ただの欲望②
とりあえず、第一声は「久しぶり」と決めていた。
「1ヶ月以上、会えなかったから」
「先月忙しかったよね。」
なるべく「早く会いたい」気持ちを彼が重いと感じないよう、極力押さえて話した。1ヶ月ぶりに聞く彼の声も、特に変化無くて同じ世界にちゃんといたんだ。なんてことをぼんやり考えていた。
そして元気、就活どんな感じ?みたいな話から始まって今月いつ空いてるのかという話にもっていき、予定を決めた。それでも、就活とアルバイトで互いの空いてる日が合わず、会えるのは思ったより先になってしまった。
なんとなく正直、このまま予定が合わなくて2ヶ月くらいお互いなにも連絡せずに自然消滅するのかもな。と少し思っていた。でも、一個会う予定があるだけで、もう充分だと思った。
彼は、付き合いはじめた頃よりは確実に私に対する感情は薄れている。私にも同じことが言える。
でもそれは自然なことだと考えている。
この先も彼と付き合っていくかを決める基準は、私と接した際の行動に優しさを感じられるか否かである。まだそれを感じられるから、1ヶ月会わなくても私は彼を責めることはできない。
要件が済んだら、彼は電話を終えようとした。久しぶりに話したのに、もうちょっと話してもいいじゃん。と思いつつ予定の確認だけして電話を切った。
1番言いたいことを、いつも言えないままである。
「会いたくなったから、電話をした」
「1ヶ月声聞いてなかったから、聞きたかった」
「会う予定ができると、何でも頑張れるんだよね」
電話をきって、言えなかったセリフを反芻した。
私はなぜこういうことを対面でも貴重な電話(私は自分から電話をかけるのが苦手であるため)でも言えないのだろうか。
そして、先の見えない就活の中で彼との関係はどうなっていくのだろうか。
ただ会いたい。話したい。私のこの欲望は、就活において邪魔なものとなってしまうのだろうか。そんな悩みを抱えている。