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米国労働生産性をどう見る?

皆さま、GWも終盤ですが、いかがお過ごしでしょうか?
私は断続的に仕事が入っており、すっかり連休気分は消えています。笑

今日は先日発表された米国労働生産性指数について考察したいと思います。

現在の米国労働生産性は?

2024年第1四半期(Q1)の非農業部門労働生産性(速報値)は年率換算で前期比+0.3%と、市場予想(ロイターがまとめたエコノミスト予想では+0.8%)を下回りました。
(2023年第4四半期の指数は従来の+3.2%から+3.5%に上方修正されました。)

ただし、労働生産性指数の第1四半期の値は季節的に低くなりやすいことが知られています。
(細かい説明は省きますが、天候による生産性低下、ホリデーシーズン後のビジネス活動の停滞、在庫調整による一時的な生産の減速や混乱、会計年度の移行時の予算の変更や調整による影響などが原因とされています。)

また労働生産性指数は前期比での振れ幅がかなり大きいので長期でのトレンドを確認する上では、前年同期比の値も確認することが重要です。

今回の2024年Q1の労働生産性指数の前年同期比は+2.9%でした。

異例と言える労働生産性の向上が見られたCOVID-19の流行期間の影響が薄れた2023年以降の労働生産性指数の前年比、2017年を100としてインデックスを確認してみましょう。

労働生産性指数の前年同期比・Indexの推移

これを見ると労働生産性がCOVID-19流行以降も着実に改善していることが分かります。

次にさらに長期での労働生産性指数のトレンドを見てみましょう。
下のグラフは2010年Q1から2024年Q1までの米国労働生産性指数の推移です。(2017年Q1=100として数値化)

2010年Q1から2024年Q1までの労働生産性指数

このグラフからは以下のことが読み取れます。

・COVID-19の影響を本格的に受けたと思われる2020年Q2から2022年Q1までは景気後退にも関わらず労働生産性が上昇した非常にまれなケースでした。
(通常は不況下では労働生産性が低下しますが、今回は生産高が減少する一方で、労働時間はさらに大きく減少したことで生産性が向上するという珍しい状況でした。)

・トレンドラインを引くと(上記の2020年Q2から2022年Q1は外れ値として除外)、2018年前後で労働生産性指数の伸びが加速している

労働生産性指数の伸びの加速はCOVID-19の影響が終息後も続いている。


トレンドラインを見るとすでに2018年-2019年の時点でも、それ以前のトレンドライン(赤破線)を上回るペースで労働生産性が伸びていることが分かります。

つまり生成AIが本格的に登場する以前から労働生産性向上の兆しがあったと考えられます。

その時点でクラウドコンピューティングサービス(AWS, Google Cloud Platform, Microsoft Azure)、コラボレーションツール(Slack, Microsoft Teams, Zoom)、オンライン販売プラットフォーム(Shopify, Etsy)、自動化とAIツール(Salesforce Einstein, IBM Watson)、フィンテックサービス(Square, Stripe, PayPal)などが、ビジネス環境を変革して生産性を高めてきたことがこの理由として考えられます。

そしてこれらの技術をインフラとして、近年登場した生成AI技術が実力を発揮できる環境が整ったと言えます。

生成AIの出現によって追加で労働生産性が改善している場合には、その影響は今後の労働生産性指数の伸びに反映されてくるのではないかと私は考えています。

1990年代にも同じ現象が起こった

実は前回ソフトランディングを実現した1990年代にも同様の現象が見られています。


インターネットの普及によって1994年から生産性向上からの上昇相場が起こった1990年代前後の労働生産性指数の推移を確認してみましょう。

1980年から2010年までの労働生産性指数

このグラフを見ると1996年以降に労働生産性指数の伸びが加速したことが分かります。

1994年から1995年頃にはインターネットの普及が注目されたことを考えると、やはり新技術の影響が労働生産性の伸びに影響を与えるまでには若干のタイムラグがあるものと考えられます。


労働生産性向上はなぜ重要なのか?

労働生産性向上は経済成長とインフレ抑制の鍵になります。

まず、労働生産性は経済成長の重要な要素です。
生産性の向上は、企業がより多くの商品やサービスをより少ないコストで提供できるようにすることで、経済全体の効率を高めます。

生産性が向上すれば、企業は商品・サービス価格を上げることなく従業員に高い賃金を支払う余地が生まれます。これにより、インフレが抑えられる一方で、市民の購買力は保たれます。
このことから消費が堅調となり、消費が経済成長を下支えする好循環が期待されます。

同時に、労働生産性の向上はインフレを抑制する上でも重要です。
同じ労働力や資源でより多くの商品やサービスが生産されることにより、価格の上昇圧力が緩和されます。
これにより経済成長を達成しつつもインフレを抑制することが可能となります

1990年代のソフトランディング(経済減速を伴わないインフレ抑制)においてもインターネット普及による労働生産性向上が重要な役割を果たしたと考えられています。

まとめ

今回は労働生産性についてまとめました。

・労働生産性の向上はソフトランディング実現の鍵になる。

・1990年代のソフトランディング相場ではインターネットの普及による労働生産性向上が重要な役割を果たした。

・COVID-19の流行前から労働生産性向上の兆しは見られており、生成AI技術による生産性向上への影響はこれから見極めていく必要がある。

はたして生成AI技術は労働生産性向上に上乗せ効果を示すことができるのでしょうか?

今後の米国労働生産性の推移に引き続き注目したいですね。

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仕事終わったあとにビール飲んで寝てしまうことが多いので、note記事を書く時間を確保するために最近はこれを飲んでます。笑


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n=1|米国株投資@外科医
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