レイバー・デー前後の米国株市場：過去の急変パターンと今後の投資戦略

明日8月23日のジャクソンホール会議でのパウエル議長講演に注目が集まっています。

過去には株価トレンドの反転のきっけけになったこともあるイベントだけに気が抜けませんね。

ただし、ジャクソンホール会議が終了したあとも気が抜けません。
2024年は9月2日がレイバー・デー（Labor Day：労働者の日）の祝日にあたり、8月31日から9月2日までが米国では3連休となります。

米国株市場には、特定の時期に株価が特定の動きをする「アノマリー（anomaly）」が存在します。

毎年9月の第1月曜日に祝われるレイバー・デー前後の相場動向もそのアノマリーの一つとして注目すべきポイントになります。

レイバー・デーはアメリカの夏の終わりを象徴する祝日であり、レイバー・デー明けは機関投資家などが夏休み明けで市場に戻ってくる時期と一致するため、レイバー・デー前後は株式市場の急変が起こりやすい鬼門として知られています。

今回はレイバー・デー前後の米国株市場のアノマリーを確認し、レイバー・デー前後での投資戦略を考えていきましょう。

1. レイバー・デー前の相場動向

過去20年感のデータを振り返ると、8月の市場パフォーマンスは平均-0.35%とややマイナスとなっています。

しかし、20年間のうち12年でプラスの成績を記録しており、比較的堅調に推移する年も少なくありません。

ただし、8月後半になると市場のボラティリティが増し、予期しない急変が発生することもあります。
利益確定の売りや、経済指標の発表に伴う市場の反応が引き金となることが多く、ジャクソンホール会議でのFRB議長の講演なども急変の原因となり得ます。

2. レイバー・デー後の相場動向

一方で、レイバー・デー後の9月は米国株市場にとって特に厳しい月とされており、過去20年間の平均パフォーマンスは-0.58%となっています。

過去20年間のうち半数の10年で月間騰落率がマイナスとなっており、市場全体としては調整が行われる月となることが多いです。

9月には重要な経済指標の発表や、連邦準備制度理事会（FRB）の政策決定など、市場に影響を与えるイベントが相次ぐため、ボラティリティの上昇が見られることが多くなります。

また先ほど述べたようにレイバー・デー明けに機関投資家が市場に本格的に参入しれくることも市場の動きを加速させる要因になると考えられています。

このように8月下旬からリスク管理に注意が必要な時期がしばらく続くと言えます。

特に今年はジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演から１週間強でレイバー・デーの3連休に入るため、いつも以上に気の抜けない展開が続きます。

3. 市場のボラティリティとアノマリーの分析

過去20年間のデータを分析し、レイバー・デー前後の相場の動きを確認していきましょう。

下のグラフは過去20年のレイバー・デーの前10営業日(青色)、後10営業日(赤色)の騰落率をグラフにしたものです。

レイバー・デー前後10営業日の騰落率

レイバー・デー前の10営業日間では、平均で0.56%の上昇が見られ、上昇した年は12回(60%)、下落した年は8回(40%)でした。

一方、レイバー・デー後の10営業日間では、平均で0.34%の上昇が見られ、同じく上昇した年は12回(60%)、下落した年は8回(40%)でした。

特に注目すべきは、トレンドが反転したケースが全体の50%におよんでいる点です。

具体的には、レイバー・デー前に上昇し、その後下落したケースが5回、逆にレイバー・デー前に下落し、その後上昇したケースも5回ありました。

特にレイバー・デー前の騰落率がプラスであった場合、レイバー・デー後にトレンドが反転する確率は約41.7%(12回中5回)に達します。

特にそのうち3回では10営業日で3%以上の下落となっていました。

これらのデータは、投資家がボラティリティの高いこの時期にどのようなアプローチを取るべきか、重要な指針となるでしょう。

なお、月単位でレイバー・デー前の8月とレイバー・デー後の9月の月間騰落率を比較しても全く同じ傾向がありました。

レイバー・デー前後の8月、9月の月間騰落率

つまり、レイバー・デー後にトレンドが反転するリスクがあるというアノマリーはデータでも裏付けされたのです。

4. レイバー・デー明けに向けての投資戦略

それでは、ジャクソンホール会議でのパウエル議長講演からレイバー・デー前後にかけての難しい時期にどのような投資戦略を持って米国株市場に臨めばよいのでしょうか？

これまでに示したデータからも様々なヒントが得られるかと思いますが、以下では私が現時点で考えている方針をご紹介します。