FC岐阜 vs 松本山雅FC 試合前考察
はじめに
4月17日の第6節でFC岐阜はホーム岐阜メモリアルセンター長良川競技場で松本山雅FCと対戦する。今季J2から降格組だが、今のところ降格4クラブで1番手強い相手と言える。岐阜は2週間ぶりのリーグ戦でカターレ富山とのライバル対決を迎えたが、後半逆転に成功し、3-1と勝利。アウェイでは昨年9月以来の勝利を収めた。新型コロナウイルスの影響はまだ残っている中での戦いだったが、これまで途中出場の多かったメンバーや出場機会に恵まれなかった選手がしっかり活躍し、チーム力向上もできたことから、単なる1勝以上の重みを持つ勝利となった。今週の練習には富山戦で外れた6人も復帰していて、チームとしての成熟度は4試合を終えて、上がってきている。あと岐阜に必要なのは、「連勝」。連勝で言うと、昨年6月まで遡ってしまう。ここで強敵・松本を下し、連勝を収めることができれば、さらにギアを上げられるだろう。
一方の松本は、ここまで5試合を終え、3勝1分1敗の勝ち点10で4位につけている。試合を重ねるごとにこちらもチームとしての連動性は上がってきているものの、前節テゲバジャーロ宮崎戦は先制するも後半終盤に2失点。アディショナルタイムに同点に追いつく粘り強さは見せたが、ホームでこれまで1分1敗と勝ち点を落としている。ただ逆に、アウェイでは、3戦3勝と全勝中。岐阜としても、非常に警戒すべき相手である。アウェイでは、サイドを広く使いながら、中央へカットインのドリブルやクロスから得点を奪うことに成功している。
両チームの過去の対戦成績は、岐阜の3勝2分7敗と大きく負け越している。岐阜ホームで言うと、岐阜の2勝4敗とこちらも負け越している。前回対戦は両者がJ2に在籍していた2018年に遡る。2018年10月21日に松本のホームでの試合で0-0のスコアレスドローに終わった。その年の岐阜ホームの一戦は、岐阜が2-0で松本に勝利している。
両チームのスタッツ比較
上表はこれまでの戦いでの両チームのスタッツだが、岐阜に関しては、1試合少ないため、富山戦までの数値となっている。
攻撃面では、岐阜が1試合少なくして僅差ではあるが、上回っている。ガイナーレ鳥取戦が既に開催されていたとすると、おそらくもう少しこの数値は差が生まれるだろう。つまり、岐阜の方がより攻撃的に試合をコントロールしている。一方で守備的な数値で言うと、奪取ポイント、守備ポイントともに松本がリーグでも上の方に立っている。松本の一つの持ち味が厳しいプレスからボールを奪うことであるため、この辺りの数値はやはり高い。
ボール支配率を比較すると、岐阜がリーグトップの58.3%、松本は46.7%であることから、富山戦同様に岐阜がボールを動かしながら、ゴールへの糸口を探すスタイルをとり、松本はその岐阜のパス回しの綻びを突いて、ボールを奪ってカウンターを仕掛けるスタイルで臨むだろう。
両者のホットゾーンを比較すると、同じような色合いをしている中で、岐阜はボランチから左サイドにかけて、松本は両ワイドを軸としてプレーしていることがわかる。この試合1つキーとなるのが、両チームともに左サイドでの組み立ての形だろう。
上図は両チームのここまでの戦いでのプレーエリアをリーグ平均と比較した図である。左が岐阜、右が松本だ。まず岐阜を見てみると、やはり、中央ボランチのエリアからトップ下のエリアにかけては、赤色が集中している。赤色は、リーグ平均に比べて、プレー回数が多いことを示す。青色はその逆。サイドを見ると、右サイドよりも左サイドの方がプレー回数は多い。つまり、岐阜は全体的にボランチから左サイドでのプレー時間が長いことがわかる。一方の松本は、中央よりもサイドの方が赤色のエリアが多い。ただサイドによって、プレーの形が違うポイントがある。右サイド、3バックの場合には、右ウィングバックの選手は縦突破よりも組み立てに参加するスタイルをとる。一方で左サイドは敵陣奥深くまで入り込んでプレーしていることが左サイド奥の赤色の部分でわかる。リーグ平均と比べても、このエリアでのプレー時間が特に多い。岐阜は自陣右サイドへの警戒は強める必要がある。ただ、松本は中央では青色が多いため、岐阜のスタイルであるボランチのエリアではある程度プレーできるのではないだろうか。
両チームの予想布陣
両チームともに布陣の予想は非常に難しかった。岐阜は前節の富山戦と同じく4-2-3-1を予想。柏木のトップ下起用は富山戦でハマり、攻守の要となっていただけに、その良い流れを引き継ぐのではないかと考えた。GKは桐畑和繁。4バックの右は、松本が左サイドでの厚みを増すことを考えると、よりディフェンスに長けていると感じるのは、前節も起用された舩津徹也だと感じる。左は変わらず宇賀神友弥。センターバックはフレイレ、岡村和哉と予想したが、相手1トップ予想の横山歩夢のスピードを考慮すると、コンディション面にもよるが、愛媛戦のように、藤谷匠を起用することも考えられる。ボランチ2枚には山内彰と庄司悦大。ここには、ヘニキが入る、または、柏木が下りてくることもある。サイドハーフは右に前節ゴールを決めるなど調子の良さをアピールした窪田稜。左に畑潤基を回した。コンディション面で変わってくるが、左のスタートに、富山戦で違いを生み出した村田透馬や、これまでのように左起用が続く藤岡浩介も考えられる。トップ下に柏木陽介。1トップに前節2ゴールの山内寛史を予想した。ここはもし2トップで来る場合には、山内と田中順也やンドカ・チャールスが起用されるだろう。
一方で松本は前節同様に3-4-2-1を予想してみた。ただ、他の形で来ることも予想されることから、このあと、もう2パターンの布陣も紹介する。GKは古巣対戦のビクトル。3バックは宮崎戦から変更はなく、宮部大己、大野佑哉、常田克人だろう。中盤ボランチに前貴之と浜崎拓磨、もしくはパウリーニョを予想。試合ごとに怖さを生み出す両ウィングは右に下川陽太、左に外川凌だろう。2シャドーに住田将と菊井悠介。1トップはここまで既に5ゴールを決めている横山歩夢を予想する。
別パターンの1つ目として、松本は3-3-2-2もある。メンバー的にはほぼ変わらず、2トップの一角に村越凱光を起用した。ただこの形をとると、流動的に動く柏木をケアしようと前も引き出されるため、中央にスペースが生まれやすい。富山がこの形でやられているだけに、松本がこの布陣を取る可能性は低いだろうが、①よりも前線の厚みを増すことはできる。
もう1パターンとしては、両チームともに4-4-2のスタイルを取るミラー型の布陣。松本はこの形を鹿児島戦で試した。両サイドバックが攻撃的な選手であることから、3トップで前線が上がった裏を突いて、サイドで数的有利を作り出すスタイルだ。ただ、鹿児島よりも前線のプレスバックが速く90分通して続ける岐阜相手にはサイドで優位に立てるかは不明であるので、この形を取るよりも、より慣れている3-4-2-1の方が可能性としては高いだろう。
松本戦に向けた個人的見解による岐阜の戦い方
松本はここまで5試合でリーグトップの11ゴールを決めていることもあって、やはり守備面ではかなり気合を入れる必要がある。岐阜がボールを支配する時間は長くなるだろうが、展開的にも、松本がかなり攻勢をかける時間帯も何度か訪れるだろう。そこで重要なのは、受け身になりすぎないことだ。守備に人数をかけクリアしたタイミングでしっかりと全体を押し上げて下がりすぎないことを意識しなくてはならないだろう。
ポゼッションから松本を崩すポイントとしては、沼津戦で課題の一つとなったプレスに対して、しっかりと近い距離間で人数をかけてパスを回すことと、低い位置でミスをしないことだ。松本のプレススタイルとして、サイドの選手にボールが渡った瞬間に、FWとトップ下の選手でボールホルダーに圧力をかけてくる。例えば、下図のようにセンターバックからサイドバックにボールが渡ったときに、人数をかけてくるプレッシャーに対して、パスを出したセンターバックもしっかり後ろでパスコースを作り、ボランチの一角も近い距離によることを心がける必要がある。さらに、その動きを何度か見せたところで、前線の選手に当てるロングボールもこの試合は効果的だろう。両サイドバックに入る選手(ここでは宇賀神と舩津)はプレスをかけられても、トップめがけて正確にボールを蹴ることができる選手だ。
今季の岐阜が行っている前線からのプレスはこの試合も重要な動きになるはずだ。かなり前線の選手は運動量が求められるが、ハイプレスに対しては、松本の3バックは嫌う傾向にある。全体が連動してプレスと受け手に動く選手に対して、後ろから強くチェックに行くことが重要だ。
相手プレスをかいくぐり、サイド深くに入り込むことができれば、クロスからの得点が期待できる。松本はここまでクロスボールから4失点と、崩される形として多い。高さでやられるよりも、サイドでボールホルダーを追い越す動きからクロスを上げられるタイミングで、松本守備陣が一瞬ボールウォッチャーになり、ディフェンスの間に入り込まれて、シュートを打たれる。宮崎戦の1失点目がその形からやられた。そういう意味でも、ディフェンスの背後や間を突く動きが上手い柏木や窪田に期待がかかる。
一方で警戒するポイントの1つとしては、やはりFWの横山歩夢と両ワイドの下川陽太と外川凌の動き。とにかくサイドの2人に前を向かれた時に、縦を封じるディフェンスとそれと連動してしっかりと中を締めたい。横山は、ディフェンスの間にポジショニングしながら、一瞬でディフェンスの背後を取る動きが非常に巧み。さらに、その動きはチームとして共有されていると感じるのが、良いタイミングで両ワイドからスルーパスが供給される。ポイントとしては、4バックが適度な距離間を保つことと、両サイドハーフがこの試合は普段以上にプレスバックし、ウィングバックに対して、挟み込むようなディフェンス、または、ファーストディフェンスをサイドハーフが行うくらい下がってこられれば、そう簡単に岐阜も守備者の間を突かれないだろう。バックパス時には、しっかりとラインを押し上げることも欠かせない。
もう1点警戒すべきなのが、セットプレーだ。ここまで4ゴールを決めているほど、セットプレーに強さがある。今季の岐阜は高さでは簡単にやらせないだろうが、重要なのは、セカンドボールをしっかり岐阜が拾えるかどうかだ。松本の動きとして、ゴール前に混戦を作り出し、溢れてきたところをしっかり拾い、シュートを放つ。SC相模原戦では、松本がセカンドボールを回収していたことで、相模原は攻撃に切り替えることができず、失点もした。セットプレーに対して、高さ担当の選手同様に、セカンドボールを回収する選手も集中力を高める必要がある。
さいごに
4月の大一番となる松本山雅FCとの4年ぶりの顔合わせ。アウェイ全勝中の松本とホームで降格組の愛媛を既に下している岐阜の対決は、今節の1番の注目カードとなる。岐阜としては、今季持ち味のポゼッションと守備時の前線からのプレスを駆使して、勝ち点3を掴み取りたい。かなりの運動量が求められるだけに、選手交代の采配も重要となる。三浦俊也監督はここまで交代策は効果的に働くことも多い。それだけに、プレスの強度が落ちたタイミングでしっかりと選手交代を行い、プレスの強度を維持していきたい。
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