読まないと思います。
フォローなんか誰からもされてませんしね(笑)
さて。
世の中の人のピカソの評価はだいたい決まってると思います。
・変な絵を描く人
・子供の頃は凄く絵が上手かったって聞いた
・自己プロデュースに長けてたからあんな絵でも売れた
・なんか分からないけど凄いらしい
って所じゃないでしょうか。
まあ、確かにそうですよね。
あの絵で何億もするとは思えない。
子供が描いたようなって表現されてもしょうがない。
俺もそう思ってました。
実物をみるまでは。
確か上野にMoMAか何かが来た時だと思うんですけど、それぞれが誰の絵かは特に気にもせずにダラっと見て回ってたんですよ。
なんでかは覚えてないんですが、そんなに混んでなかったんですよね。
俺、美術館に行くととりあえず流し見して、後から気に入ったやつだけ戻って見直すことが多いんですよ。
最初から目当ての絵があるときは最初からじっくり見ることもあるんですけど、ああいうのって実はお目当てじゃないヤツのほうが面白かったりするんですよね。
で、ダラダラっとしたペースで絵を見て回ってたんですが、その中で1枚の絵が目に入りました。
先にオチから言っちゃうと、それがピカソの絵だったんですが、見た瞬間に急に悲しくなったんですよ。
「戦争の悲しさを描いた大作『ゲルニカ』」みたいな奴じゃなくて、なんでもない、特にストーリー性を見いだせない絵だったんですが、本当に急に泣きたくなったんですよ。
自分でも何が何だか分からなかったんですが、とりあえず美術館で急に泣きだしたら危ない感じになっちゃうんで、急いで端っこの方に行って眠いふりかなんかをして、その場を取り繕ったんですね(一人で行ってるんで別に無理に取り繕う必要も無かったんですが、恥ずかしかったんです)。
で、ちょっと落ち着いてから絵の方に戻って、名前を確認したらピカソだったんです。
ちょっと待て。
ピカソってこんなんなの?と。
ピカソって、子供の頃から美術の本に載ってるのを見てるわけじゃないですか。
ゲルニカだの、泣く女だの、アビニヨンの娘たちだの。
でも、どれもこれも変な絵だし、キュビズムの説明聞いても「はあ、そうですか。ばかじゃないの?」ぐらいの事しか思ってなかった訳ですよ。
でも、実物見るとぜんぜん違う。
何となく目に入っただけの絵でなんだか分からないけど泣きたくなるし、他の絵をみたら色とか線の歪みとかがドンピシャ過ぎて気持ち悪くなってくる。
なんだ?これ?と。
俺、今でもそうなんですけど、別に美術に詳しくないんですよ。
こないだも博物館で尾形光琳と狩野永徳の名前を思いっきり間違えてたし、いまだにシャガールの何が良いのかサッパリわからない。
どの時代の誰がどういうジャンルとか理解してないし、技法も画材も分かってない。
でも、ピカソの一件があって以来、「印刷された絵はしょせん印刷された絵」って事が分かったんですよね。
どれだけ高精細のスキャン技術でも、どれだけ綺麗な印刷でも、実物の大きさや、実物の色味で見ないと伝わってこない何かが存在する、と。
もう、それは理屈がどうこうとか、真贋がどうこうとか言う話じゃなくて、感覚でしか説明できない事なんですよね。
いや、他のちゃんとした審美眼を持ってる人だったら言葉に出来て見分けられる何かなのかもしれないですが、俺みたいな知識がない人間にはとてもじゃないけど説明できない。
結局俺はそれ以来、本物を見ていないのに評価をしないように気をつけるようになりました。
絵にかぎらず、食べ物も、演芸も、アトラクションも、音楽も、耳学問と実物とでは全然違うんだなと。
そういう頭じゃ分かったつもりの事を、「お前何も分かってないよ」と俺にまざまざと見せつけたピカソはやっぱり凄いんだなぁと思うわけです。
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