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高金利と金価格上昇は両立する?
高金利と金価格上昇は両立するのか?
現在、金価格が史上最高値を更新し続けています。
一般的には金利が高い状況では、配当を生み出さない金は投資対象としての魅力が低下するため、高金利は金価格に逆風であると言われています。
しかし、現在の米国では高金利と金価格の上昇が同時に生じています。
過去にこのような状況が見られたことがあるのでしょうか?
ここでは、特に1980年代初頭に高金利と金価格が上昇した事例を取り上げてみましょう。
これにより現在の金価格の動きがより理解しやすくなると思います。
1980年前後の金価格上昇の事例
金利の状況: 1980年前後から米国は高インフレと戦うために、インフレ・ファイターとして知られるポール・ボルカーFRB議長の下で金利を急激に引き上げました。
ボルカー氏がFRB議長に就任した1979年8月時点では消費者物価指数の伸び率は前年同月比で11.8%で、1980年3月には14.8%まで上昇しました。
これは現在のパウエル議長による利上げのきっかけになったコロナ後のインフレを上回るひどい状況でした。
このときのFRBは金融政策のターゲットをFF金利から準備預金に変更することで、通貨供給量を絞る方針をとっています。
金利水準を資金の需要に委ねたため、この時期の政策金利(連邦資金利率)は、歴史的に見ても非常に高いレベルとなりました。(1981年1月にはFF金利はなんと19%台まで上昇しています。)
結果として金利の急上昇により米国経済は景気後退を経験しましたが、1981年5月には消費者物価指数の伸び率を一桁台まで低下させることに成功しました。
金価格の動き: この金利引き上げの期間中、特に1979年から1980年にかけて、金価格は記録的な高騰を見せました。
1979年の初めには、金は約230ドル/オンスで取引されていましたが、1980年1月には一時的に850ドル/オンスを超えるレベルまで急騰しました。
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金価格上昇の原因:次に当時の金価格上昇の原因を見ていきましょう。高金利の逆風のもとでもこれらの要因が存在することで金価格は力強い上昇を見せました。
インフレの期待: 1970年代後半の高インフレの状態は高金利の逆風を受けた状態でも金への投資を魅力的なものにしました。インフレによる購買力の低下への懸念が、実物資産への投資を促進しました。
経済的不確実性: 米国経済における不確実性、特に高インフレと高失業率の組み合わせは、投資家がリスクを避けて安全な資産を求める動きを強めました。
地政学的要因: この時期には、イランの革命やソビエト連邦のアフガニスタン侵攻など、地政学的な緊張が高まっており、これがさらに金への投資を後押ししました。
まとめ
1980年前後の事例は、金価格が単一の要因(例えば、金利のみ)によって動くわけではなく、インフレの期待、経済的・政治的な不確実性、地政学的リスクなど、複数の要因が相互に作用することで形成されることを示しています。
現在の状況を確認すると、①強いインフレ期待、②イスラエルとイランの緊張の高まりなどによる地政学的リスクの顕在化、③世界経済・通貨・金融市場の不確実性を意識した各国中央銀行の積極的な金購入など、(やや形は変わっても)共通する点があります。
「高金利なのに金価格が上昇している」というよりも「金価格上昇を含むインフレ傾向が利下げを困難にしている」という方が現在の状況をよく表していると感じています。
過去の事例からも現在の比較的高い政策金利の逆風の中でも、金価格が上昇し続ける可能性があると私は考えています。
この状況下での投資戦略を以下の記事で考察しています。
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