取材

時は30年程前に遡ります。

「話して。」

向かいに座った著名なライターはそう仕向けます。

「何から、ですか?」
「全部。」

インタビュー、初めてのそれではありませんでしたが、
名を馳せるその方とのインタビューはそれが最初にして
最後になります。
その後、幾度かその名前が上がった時点でお断りしました。
嫌なものは嫌なのです。
それが生意気だというのなら、著名だろうと身の程弁える
べきと思います。


何か上からで、でも、世間に無名なキックボクサーなどを取り扱って
もらえるだけでもよしとしなければいけない立場なのだと
自分にいい聞かせて、我慢という程のことではなく、立場を
弁えて納得します。

みんな、そうなのだろう。
プロ野球選手も他の何某かの選手も、著名ではない選手らは皆、
世間に関心の耳を傾けてもらいたい為に、そして、自分を
広めてもらう為にそこは我慢しているのだろう。
そう思っていました。
聞き手の言葉遣いや態度も含めて、です。
今も、そう思っています。

謙っている訳でもありません。
自分如き、そして、所詮キックボクサー程度の身分だからです。

自分のことを調べてきてくれなくても、取材してくれるだけ
ありがたいと思え。
ずっと、自分自身をそう嗜めてきました。
今も、です。


なので、下手に出てもいけないのは経験済みです。
立ち位置というか、そこは大切に思います。
下手に出ると、上に立つ勉強不足な人間が多いからです。

どちらが上でも下でもないように思うのは、甘い考えなので
しょうことは、世の中を傍観すると感じることが出来ます。
券売機で並んでいたら割り込まれたり、待っているだけで
後ろから蹴られたり、糞みたいな時代を経なくても分かる
それです。
記した様に、ホームに昭和行きの電車が止まっても僕は
乗りません。
もう一度99回減量しなくてはいけないことが、そして、
これまで経験したことをもう一度味わうことが我慢出来ない
からです。

婆ちゃんにも、友人らにも、後輩にも会いたいですが、
いつか向こうで会うことを楽しみにして、それを拒否します。


40歳を過ぎて、アルバイトをしていた頃があります。
20歳そこそこ程度の若者だろうと、自分は先輩には
敬語で喋ります。
そうすると、自分が偉いと勘違いしてしまうのです。
若者に限らずそんな人間が大多数ですが、そこは僕が
教えるのではなく、手前で気づき勉強すべき所です。
この子、頭いいな。
これまで偉そうにしない若者、多分1人いたかいないかぐらいです。
顔も名前も出てこないので、いるかいないか程度と思います。

僕の素性を知って態度を変える者、更に上に立つ者、そればかり
です。

「今度、練習行ってあげるよ。」
「今度、試合観に行ってあげるよ。」

馬鹿だから、こちらの世界でも僕より上だと勘違いして
いるのです。

「いいよ。着てくれなくて。」

その際はタメ口でそう返してきました。

コンビニなどでもそうです。

コンビニで、店員が高校生のアルバイトでも自分は敬語で
客として喋ります。
客だからと上に立つのが嫌なのです。
「買ってやる。」
客というのはそういう立場ではなく、
「売ってもらう。」
立場だと思っています。
勿論、店側は
「売ってやる。」
立場ではなく。
「買っていただく。」
という立場でもなく、
「買ってもらう。」
という立ち位置のはずです。

店側が下手に出る必要もなく、客が上に立つ必要もないのです。
「客は神様だろ?」
よく、身の程をわきまえない輩が下から唾吐いていますが
違います。
客は、ただの客です。

店員は高校生だろうとプロ意識を持つべきだし、客は
プロの客を目指すべきと考えます。
だから、店員が年上だろうと高校生であろうと上からタメ口で
接する客が見ていて不愉快です。

店員が釣りを手のひらに落とした際は、床にこぼれ落ちた
小銭を絶対に自分で拾いません。
女性だろうと、露骨に雑な対応は違うと思うからです。
「上の人呼んで。」
ことの度合いによりますが、店長に注意する場合と、
態度によっては本社に電話します。
2度と接客されたくない場合のみです。
それをよい経験として、違う場所で一から頑張るべきと
思います。

iPhoneの不都合でソフトバンクに問い合わせの電話をした際、
よく理解出来ない説明に再度説明をお願いしたら舌打ちが
返ってきました。
本社に電話するからと名前を名乗らせると、泣きながら女性は僕に
謝りましたが、そもそも、それもこれも違うと思います。
普通にしていたら、誰も傷つかなかったはずです。


インタビューも同様です。
僕は無名な競技の選手かもしれませんが、でも、ライターは
出版社から雇われて、話を聞かせてもらいに来ている
はずなのです。
こちらは勿論、喋ってやるという立場などではなく、こちらの考えや
これまでの人生を聞いてもらうという立場だということくらい分かって
います。


聞きにきているから応えているのに、書いてあげてるとでも
いいたげな上に立つライターも中にはいます。

「これは書かないでください。」

インタビュー外での言葉であるし、書かないで欲しい
理由を説明して、

「大丈夫ですよ。その辺は守りますから。」

雑談で引き出しておいて、でも、しっかりと原稿に練り込んで
公にしたことが過去にあります。
「ファンでしたが、もう貴方の応援はやめます。」
ライターに不満をメールしたら返答はなく、某誌編集者から
そんな不満が返ってきました。

取材等は、好きか嫌いかといえば、好きでも嫌いでもあります。
書いてもらえば認めてもらっている気がするし、それは
大して見返りのないキックボクサーにしたら嬉しいことだからです。
嫌いな理由は、前述した通りやはり上から分かったかの
ような態度を取られるのが嫌だからです。
上に立っていなくても、なんで、そんないい回しをされなくては
いけないのかなとか、他ではしないだろうなという態度を
取られることがあるからです。

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407字
特にお得なことはないかもですが、でも、僕が 思うこと、感じたことなどを日日綴ります。

100戦してこれまでの減量や試合にまつわる客席からは 感じることのできないことなどを 綴れたらなと思います。 なんの参考にはならないけれ…

これがなんのことやらか、ようやく 理解しました。 どうもです。 頑張ってホームラン打とうと 思います。