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株式市場のタイミングをはかることは可能か?

株式市場のタイミングをはかることは不可能だと考える人もいるでしょう。

しかし、強気市場や弱気市場がポートフォリオに与える影響と、それに対する対処方法を学ぶことが株式市場で長期的に利益を上げるためには必要です。

強気市場や上昇トレンドの間は、大きな利益を得ることができます。

しかし、弱気市場(または長期的な下落トレンド)に移行したあとも「buy & hold」だけを続けて、売却のルールを持たっていないと、これまでの利益を失う結果になります。

「強気市場か弱気市場かを正確に判断するための、信頼できる方法を持つことが絶対に必要です。これが、損失を避けて勝ち続けるために学ぶべき最も重要な教訓です。」 

ウィリアム・J・オニール

ここでは株式市場のタイミングとは何かを理解して、現実的な目標とそれを実現するための指針を設定しましょう。

株式市場のタイミングをはかることの定義とは?

まずは「タイミングをはかること」の意味を定義しましょう。

投資でリスクをコントロールしながら利益を出すための現実的な「市場のタイミングをはかること」の意味は、市場の底値で買い、天井で売ることではありません

むしろ、IBDでは株式市場のタイミングをはかることの意味を、株式市場の上昇トレンドの初期段階で利益を得ることと、主要な指数や個別株が弱まり、下落に転じる際に利益を保護することと定義しています。

株式市場のタイミングが重要な理由

これまでにも繰り返しているように75%の株式は主要な株式市場指数(NASDAQ、S&P 500、ダウ工業平均)と同じ方向に動きます。

上昇トレンド中に株式を購入すれば、成功する可能性が大幅に向上します。しかし、下降トレンド中に購入すると、リスクが高まり、失敗する確率が増加します。

強気市場では市場をリードする成長株が大幅な価格上昇を見せることがあります。
しかし、弱気市場や中間的な市場調整が発生すると、ほとんどの株は下落します。特に前のサイクルのリーダー銘柄はその傾向が強いです。

そのため、株式市場のタイミングを把握し、対処することが安全に利益を上げるための鍵になります。

株式市場のトレンドを理解する

それでは、株式市場トレンドを整理し、利益を得るための方法を確認していきましょう。

その前に、株式市場と言った場合に、何を指すかを確認しましょう。

ニュースなどではダウ工業平均によく言及されますが、正直なところS&P 500やナスダックの方が重要な指標です。

ダウ工業平均は30社しかフォローしておらず、毎日取引される何千もの株式の中のごく一部の株式のみを反映しているからです。さらにダウに含まれる企業はすでに成熟した大型株が多いことも問題になります。

株式市場のトレンドの変化をフォローする

株式市場の長期的かう基礎的なトレンドを確認するためのチェックポイントは以下の3つになります。

  1. 市場は現在、上昇トレンドにあるか、下降トレンドにあるか?

  2. 現在の環境でどの程度の市場露出を持つべきか?

  3. トレンドが良くなるか悪くなるかを判断するためのサインは何か?

IBDは、市場が強力な上昇トレンドにあるか、上昇トレンドが圧力を受けているか、明確な市場調整(コレクション)にあるかどうかを広く示しています。

以下の内容では、IBDが提供する市場露出の5つの一般的なレベルについて説明します。これにより、リスク管理のためにいつ積極的になるべきか、いつ防御的になるべきかを判断することができます。

市場タイミング: 5段階のエクスポージャー

これらの5つのレベルは、主要な市場指数の単なる上昇や下降に基づくだけではなく、複数の要因を考慮しています。

例えば、どれだけ多くの株が買いポイントに近づいているか、堅実なチャートパターンを形成しているか、成功したブレイクアウトをしているか、または崩れているかなどです。また、主要な移動平均線周辺での価格と出来高の動向も重要です。

リスクやチャンスのレベルに応じて、資金の投入量(エクスポージャーレベル)を段階的に調整することで、投資家は市場の上昇や下落に応じて徐々に株を売買することが可能です。

全体の市場トレンドを理解し、リスク/リターンの比率を市場状況に基づいて管理することが重要です。

0%-20%

最も注意すべき段階。
市場が調整局面で下落トレンドに伴うリスクが非常に高いため、積極的な購入よりも主に現金を保持することが推奨されます。
一般的に、リーダー銘柄は市場全体の1.5倍から2.5倍の規模で下落することが多いため、ポートフォリオに大きな損害を与える可能性があります。
この局面ではリスクを避けてキャッシュ比率を高めることで大きな損失を回避します。

20%-40%

市場が反転し、トレンドの改善を示す「フォロースルー」デーが現れる可能性がある局面。
しかし、市場指数はまだいくつかの弱点を抱えているかもしれません。例えば、適切なチャートパターンを形成している株が少ない、リーディング株が良好な出来高を伴ってブレイクアウトしていない、または最近のブレイクアウトが失敗している場合などです。
リーディング株が主要な移動平均線の周辺でどのように動いているかも考慮すべき重要な要素です。

40%-60%

市場指数に積極的な買い圧力のサインが見られ、いくつかの優良株が購入のチャンスを提供し始めた場合、市場への資金投入量を増やすことが考えられます。
しかし、もしそのような有望なトレンドが消えかかっている場合は、リスクを軽減するために露出を減らすことが推奨されます。

60%-80%

上昇トレンドが勢いを増し、リーディング株やセクター、産業グループの動きがそれを裏付ける場合、より積極的な買いが必要になる局面。

ただし、これらの露出レベルは流動的であり、状況によって変動します。
これらのエクスポージャーレベルは指数や個別株の実際の動きに基づいており、今後こうなるだろうという見通しや予想でエクスポージャーを変化させるわけではないことを覚えておく必要があります。
*機械的にルールに基づいてシグナルを出しているところがIBDの良いところだと思います。(ただし同時にそれが限界でもあります。)

80%-100%

エクスポージャーが最も高い段階。
覚えておくべき点として、どこかで強気市場は必ず終わりを迎えるということです。「根拠のない熱狂」のような過度に強気な局面に陥るのを避ける必要があります。
市場が下落から回復し始めた際には露出を徐々に増やしますが、市場が過熱する兆候が見られると、露出を段階的に減らすことが推奨されます。


「全額投資」か「全額売却」という二者択一ではなく、このような段階的なアプローチを採ることで、投資家が市場の動きに合わせて規律を守り、注意深く行動することを促します。
市場露出を状況に応じて調整することで、リスクを管理しながら積極的に利益を追求することができます。

市場タイミングのその他のシグナル

市場の方向性を決定づけるいくつかの重要なシグナルをIBDでは採用しています。
これらの指標は、いつ市場に積極的に参入するべきか、または防御的に動くべきかの手がかりを提供してくれるため極めて有用です。

フォロースルーデー

フォロースルーデーは、市場の調整が終わり、新たな上昇トレンドが始まる可能性を示すシグナルとなることがあります。
しかし、これは市場トレンドの変化を示す一つのシグナルに過ぎません。フォロースルーデーが発生したとしても、市場露出のレベルを最も重要視する必要があります。
特に荒れた相場や長期的な弱気市場の後では、「だましのサイン」になったり、フォロースルーデーが失敗することもあります。

フォロースルーデーは、ナスダック、S&P 500、またはダウなどの主要指数が最近の安値から反発しようとしている際に発生します。

フォロースルーとは、主要指数の1つが出来高を伴って1.25%以上の上昇を見せる日を指し、通常は反発開始後4日目から7日目に発生します
これがトレンドが好転したことを示す可能性のあるシグナルの1つです
(全てのフォロースルーが上昇相場を示すわけではありませんが、強気市場が始まる際には必ずフォロースルーデーが発生します)。

ディストリビューションデー

ディストリビューションデーは、上昇トレンド中に市場が大幅に売り込まれる日を指します。
主要な市場指数が前日の出来高を上回る高い出来高で0.2%以上下落した場合、これがディストリビューションデーとなります。
これは機関投資家による売却(ディストリビューション)の兆候とされます。

ディストリビューションデーが短期間に集中して発生すると、指数の弱さが増すことを示しています。

そのため、ディストリビューションデーが増加するに従い、推奨される市場エクスポージャーレベルは減少し、リスクが増大していることを反映します。
つまり、ディストリビューションデーが増加するにつれて、投資家はリスクを管理するために資金投入量を減らすべきです。

ただ、全てのディストリビューションデーが等しく重要であるわけではありません。
リーディング株や指数の主要な移動平均線周辺での動きなど、他の要因も考慮に入れる必要があります。

結論

株式市場全体の動向から投資タイミングをはかることは非常に重要な要素です。
適切なエクスポージャーの管理と重要なシグナルの確認によって、リスクを最小限に抑えつつ、利益を最大化することが可能になります。

1.IBD(Investor's Business Daily)の投資方法論

2.米国株投資の3つの基本概念

3.株式市場のタイミングをはかることは可能か?(本記事)

4.株式市場のトレンド変化にどう対応するか

5.株価チャートとテクニカル分析

テクニカル分析について学んでみましょう。

オニール流の投資手法に興味がわいてきた方はこれらの本で勉強できます。

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最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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*個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。
*実際の投資判断については自己責任でお願いします。

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