2024年12月6日米国雇用統計速報:FRB利下げ期待が高まった背景は?
2024年12月6日に発表された11月の米国雇用統計は、今後の金融政策や市場動向を占う上で重要な内容となりました。
雇用統計の結果を受けて、市場での12月のFOMCでの利下げ期待が一段と高まりました。
本記事では、今回の雇用統計の結果を詳しく解説し、FRBの金融政策や株式市場への影響を分析します。
1. 労働供給の減少と移民政策の影響
2024年11月の雇用統計では、総労働人口が19.3万人減少しました。
この背景には、労働力参加率が2か月連続で低下していることがあります。
また、FRB議長ジェローム・パウエル氏も言及しているように、移民政策の強化が労働力供給の鈍化を引き起こしている可能性が指摘されています。
労働市場における移民の貢献が減少すると、以下のような影響が考えられます:
労働市場の余剰(スラック)が縮小
賃金上昇圧力の増大
インフレ抑制の難航
移民は多くの産業において重要な労働力となっており、政策の影響で労働供給が制約される場合、景気拡大のペースに影響を与える可能性があります。
この労働供給の減少が経済にどのような影響を与えているのかが、今回の重要なポイントだったと考えられます。
労働供給の減少によって、労働力不足が顕在化した場合には賃金インフレが強まり、インフレの再燃の原因となることが懸念されるというのがその理由です。
この文脈では、今回の雇用統計では失業率が特に重要であったと言えます。
2. 失業率の上昇と労働市場の安定
それでは今回の雇用統計での失業率はどうだったのか見ていきましょう。
11月の失業率は4.2%と、前月の4.1%からわずかに上昇しました。
この数字は、労働市場が過熱していないことを示しています。
一方で、11月の雇用者数の増加は市場予想を上回る22.7万人で、10月の雇用増加数(3.6万人)を大きく上回りました。
特筆すべきポイントとして、以下のセクター別雇用動向があります:
医療・社会支援:+7.23万人
レジャー・ホスピタリティ:+5.3万人(10月の+2,000人から大幅増)
製造業:+2.2万人(ボーイングのストライキ解除が寄与)
小売業:-2.8万人(ホリデーシーズン採用が控えめ)
雇用者数の増加が予想を上回る一方、労働力参加率の低下が続いています。
今のところ雇用の増加と労働参加率の低下のバランスが取れており労働市場が一定の安定を保ちながらも緩やかに成長していることが示唆されます。
3. 利下げ期待とFRBの政策判断
今回の雇用統計は、FRBが利下げを決定する条件を満たす内容でした。
特に以下の要素が、12月18日のFOMCでの利下げ期待を高めました:
失業率の上昇:労働市場の加熱が抑制され、インフレ圧力を和らげる方向へ。
雇用増加の安定化:月平均13.15万人の雇用増加は、労働市場の落ち着きを示唆。
市場の反応を示すCMEグループのFedWatchによれば、12月FOMCでの利下げの確率は87%まで急上昇しました。
一方で、2025年1月の追加利下げの確率は27%と低く、12月以降はFRBが慎重な姿勢を保つ可能性が高いと市場は見ています。
4. 市場動向:S&P 500と金利の反応
雇用統計発表を受け、S&P 500は0.25%上昇し、投資家心理が安定したことを示しています。
また、10年物米国債の利回りは4.15%と、10月中旬以来の低水準にとどまりました。
これらの動きは、FRBの利下げ期待が市場全体に安堵感をもたらしていることを反映しています。
まとめ
今回の雇用統計は、以下の点で労働市場の安定を示しました:
総雇用者数:+22.7万人(予想:+21.1万人)
失業率:4.2%(予想通り)
労働力人口:-19.3万人
平均時給:前年比+4.0%(予想をやや上回る)
これらの結果を踏まえると、労働市場が穏やかに減速しつつも安定しており、FRBが利下げを進める環境が整っていると判断できます。
ただし、今回のデータにも表れている労働力供給の鈍化は、一歩間違うと賃金インフレの原因ともなりかねません。
平均時給は依然として高く、賃金インフレのリスクは根強く残っていると言えます。
景気の伸びと労働力供給の鈍化のバランスがうまく取れていることで今回の雇用統計のイベントは株式市場にとっては良い結果となりました。
ただし内容を見ていくと、12月の利下げは行われる可能性は高いものの、今後も順調に利下げを実施していけるかについては不透明であると言えます。
市場は2025年のさらなる利下げにも期待を寄せていますが、12月中旬に発表される消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)などのインフレ指標が金融政策の方向性にどのような影響を及ぼすのか、引き続き注視する必要があります。
雇用統計を受けての具体的な投資戦略については週報で書いていきます。
毎週末週報で投資戦略をアップデートしています。
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