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「鬼滅の刃」炎柱・煉獄杏寿郎に見るリーダーシップ論

※今回のエントリーはネタバレありですので、ご注意ください。

鬼滅の刃の快進撃が止まりません。

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そして、私の鬼滅の刃について書きたい欲も止まりません(笑)よって、今回はもはや映画の主人公とも言える炎柱・煉獄さんについて。

煉獄杏寿郎の曇りなき真っ直ぐな性格

原作を読んだり、映画を見て、煉獄さんを好きになった人は沢山居らっしゃると思います。私自身、原作の頃からの煉獄推しです。煉獄さんの魅力はひとえに、裏表のない真っ直ぐな性格、でしょう。炭治郎から日の呼吸について聞かれた時も知らないで話は終わりますし、映画の前の柱合会議では炭治郎、禰豆子兄妹を即断即決で斬首すべきと言い切りますし、お屋形様がこの兄妹を認めて欲しいと言っても「尊敬するお屋形様だが、理解できない考えだ!」と言い切ります。最後のやつは上司部下の関係とするとやりすぎにも思えますが、これが鬼殺隊の組織としての強さだと思います。

映画では、煉獄さんのそういうストレートな性格をそのまま表現しつつも、それだけにはとどまらない「柱」としての魅力を描いています。そして、煉獄さん自身、「柱なら誰でもこうする」と断言しており、「柱」となった人たちの人間性の素晴らしさを改めて感じさせます。その事を真っ直ぐに言い切れる煉獄さんはやっぱりかっこいいな、そういうふうに感じました。

煉獄さんが理想のリーダーたる所以(1)ぶれないビジョン

さて、その煉獄さん。彼を理想のリーダー、上司として見る人も多いのではないでしょうか。もうそれについては何の異論もございませんし、そういう記事も出てたりしますので、ご興味のある方はご覧になってください。私からはそれらとは少し違う視点で、彼のリーダーとしての凄さを書きたいと思います。

まず1つ目の凄さ。「ぶれないビジョン」です。これは経営学やリーダーシップ論の世界ではいつも言われていることです。ただ、実際にこれができている人は殆ど居ないと思います。私も色んな人を見てきました。皆さんが知っているような有名な経営者も数名ですが見てきました。この人はぶれないなあと思う人も勿論いらっしゃいますが、決して多くありません。簡単なように見えてなかなか難しい。煉獄さんのように、相当軸を持っていないと、人はすぐブレます。経営者レベルの人でも簡単にブレます。

煉獄さんの例を見てきましょう。僕が素晴らしいと思ったのは、厭夢を誰が倒すかという判断です。煉獄さんはこの時、何を最優先にしたでしょうか?煉獄さんの最優先事項とは?

煉獄さんが起きて状況を把握したとき、考えられるタスクは以下2点です。
①厭夢(無限列車の鬼)を倒す
②乗客乗員の命を守る

鬼殺隊という組織の、しかも「柱」という立場にある人間にとって、原則として鬼を倒すのが彼らの役割です。これは柱合会議でも強調されていました。事実、禰豆子は鬼であるという理由だけで、その特殊性は関係なく殺すべきと煉獄さんをはじめ、多くの柱が考えます。彼らの多くは炭治郎達と同じような悲しい過去があります。鬼を倒し、その親玉たる鬼舞辻無惨を倒す。このために生きているのです。ですので、①を優先したくなるのが普通の感覚かと思います。ですが、煉獄さんは違いました。答えとしては②を最優先にしたのです。

これには、おそらく母・瑠火の教えが大きく影響していると思われます。強者の使命として、弱き者を助ける。それが煉獄さんの根底に流れていて、この無限列車でも同じでした。弱き者を助けるために鬼を倒すのです。

仮に①を優先するなら、間違いなく煉獄さんが厭夢を倒しに行くべきでしょう。おそらく煉獄さんであれば、義勇が累を倒した時のように(伍と壱の違いがあるので、もう少し苦戦するかもですが)比較的早々に退治できたでしょう。ですが、煉獄さんはそういう判断を下さなかった。なぜなら、仮に煉獄さんが上に上がったら、何人か犠牲者が出ていた可能性が高いからです。

②を選んだ煉獄さんは5両分の人の命を預かり、見事守り抜きます。炭治郎達に厭夢を任せるのは勇気が要る判断だったかもしれません。ただ、一方で彼らなら出来ると感じ、また十二鬼月を倒すチャンスを与えたかったかもしれません。いずれにせよ、この中でリーダーたる自分が行くのではなく、的確に状況を把握し、「誰も死なせない」という自分のビジョンを忠実に実行に移します。この判断は非常に難しいと感じます。

煉獄さんが理想のリーダーたる所以(2)状況判断力

二つ目の凄さは(1)の判断をする上で、眠りから覚めて直ぐに状況を的確に判断し、冷静に指示を出したことです。これは映画内でも明確に描かれていますし、鬼滅の刃の作中でも、柱や十二鬼月の凄さの象徴として、この状況判断力を挙げる場面が多く見られます。確かにビジネスシーンでも、平時の中で色んな緊急事態が起こります。その時にどういう判断を下せるのか。如何に冷静に判断できるか。こういうところで人の差が出てきます。別のエントリーでも書きましたが、何か不都合があった時に蓋をしようとするのか。それとも、冷静に現実を直視し、正直に実直に動けるのか。前者を選んだがためにどんどん泥沼化するケースは枚挙に暇がありません。こうして文を読んでいる皆さんは当然後者を選ぶと感じていると思います。ですが、実際は前者を取る人が非常に多い。咄嗟の判断力で変わってしまうのです。そのためには、(1)で示したぶれないビジョンが大切です。(2)を煉獄さんの優れたところとするのをよく見ますが、実は(1)が大事なのです。(1)があるから(2)ができる。

教養こそ力

では、ぶれないビジョンを持つにはどうすればいいでしょうか?煉獄さんの母・瑠火の教えに触れましたが、私はこうした教養教育こそ、全ての原点であり、力であると思っています。煉獄さんが迷わないのは、お母さんの毅然とした教育にあると考えています。これによって煉獄さんの軸が形成されていった。教養教育が根っこにあり、そこから煉獄さんのぶれないビジョンが幹として育っていく。そういう中で枝葉として派生的に判断力や真っ直ぐな性格、剣士としての才能開花、努力等々が産まれていくのではないかと思うのです。こういうお母さんを持てたのは「運」であり「縁」です。やはり、根っこには運が左右するのです。ただ、その運を生かすも殺すも本人次第です。煉獄さんは母の教えを守り、期待に応えました。

この無限列車編は炭治郎にとって非常に大きな転換点となる出来事です。今まで、脈々と受け継がれてきた想いを煉獄さんから預かることになります。これまでは、家族(禰豆子)のために戦ってきました。勿論、それは続きます。それに加えて「鬼殺隊員」として戦う契機となるのです。組織や社会、といった視点が入ってきます。この想いを繋ぐことは、本作の重要なテーマです。自分の想いのためだけではなく、みんなのためにぶれないビジョンを持って邁進する。ぶれないビジョンを持つには自分やその周りだけではなく、もう少し広い視点で自分を見つめる必要があります。そういうテーマをワニ先生は与えてくれているように思っています。

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