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米国大統領選挙年のS&P500を分析する
2024年の米国株投資戦略の記事で米国大統領選が行われた年のアノマリーについて触れましたが、気になったため追加で調べてみました。
1949年から2023年までのS&P500のデータを用いています。
大統領選挙年のS&P500パフォーマンス
まずは大統領選挙年のS&P500パフォーマンスを確認しましょう。
1949年以降過去18回の大統領選挙年の平均年次パフォーマンスは+7.26%で、これは1949年以降のすべての年の平均年次パフォーマンスである+9.29%に比べて特別良いパフォーマンスではありません。
表1には大統領選年におけるS&P500の月次平均パフォーマンスを示しました。
比較のために1949年から2020年までのトータルでの月次平均パフォーマンスも記載しています。
*赤字:トータルでの平均より0.5%以上の上振れ、青字:0.5%以上の下振れ
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この表から、大統領選の年においては
1) 1月、3月、10月が例年に比べて軟調となりやすい。
2) 6月、8月は例年よりパフォーマンスがよい。
3) 例年パフォーマンスのよい11月、12月は大統領選の年においても強気で臨むことができる。
以上のことが分かります。
現職大統領が出馬した年のS&P500パフォーマンス
さらに2024年では現職のバイデン大統領が出馬することから、現職大統領が出馬した場合のパフォーマンスを確認しましょう。
1949年以降、1952年から2020年までの18回の大統領選のうち、現職大統領が出馬したのは以下の11回です。
1956年: ドワイト・D・アイゼンハワー(共和党) - 再選成功
1964年: リンドン・B・ジョンソン(民主党) - 再選成功
1972年: リチャード・ニクソン(共和党) - 再選成功
1976年: ジェラルド・フォード(共和党) - 再選失敗
1980年: ジミー・カーター(民主党) - 再選失敗
1984年: ロナルド・レーガン(共和党) - 再選成功
1992年: ジョージ・H・W・ブッシュ(共和党) - 再選失敗
1996年: ビル・クリントン(民主党) - 再選成功
2004年: ジョージ・W・ブッシュ(共和党) - 再選成功
2012年: バラク・オバマ(民主党) - 再選成功
2020年: ドナルド・トランプ(共和党) - 再選失敗
このうち現職大統領が再選に成功したのが7回、再選に失敗したのが4回となります。
①現職大統領が出馬した場合のS&P500年次パフォーマンス
前回の記事でも触れたとおり、現職大統領が出馬した場合の平均年次パフォーマンスは+12.81%となります。
これは大統領選年全体での平均年間パフォーマンスである+7.26%を上回り、すべての年の平均年次パフォーマンスである+9.29%をも上回っています。
②現職大統領が再選に成功/失敗した場合のS&P500月次パフォーマンス
表2は現職大統領の再選成功/失敗のいずれかのシナリオの場合にS&P500の月次パフォーマンスがどうであったかを示しています。
ここで注目すべきは再選失敗シナリオの場合には2月、3月が際立って軟調となっている点です。
年初3か月のパフォーマンスが悪い場合には現職大統領の敗北のシナリオを株式市場が示していると考えられます。
一方で年後半のS&P500のパフォーマンスは再選失敗シナリオにおいても必ずしも悪くはありません。
むしろ再選失敗シナリオでは4月から8月にかけての力強い上昇が見られます。
サンプル数が少ないですが、通年でのS&P500パフォーマンスは
再選成功シナリオ:+10.75%
再選失敗シナリオ:+16.41%
でした。
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③1-3月のS&P500パフォーマンスと大統領選の結果
さらに現職大統領が出馬した年の1-3月のパフォーマンスと大統領選結果の関係を見ていきます。
大統領選の年において1月、2月、3月のうち、いずれか1ヶ月のみパフォーマンスがマイナスであったケースは合計3回あり、うち2回で再選に成功しています。(再選成功率 66.7%)
またどの月もパフォーマンスがマイナスになっていないケース(合計4回)はすべて再選に成功しており、これら2つのパターン(マイナスの月が0ヶ月、または1ヶ月のみ)を合わせた合計7回のうち再選に成功したのは6回でした。(再選成功率 85.7%)
なお、大統領選の年において1月、2月、3月のうち少なくとも2ヶ月のパフォーマンスがマイナスであったケースは合計4回あり、うち現職大統領が再選に成功したのは1回のみです。(再選成功率 25.0%)
これらのデータを知ると2024年1-3月の米国株の推移から目が離せませんね。
大統領選年のアノマリーを考慮した投資戦略
もちろん株価には金利などの要素も関与するため、これらのアノマリーのみですべてを判断することはできません。
しかし、一方で月次パフォーマンスなどについてのアノマリーは無視できないことを経験のある投資家ならばご存じかと思います。
上記で示したデータを考慮すると、大統領選の年にあたる2024年においては、
1) 1-3月の米国株パフォーマンスは特に注目すべきである。
2) 6月の月次パフォーマンスは良好であることも踏まえると大統領選年に見られる3月の下げは買い場になる可能性がある。
*特に再選失敗シナリオでは3月の下げも大きいが、4月から8月にかけての上昇も強い。
3) 11月,12月の月次パフォーマンスも良好であり、大統領選年に見られる10月の下げは買い場になる可能性がある。
これらを念頭に置きつつ、金利や経済状況も考慮に入れながら投資タイミングを見極めたいですね。
2024年の投資方針はこちら↓。
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”Stock Trader's Almanac”
なくても投資で困ることないですが(笑)、米国株のアノマリーについてまとめた本です。
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