株式市場のトレンド変化にどう対応するか
株式市場のトレンドを理解し、そのトレンドが変化したときにどのように対応するべきかをみていきましょう。
そのためには市場のトップやボトムなど主要な転換点を確認する方法について確認しましょう。
また、ベア市場、ブル市場、中間的な調整相場についても説明し、それらが投資判断にどのように役立つかを見ていきましょう。
株式市場タイミング:市場のトップ
上昇トレンドが最終的にピークを迎え、主要株価指数が下落を始めると、多くの株がその下落に巻き込まれることになります。
市場のトレンドが弱まり、中間的な調整期やベア市場に入る兆候を見逃さないようにしましょう。
ディストリビューション・デー
株式市場が上昇しているとき、いつ上昇相場が終わるかについて正確に予想することは難しいです。
ただし、市場トレンドの大きな変化は一晩で起こることはあまりなく、警告サインが時間をかけて蓄積されることが多いため、過度な損失を避けるための時間的猶予があります。
これらのことから、上昇相場の終わりを見極めるためには予想に頼るのではなく、主要な株価指数やリーディング株の価格と出来高の動きに注目しましょう。
価格と出来高の動きは、大口機関投資家、つまり市場を動かすだけの大きな資金を動かすことのできる投資家が実際に何をしているかを示しています。
機関投資家が買いモードから売りモードに移行しているかを確認する最も効果的な方法は、「ディストリビューション・デー」を追跡することです。
ディストリビューション・デーとは?
「ディストリビューション」とは単に「売り」のことです。
ディストリビューション・デーは、市場の上昇トレンド中に主要株式市場インデックスの1つ以上(NASDAQ、S&P 500、ダウ平均)が前日より多い出来高で0.2%以上下落した日に発生します。
株式市場は常に変動するため、1日の出来高増加に伴う下落は必ずしも問題ではありません。
しかし、短期間に多くのディストリビューション・デーが発生し始めた場合、それは懸念材料となります。
なぜならこれは機関投資家がより積極的に売り始めていることを示しているからです。
ディストリビューション・デーが増え始めると、リスク管理が最重要課題となります。
トレンド変化をフォローしながら、ポジションを調整することで、利益を守り、大きな損失を防ぐようにします。
次に株式市場のボトムに到達したタイミングの判断方法についてみていきましょう。
株式市場タイミング:市場の底打ち
市場が調整局面にあるとき、トレンドが変わり、再び株を買うタイミングが来たことをどう判断するかを見ていきましょう。
その目安となるのが「フォロー・スルー・デー」です。
IBDが1880年以降のすべての市場サイクルを研究した結果、フォロー・スルー・デーなしにブル市場が始まったことは一度もありません。
したがって、直感や予測に頼るのではなく、フォロー・スルー・デーを待って、市場が底を打ち新たな上昇トレンドが始まったことを確認しましょう。
フォロー・スルー・デーとは?
フォロー・スルー・デーは、ラリー(上昇)が成功し、市場の方向性が調整から上昇トレンドに転換したことを示します。
このサインが出たら、株を少しずつ買い戻すタイミングです。
フォロー・スルー・デーの主要な要素は次の通りです。
新たな安値: 市場が下降トレンドにあるとき、主要な市場株価指数(Dow、S&P 500、NASDAQのいずれか)が新しい安値を記録します。
ラリーの試み: 新しい安値をつけた後、その指数が上昇して終了する日を探します。この日は、下落が止まり、新しい「底」をつけ、反発に向かっている兆候である可能性があります。しかし、1日だけの上昇ではトレンドの転換を確認するには不十分です。そのため、これをラリーの試みの1日目とします。この後、指数が前の安値を下回らない限り、ラリーの試みが続いていると見なします。
フォロー・スルー・デー: 市場の調整期間中に、大きな出来高を伴って大幅に上昇する日がフォロー・スルー・デーです。この日は、ラリーの試みが成功した可能性を示します。フォロー・スルー・デーとしてカウントされるには、少なくとも1つの主要インデックスが前日よりも出来高が増加し、1.25%以上の上昇を記録する必要があります。出来高が平均を上回る必要はなく、前日より多ければ十分です。フォロー・スルー・デーは通常、ラリー開始から4日目以降に発生します。
段階的に買い戻し、ディストリビューション・デーに注意
すべてのフォロー・スルー・デーが大規模で持続的な上昇トレンドにつながるわけではありません。
約25%~30%のフォロー・スルー・デーは失敗し、市場が再び調整局面に戻ることがあります。
そのため、フォロー・スルー・デーが発生したときは、市場へのエクスポージャーを段階的に増やしつつ慎重に取引する必要があります。
上昇トレンドが確立し、リーディング・グロース株が機関投資家の大口買いにより大きく動き始めたら、さらに積極的に市場に戻ることができます。
しかし、もし上昇トレンドが失敗した場合は、売却ルールに従い、安全に市場から撤退しましょう。
フォロー・スルー・デーの直後や数日以内にディストリビューション・デーが見られる場合は注意が必要です。
これは新たな上昇トレンドが持続せず、再び調整局面に戻る可能性があることを示しているかもしれません。
株式投資における相場サイクルの重要性
株式投資で大きな利益を得ることができるのは、通常、新しい株式市場の上昇トレンドの初期段階になります。
この大きなチャンスを逃さないためには、これまで見てきたフォロー・スルー・デーなどのサインも重要ですが、以下の市場サイクルという概念を理解することも重要です。
ブル市場、ベア市場、中間的な調整相場
ブル市場とは株式市場が上昇している状態、ベア市場とは市場が下降している状態を指します。
しかし、株式市場のタイミングと全体的なトレンドを理解する上で、次の2つのポイントを押さえることが重要です。
新しいフォロー・スルー・デーや上昇トレンドが発生しても、それが必ずしも新しいブル市場を示しているわけではありません。
新しい下降トレンドが発生しても、それが必ずしも新しいベア市場を示しているわけではありません。
長期的なブル市場とベア市場、そしてそれらの中で発生する短期的な上昇トレンドや株式市場の調整の違いを理解するために、まず定義から始めましょう。
ベア市場 vs 中間的な調整相場
上昇トレンドのブル市場の中でも、中間的な調整が発生することがあります。
この期間中、主要な株式インデックスは一時的に休憩し、数週間から数か月間にわたり後退しますが、その後再び上昇を再開します。
中間的な調整の深さはさまざまですが、NASDAQ、S&P 500、Dowなどの指数が約10%程度後退することがあります。
これは比較的軽い下落であり、ブル市場の基調を変えるほどではありません。
一般的に、20%未満の下落は中間的な調整と見なされますが、20%以上の下落はベア市場を意味します。
期間はさまざまですが、ベア市場は通常8~9か月続きます。
中間的な調整は通常数週間から数か月間で終わります。
ブル市場 vs 短期的な株式市場の上昇トレンド
フォロー・スルー・デーや他の要因が、新しい上昇トレンドの始まりを示すことがありますが、それが必ずしも新しいブル市場の始まりを意味するわけではありません。
簡単に言うと、新しいブル市場は、ベア市場の後にのみ始まります。
*これは非常に重要!
ブル市場の期間はさまざまですが、通常は2~4年続きます。
ブル市場の中で発生する短期的な上昇トレンドは、数週間から数か月間続くことが一般的です。
ブル市場、ベア市場、中間的なトレンドを区別することの重要性
ブル市場、ベア市場、中間的な調整を区別することが重要な理由はシンプルです。
最大の利益はブル市場サイクルの初期段階で得られるからです。
この時期が株を買う最良のタイミングです。
ブル市場のサイクルが3年目に入ると、次の2つのことが起こる傾向があります。
市場が不安定で変動が激しくなる:ブル市場が疲れ始め、サイクル初期に見られた熱意が薄れてきます。中間的な調整がより頻繁かつ深くなる可能性があります。しかし、ブル市場の基調が続いている限り、株式市場で利益を得るチャンスはまだあります。慎重にトレンドを見守り、確実な株の売買ルールに従うことが大切です。いずれベア市場が出現することを念頭に置いておきましょう。
リーディング株がピークに達し、その後下落する:すべての株価が永遠に上昇するわけではありません。ブル市場の後半では、ミューチュアルファンドや他の大口投資家が大手リーダー株を利益確定のために売却し始めるため、株価は下がり始めます。そのとき、どれだけ会社の業績や製品が優れていても、利益を守り、損失を避けるための売却が必要です。
これが株式投資における基本的な考え方です。
これまでに紹介した5段階の市場エクスポージャーレベルを参考にすることで、リスクを適切に管理することができます。
ベア市場での成長株の下落:
ベア市場では、前回のブル市場でリードしていた成長株は平均で72%下落します。
株式市場の歴史を見ると、これらのリーダー銘柄が次のブル市場サイクルで再びリーダーとなる確率は8分の1しかないことを示しています。
したがって、市場が弱まり始めたら、利益を守り、大きな損失を避けるための対策を講じる必要があります。
*逃げ遅れた場合に、次のブル相場までそれらの銘柄をホールドしても報われないことが多いため。
今現在起こっている下落が中間的な調整にとどまるのか、本格的なベア市場に発展するのかは、時間が経たないとわかりません。
いずれにせよ、確実な株の買いと売りのルールに従うことが重要です。
これにより、下落局面でポートフォリオを守り、次の上昇トレンドでさらなる利益を得るための基盤を築くことができます。
これまでの記事
1.IBD(Investor's Business Daily)の投資方法論
2.米国株投資の3つの基本概念
3.株式市場のタイミングをはかることは可能か?
4.株式市場のトレンド変化にどう対応するか(本記事)
5.株価チャートとテクニカル分析
テクニカル分析についてもっと学んでみましょう。
オニール流の投資手法に興味がわいてきた方はこれらの本で勉強できます。
毎週末週報で投資戦略をアップデートしています。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
この記事が読者の皆様がリスクとリターンを考慮したより良い投資判断を行うための手助けとなれば幸いです。
この記事が役立った場合は、スキ・コメント・フォローなど頂けますと励みになります。
*個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。
*実際の投資判断については自己責任でお願いします。