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いい加減『貞子VS伽椰子』の話しようぜ
ホラー映画を語る上で決して外せない作品がある。
『貞子VS伽椰子』である。
日本を代表するホラー映画『リング』と『呪怨』のアイコンとも言えるキャラクターである”貞子”と”伽椰子”の対決を描いた目の付け所がユニークなトンチキ映画だ。
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「対決モノ」の映画は昔から数多くあった。
キングコング対ゴジラ
フレディVSジェイソン
エイリアンVSプレデター 等々
元々は別世界の住人であるモンスターたちが映画の枠を超えて対決するお祭り映画である。
しかしながら『貞子VS伽椰子』に関しては少し毛色が違う。先のモンスターたちが何らかの方法で撃破することができる"生物"であるのに対し、貞子と伽椰子は"怨霊"や"お化け"と呼ばれる類のものであろう。
これで対決ものを描くのは想像がつかない。
何故ならば
●倒し方
●戦い方
●登場条件
といったルールがあまりにも不明確なため、双方を戦わせるためのお膳立てと、戦闘の描写が困難だからである。というかそもそも2人とも人を不条理に呪い殺す存在であるので、いわゆる戦闘はしない。それを何故戦わせようと思ったのか。
こういった理由から、この映画が発表された時点で私は「深く考えずに2人を戦わせればウケると思ったんだろう」「知名度に頼っただけ」「全く燃える要素のないギャグ映画止まりかな」などと思っていた。
ところがそんな私の期待は良い意味で大きく裏切られたのだった。
裏切りポイント❶:普通に怖い
これは衝撃である。
それこそリング、呪怨、着信アリ、仄暗い水の底から等の傑作が量産されていた時代と比べると近年のJホラーは本当に怖くないものが増えた。
『残穢』のような傑作はあるが、古き良きJホラーのテイストを保った良作はほとんど目にしなくなった。
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ところがどうだろう、『貞子VS伽椰子』は怖い。むちゃくちゃ怖い。
しかもジャンプスケアのようなこけおどし演出は少ない!(まさに先のJホラーたちのようなクラシカルなテイストである)
しかも貞子(リング)パートと伽椰子(呪怨)パートに別れているので一度で二度美味しい!!
しかもリングと呪怨へのリスペクトを感じさせる演出に溢れており、それぞれのシーンが違った魅力の怖さを持つ!!!
序盤の”呪いの家”に踏み込んだ若者たちが次々と退場させられる一連のシーケンスで観客はグッと心をつかまれるだろう。実に洗練されている。
呪いのビデオを見たことによる貞子の恐怖と、呪いの家に足を踏み入れたことによる伽椰子の恐怖が、同時並行で独自の魅力を出しながら襲い来る。徐々に物語は交錯し2人の対決に向かうという筋書きだ。はっきり言って退屈知らずである。
この手のアイデア勝負の映画はたいてい見せ場までがつまらない尺稼ぎに終始していることが多いのだが、本作においては全くそんなことはなく、最初から全力だ。
なおこの映画の感想で「全然怖くない」「ただのギャグ映画 」と言っている人をたまに見かけるが、恐らく彼らは寝ていたかポップコーンに夢中になって画面を見ていなかったか家で恋人とイチャイチャしながら見ていたかのどれかなのでそんな言葉は一切間に受けなくて良い。
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ハッキリ言って単発のホラーパートである前半だけでもうでこの映画の元は取れる。だが忘れてはいけないが本番はここからである。
裏切りポイント❷:ちゃんと対決モノをしている
先程言ったように怨霊たる貞子と伽椰子の存在は非常に曖昧で漠然としており、対決のルール設定が難しい。
そこでこの映画が持ってきた(元の映画には無かった)革新的な新ルールがこちらである。
【一方の呪いにかかったものは他の原因で死ぬ事ができない】
例えば死の呪いが怖くて先に自殺しようとしたとしても、貞子あるいは伽椰子が「させねぇよ?」と言わんばかりに前倒しで現れ、当該人物の命をかっさらっていくのである。
このルールが劇中で明らかにされた時に私は思った。
天才か!?!?!?
何故ならこのルールがあるおかげで【両方の呪いにかかると死に方が決まらない】という矛盾が生じるのだ。
もうお分かりであろう。つまりはこの映画には貞子と伽椰子の両方の呪いにかかった人物が登場するのである。
貞子の呪いで死にそうになった時には伽椰子が妨害に現れ、伽椰子の呪いで死にそうになった時は貞子が妨害に現れるのだ。貞子と伽椰子の持つ異常なまでの怨念パワーがぶつかり合い、必然的に獲物を奪い合う仁義なき戦いに発展するという算段だ。
天才の考えたこのようなひらめきにより、本作は実に自然に二人の対決までの筋道を立てることに成功した。とんでもなく熱い展開である。
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終盤、二人の直接対決が燃え上がるほど熱いのは言うまでもないが、これ以上話すのはただのネタバレになってしまうので紹介はここまでにしよう。
まとめ
『貞子VS伽椰子』は
●予想を裏切る本格ホラー
●一度で二度美味しい
●別世界のキャラクターたちを繋ぎ合わせるための設定が見事
●対決モノとしてもちゃんと面白い
などなど凄い要素がテンコ盛りの必見作品となっている。
「笑えるだけのネタ映画」という虚妄に惑わされることなく、是非ご自身の目で本作を見て楽しんでもらいたい。
以上