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豊かで快適な『トイレ空間』を世の中の人に届ける | わたしとトイレ設計07 ~special column~

■シリーズ紹介:special column わたしとトイレ設計
建築・建設に携わるみなさまに、「トイレ」にまつわるお考えやエピソードを教えていただくシリーズです。 毎日使うけれど実はよく知らない「トイレ」と、「トイレを考える人」のマインドやアイデアにフォーカスします。

謹んで新春のお慶びを申し上げます。
いつもA-SPECをご愛顧頂き、誠にありがとうございます。
LIXILのトイレビジネスのリーダーとして、寄稿をさせていただきます。

株式会社LIXIL
常務役員
LIXIL WATER TECHNOLOGY JAPAN トイレ空間事業部長 水谷優孝

おかげさまで、2024年に、LIXILの水まわり・タイル事業が、国内100周年を迎えています。この100周年(Centennial)にあたり、今までの100年の歩みを色々と整理し、学び直しました。そこで、『LIXILの考えるトイレの空間とその設計』について、少しお話をさせていただきます。



世界に届けたい日本のトイレ文化

日本のパブリックトイレは、非常に清潔で快適な空間です。昨年は、映画『PERFECT DAYS』でも、日本の清潔なトイレとそのトイレを熱心に清掃する人が、世界の人の話題となりました。

日本では、古来より、水は身を清め、穢れを洗い流すものとして、生活の中で特別な役割を担ってきました。水に対するこのような考え方は、清潔を重んじる日本の文化や精神性に深く根付いています。
清潔を重視する文化を持つ日本では、おしりもキレイにしたいと温水洗浄便座が広く普及し、世界一の普及率を誇ります。また、他人に迷惑をかけないという配慮や『おもてなし』という考え方も、日本においてトイレをキレイに保つ要因になっていると考えます。近年、温水洗浄便座が世界に広がっていますが、この清潔で快適なトイレ空間も同様に世界に広がることを願っています。

LIXILが世界に届けたいと願う「清潔で快適なトイレ空間」



『建築家的思考』による水まわりの実現

 
LIXILのDNAの一つに、『建築家的思考』があります。これは、家や空間を建築したり設計したりする人の立場やその想いをくみ取って、空間や商品を考えるということです。

LIXILの水まわりビジネスの祖業は、タイルです。

タイルは、単体(一枚)ではその真価を発揮することができません。建築や空間全体にデザイン・施工されることで、はじめて、その魅力を最大限に引き出すことができます。著名物件では、タイルの色や質感自体も建築・設計側の要望に応えて、物件ごとに表情や色が調整されてきました。

帝国ホテル二代目本館/帝国ホテル旧本館(ライト館)の絵葉書
■ LIXILのルーツ:伊奈親子は、帝国ホテル直営工場「帝国ホテル煉瓦製作所」の技術顧問として迎え入れられ、アメリカの建築家フランク・ロイド・ライトの代表作の一つとして知られる帝国ホテル 二代目本館 通称「ライト館」の装飾に富んだ煉瓦やテラコッタを製作。そして、その竣工とともに、役割を終えた「帝国ホテル煉瓦製作所」の設備と職人を、匿名組合伊奈製陶所に引き継ぎ、1924年に株式会社化しました。
フランク・ロイド・ライト設計の帝国ホテルの黄色い煉瓦とテラコッタ


トイレでは、2001年に『世界最小・満足最大』をコンセプトにしたタンクレストイレ『SATIS』を発売し 、日本のトイレの文化を変えたと高く評価されました。

タンクレストイレ『SATIS』

当時、高級トイレといえば大型で重厚なものが主流でした。
しかしLIXILは、使う空間が広くなるという価値に着目し、小型トイレの可能性を見出したのです。これは、単なる製品やモノ発想ではなく、空間全体を捉える建築家的思考によって生まれた革新でした。
購入者や使う人の満足を最大にするトイレ空間を、今後も追究していきます。


女性が抱える課題の解決を目指して


トイレを使う人のおよそ半数が女性です。
一般的に過去の時代において、女性に焦点を十分に当てていない商品が多かった印象があります。LIIXLでは、暮らしを対象にするビジネスだからこそ、女性にも着目して、事業を進めています。

具体的には、フェムケア、フェムテックなど、 女性が抱える課題の解決を目指した取組を強化しています。LIXILは、約35年前から、女性のデリケートゾーンのケアを考え、「おしり専用」と「ビデ専用」のノズルを分けた2本ノズルを開発・展開してきました。この取り組みは、女性の健康に貢献するものとして高く評価され、2年連続で Femtec Japan AwardのSilver賞(Gold 1社に次ぐSilver1社を2年連続受賞)を受賞しています。

「おしり専用」と「ビデ専用」のノズルを分けた2本ノズル



トイレの空間設計にまつわるサポート提供


パブリックトイレの設計には、専門的な知識や経験が必要とされるため、人材育成に時間がかかるという課題があります。そのため、今後はこれまで以上に人材の不足が懸念されています。

近年増加傾向にあるトイレリニューアルにおいては、新築以上に専門的な知識や経験が求められます。そこでLIXILのシステムトイレは、設計をメーカー側で担当することで、設計する方の工数を減らし、施工の効率化、工期の短縮、省スペース化などを実現しています。

省工数・省施工、工期短縮、省スペースなどを実現するシステムトイレ

また、商品選定や注文の仕方にも知見やコツが必要です。そこで、今後は、商品の選びやすさや受発注のしやすさ、施工性の改善にも一層取り組んでいきます。

LIXILが、パブリックトイレにおいて、空間計画を自動設計でサポートする『A-SPEC』のサービスを推進していることは、設計される皆さまへのお役立ちを第一に、上述のトレンドを踏まえたものであり、さらには建築家思考がその背景にあります。A-SPECが今後、さらに皆さまの役に立つツールとなっていくことを確信しています。
『A-SPEC』をさらに使いやすく、皆様にとってより価値のあるサービスにするために、設計に関わる皆さまからの率直なご意見・ご感想をお待ちしております。

~パブリックトイレ空間を自動設計するクラウドサービス「A-SPEC」~
難解で熟練の知識が必要とされる、使い勝手の良いトイレ空間の設計を無料でサポート



豊かで快適なトイレ空間を多角的に叶える


パブリックトイレについて、A-SPECに加えて、withCUBELIXIL Toilet Cloudなどにも取り組んでいます。
withCUBEは、1日で設置可能なため、職場のトイレ不足を迅速に解消できます。働く女性の方々からも高い評価をいただいています。また、LIXIL Toilet Cloudは、IoTを活用しトイレの清掃効率やメンテナンスの向上を目指しています。LIXILは、今後も、豊かで快適なパブリックトイレを世の中に届けるべく、魅力ある商品やサービスの提供に努めてまいります。
 
今後とも皆さんのご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
本年が、皆さまにとって、健康で笑顔で幸多い一年となることを祈念しています。


筆者紹介

■ 水谷 優孝 (みずたに まさたか)
株式会社 LIXIL 常務役員
LIXIL WATER TECHNOLOGY JAPAN トイレ空間事業部長
1965年 三重県生まれ
1988年 早稲田大学 理工学部 電気工学科 卒
1988年 株式会社LIXIL(当時 株式会社INAX)に入社
長年、 シャワートイレや設備商品の新商品開発や商品マーケティングに従事。ベトナム、アメリカ合衆国への赴任経験あり。
夢は、『世界中の人のお尻をキレイにすること』。
■ 関連リンク
HP:株式会社LIXIL
HP:INAX TOILET SELECTION
HP:いっしょに考えます、トイレのこと「A-SPEC」

「A-SPEC」(a-spec.lixil.com) のご紹介
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