映画「前田建設ファンタジー営業部」を褒めてみる

2/11に見てきた「前田建設ファンタジー営業部」がとても面白かったんで褒めようと思います。

まず、前提として、この話は「実話を元にしたフィクション」です。
知らない人も結構いるとは思うんですが、前田建設って言う建設会社は本当にあって、しかも街の大工さん的な会社じゃなくて準大手ゼネコンって言われるようなかなり大きい会社。
ダムとか作っちゃう。

で、その前田建設が自社PRのために2003年に実際に立ち上げたサイトの名前が「前田建設ファンタジー営業部」。
もし、前田建設にマジンガーZの世界から仕事の発注があったら、どうなるのかを結構細かいところまで突っ込んで書いてあります。
マジンガーZの資料に当たって格納庫の大きさを算出して、そのためにはこのぐらい穴をほって、こういう機械を入れて、最終的に時間とお金がこのぐらいかかって…と。
前に流行った「空想科学読本」的な物なんですけど、それを企業PRに使って、自分たちの仕事の広さと深さを理解してもらおうって考え方が斬新で、当時結構バズったんですよね。
サイトの内容をまとめた本も3冊出てる。

その、ファンタジー営業部の企画が立ち上がって形になって行くまでの話がこの映画「前田建設ファンタジー営業部」です。

こういう説明をしちゃうと、「プロジェクトX」っぽい感じなんですけど、基本はコメディです。
序盤で話を引っ張るのは、おぎやはぎの小木博明。
ちょっと導入部分がコント調なのと、音声が明瞭じゃない(これは演者じゃなくて技術的な問題だと思う)のが難ですが、割とすぐに慣れました。
ノリノリでファンタジー営業部を作ろうとする彼に、あまり乗り気ではない(というか内心かなり嫌がってる)部下たち。
その部下たちがファンタジー営業部と言う仕事を通して、少しずつ自社の仕事の面白さを知っていく話です。

なんつーかなぁ。
とりあえず下らない。
ずっと下らない。
でもふざけてはいない。
コメディ映画で緊張感が必要なところでおちゃらける作りのってたまにあるじゃないですか。
変な演出入れたり、コメディリリーフ的な人がアドリブで踊ったり、安っぽいアニメや字幕入れてみたり。
ああいうのがない。
「翔んで埼玉」もそうなんですけど、こういう映画は真面目にやるからこそ面白いんですよね。
世の中にはそれを理解してない人がいるんですが、この映画もそういうのがない。
なにせ会社員ですから、社内ではふざけない。
軽口を叩くようなことはあっても、社会人としての範疇。
コメディっぽい演出は、ちゃんとタイミングを見計らって、そういうのが入っても良いところに入れてある。

そして、全編下らないのに、真面目な部分の抑えはしっかりしている。
「工事、おもしれぇぇ!」と言う、サイトで見た「ファンタジー営業部」の面白さがちゃんと残っている。
残っているっていうか、映像になっている分だけパワーアップしている。
登場人物が劇中で「ダムすげぇ!」ってなってるのを、見ているこっちも同時に「ダムすげえ!」って共感できる。

TVシリーズのドラマが映画化する時なんかに取られる手法だと思うんですけど、「事情を知らない新キャラを登場させる」ってのがあるんですよね。
既にいるキャラが、その人に対して説明する場面を用意することで、元のシリーズを知らずに見に来た人でもすんなりと世界に入っていける。
この映画は、それを「現場を知らない広報(ファンタジー営業部)の人」でやることで観客を登場人物に同化させることに成功しているんだと思います。

俺はネタバレ嫌い派の人なんで、あんまりストーリー書かないんですが、もうこれストーリー書いても良いんじゃないかなぁ。
面白いのはストーリーの複雑さとか、構成じゃなくて、もっと根っこの部分だもんなぁ。
とは思いつつも、ストーリーは書かないんで、ぜひ見に行ってみてください。

下らないから(笑)
あと、最後のスタッフロールが素敵ですから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?