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リセッション到来?過去の景気後退局面での株価の動き
2024年8月5日に発生した日米国株式市場の暴落を受けて市場の緊張感が高まっています。
しかし、8月5日に発表されたISM非製造業景気指数も市場予想を上回っており、冷静に見ると経済指標から判断する限りにおいて、米国経済が緊急利下げを必要とするほど悪化しているのか(リセッション入りしているのか)という点には疑問が残るところです。
また今回の株式市場の急落を受けてFRBの9月FOMCでの利下げ期待が一段と高まっています。
それでは、①株式市場の暴落、②FRBによる利下げ、③景気後退局面の到来の3つはどのような順番で起こるのでしょうか?
株式市場には将来の材料を織り込んでいくという性質(先見性)があるという考えに基づいて私は米国株投資を行っています。
株式市場は景気後退についても前もって織り込んで反応するのでしょうか?
2000年以降、米国は3回の大きな景気後退(リセッション)を経験しました。
ITバブル崩壊(2000年)、リーマンショック(2007年-2009年)、そしてコロナショック(2020年)です。
これらの景気後退の局面において、米国株市場の動き、FRBの利下げ、米国経済のリセッション入り(NBER:全米経済研究所のリセッション判定)のタイミングについて詳しくみていきましょう。
1. 2000年 ITバブル崩壊
背景
1990年代後半、インターネット関連企業の急成長によりITバブルが形成されました。
しかし、多くの企業が収益を上げられず、2000年初頭にバブルが崩壊しました。
S&P 500の下落
ピーク日: 2000年3月24日
下落幅: 2002年10月までに約50%の下落を記録しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1722924590024-uTY5e0k5Id.jpg?width=1200)
FRBの利下げ
利下げ開始: FRBは2001年1月3日に政策金利を6.50%から6.00%に引き下げ、同年12月11日には1.75%にまで低下させました。
利下げの目的: 景気刺激を目的に行われ、消費と投資の活性化を図りました。
リセッション判定
NBERの判定: 2001年3月から2001年11月の期間をリセッションと認定しました。
経済指標の悪化
製造業の低迷: 製造業の新規受注と工業生産は2000年後半から低迷しました。
失業率の上昇: 2001年に入ると失業率が徐々に上昇し始めました。
ITバブル崩壊時には米国株の暴落→FRBの利下げ→リセッション入りの順でした。
米国株式の下落が最も早く起こっていますね。
2. 2007-2009年 リーマンショック
背景
住宅市場の過熱とサブプライムローンの拡大とその破綻により、金融不安が広がりました。
2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻が金融危機を加速させ、世界経済に大きな影響を与えました。
S&P 500の下落
ピーク日: 2007年10月9日
下落幅: 2009年3月までに約57%の下落を記録しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1722925046592-qtf5y6aNvw.jpg?width=1200)
FRBの利下げ
利下げ開始: FRBは2007年9月18日に政策金利を5.25%から4.75%に引き下げ、2008年12月16日には0.00-0.25%にまで引き下げました。
利下げの目的: 金融市場の流動性を確保し、経済の安定を図るための措置でした。
リセッション判定
NBERの判定: 2007年12月から2009年6月の期間をリセッションと認定しました。
経済指標の悪化
住宅市場の崩壊:
アメリカの住宅価格は、2006年半ばにピークを迎えました。多くの地域で不動産価格が急上昇していましたが、この時期を境に住宅価格の成長が停滞し始めました。
2006年後半から2007年にかけて住宅価格は徐々に下落し始めました。住宅市場の冷え込みが見られ始め、借り手の多くがローンの返済に苦しむようになりました。
住宅着工件数の急激な減少が見られ、不動産価格が下落しました。
失業率の急上昇: 失業率は2008年から急上昇し、2009年にはピークに達しました。
リーマンショック時の景気後退局面では住宅価格の下落に対応する形でのFRBの利下げが2007年9月に実施されました。
その直後の2007年10月に米国株市場が暴落しています。
リセッション入りはその後の2007年12月でした。
今回はFRB利下げ→株価暴落→リセッション入りとなっているように見えます。
今度は、もう少し長い期間のS&P500の株価推移をみてましょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1722925699585-L5XRQsD2iE.jpg?width=1200)
これを見ると2007年7月から8月にかけて、10月と同程度の10%程度の下落が起こっています。
その後、FRBの利下げに反応して2007年10月まで株価は再上昇しましたが、結局その後もう一度暴落してしまいました。
*個人的にはこの動きは非常に参考になるな、と思いました。
つまりこの時も米国株市場の急落→FRBの利下げ→リセッション入りという順番になっていると言えます。
3. 2020年 コロナショック
背景
新型コロナウイルスのパンデミックは、世界中で経済活動を一時停止させました。
これにより、各国でロックダウンが実施され、経済は急速に縮小しました。
S&P 500の下落
ピーク日: 2020年2月19日
下落幅: 2020年3月までに約34%の急激な下落を記録しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1722926148810-LOyVdKhNLG.jpg?width=1200)
FRBの利下げ
利下げ開始: FRBは2020年3月3日に政策金利を1.50-1.75%から1.00-1.25%に引き下げ、3月15日には0.00-0.25%まで引き下げました。
利下げの目的: 経済活動の停滞を受けて、迅速に金融緩和を実施しました。
リセッション判定
NBERの判定: 2020年2月から2020年4月の短期間をリセッションと認定しました。
経済指標の悪化
失業率の急上昇: 2020年3月から失業率が急上昇し、過去最大の失業率を記録しました。
GDPの急落: 2020年第二四半期には、歴史的なマイナス成長を記録しました。
コロナショックの際には米国株市場とリセッション入りが2020年2月で、その後にFRBの利下げが行われているように見えます。
しかし注意してもらいたいのは、この時にNBER(全米経済研究所)が2020年2月から4月がリセッション期間だと発表したのは2020年の6月なのです。
リセッション判定の性質上仕方ないのですが、私もリアルタイムでこの時の相場見ていましたが、2月前半の時点ではまだそれほど危機感はなかったと思います。
そう考えると、まだリセッション入りが明らかになる前に米国株市場の暴落が起こり、FRBの利下げが行われ、リセッション入りが事後的に発表されたという順番でした。
伝染病による短期のリセッションなので例外的ですが、まだ景気後退が明らかになっていない時点で株式市場は異変を訴えていたと言えるでしょう。
まとめ
米国株市場の急落を受けて、米国経済のリセッション入りが懸念されています。
このことを受けて、今回は過去のリセッションでの米国株市場の動き、FRBの利下げ、リセッション入りの時系列を確認してみました。
(全部見直すのは大変なので2000年以降だけです。すみません。)
これらを振り返ると景気後退(リセッション)が起こるときの順番は、
①米国株式市場の急落
②FRBの利下げ
③リセッション入り
この順番になっていることが分かります。
米国株市場の急落が1番最初に起こります。
これは株式市場の先見性をよく示しています。
今回もまだ景気後退するかはっきりしない段階で株式市場の急変が起こりました。
もうひとつ、私が非常に勉強になったのは、リーマンショック時の株価の動きです。
リーマンショック時は2007年7-8月に株価の急落が起こりました。
これを受けて2007年9月FRBが利下げを行い、2007年10月まで株価は再度反発して高値を更新しました。
しかしその後、2009年3月までに約57%もの下落が起こりました。
これは今回の夏から秋にかけての相場を考える上でも重要な教訓だと思います。
要するに「9月にFRBが利下げしたから安心」ということは全くない、ということです。
株価急落、FRBの利下げの後にはリセッションが到来する可能性があります。
今の相場に当てはまる点が多くて少し怖いくらいですね。
長くなったので最後にまとめを
景気後退時に起こる順番:株価急落→利下げ→リセッション入り
利下げしたら安心とは限らない(リーマンショック時の教訓)
株式市場の先見性という考え方は広瀬さんがセミナーなどでお話されています。
毎週、週報で株式投資の振り返りをやっています。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
この記事が読者の皆様がリスクとリターンを考慮したより良い投資判断を行うための手助けとなれば幸いです。
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*実際の投資判断については自己責任でお願いします。
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