【俺ら田舎者だ】鳥栖の入場者数を考える。

今季3試合のHOMEゲームを終えた時点で、平均来場者数は8,767人。開幕戦も1万人を切る状態であり、勝ち点も深刻な状態であるが入場者数も一つの悩みではある。今回はもっと増えて欲しいというサポーターとしての願望を前提としながら、「そもそも今の状況ってどれくらいマズい?」という現状把握から、他チームと比較した上で鳥栖が置かれる特殊な状況を分析し、これからの展望を考えた気になってみたい。

できるだけ客観的に述べられるようデータは用いるが、その上で他を下げる気はなくても、下げてしまう可能性を含んでいる。その点はお許し願いたい。


1.実際田舎だが田舎の割にすごいだろ

J1で13年目に突入した鳥栖はあたかもここにいて当たり前のような風格すら漂っているが、街の規模から考えると「よくまだ立ってられるな」と思えるほどである。昨年の18チームのスタジアム所在地(以下ホームタウン)とその人口を元にここでは考える。

18チーム中ホームタウン人口が100万人を超えているのは、横浜市(マリノス・フリエ)・大阪市(セレッソ)・札幌市(コンサ)・福岡市(アビスパ)・京都市(サンガ)・神戸市(ヴィッセル)・川崎市(フロンターレ)・さいたま市(レッズ)・広島市(サンフレッチェ)の10チームである。

この中に、東京都であるFC東京(調布市)と大阪府であるG大阪(吹田市)が含まれないのは若干イメージとのギャップがある可能性があるので事前に伝えたい。

100万人どころか10万人に満たないクラブがある。それは、オリジナル10の中のオリジナルでお馴染み鹿島アントラーズと、我らがサガン鳥栖である。

その上で昨季の入場者数を見てみたい。まとめたのが表1である。鳥栖・鹿島の小ささに驚くと同時に、他のクラブがめちゃくちゃ大きな街にあるということに気付かされる。「正直田舎者」改め、「実際田舎者」という感覚である。

表1:2023シーズンJ1来場者数(ホームタウンの人口順)

今回は、決して田舎者である自覚を持つための記事ではなく「来場者数ってどうなん」というのが本題である。そして街の規模・人口と照らし合わせてさらに可視化したい。以下の表2には人口と来場者数から「人口100人あたり来場者数」というものを出してみた。

2023平均入場者数 ÷ ホームタウン人口 × 100という計算式である。この数値は「 もし仮にスタジアムにはその街に住民票を置いた人だけしか入れなくて、その街で100人集めてみたら何人スタジアムに行ったか」を表す、あり得ない話を表現したものである。

表2ではこの数値順に並び替えてみる。

表2:2023シーズンJ1来場者数(人口100人当たり来場者順)

この数字を元にさらに具体的な妄想を広げると、「京都市内で100人集めたらサンガサポが1人見つかる。鳥栖市内で100人集めたら鳥栖サポが14人見つかる」みたいなこと。

この数値を見ると「街が小さい割には客が多いな」との自信が湧いてくるはずだ。我々鳥栖サポはこの自信と自覚は持っておいても恥ずかしいものでは無い。

またこの数値で並び替えると下位に来るのは、同じJ1に2つのクラブがある(あった)横浜の2チームと大阪の片方。それからカテゴリー違いで同じ都道府県内にクラブがある福岡である。横浜も福岡も大阪も人口の値がデカすぎるのでこの数値でいい結果を出す難易度が高いのは前提だが、マリノスもアビスパもここ数年でタイトルを獲得しているのにも関わらず人口あたりで考えるとここまでしか客が入らないのはサッカー人気そのものを表している気がする。

アビスパと鳥栖は昨季の年間入場者数が500人程度しか変わらないのでこの数値だけ見ると「九州はサッカー人気がない」みたいな結論に陥ってしまう。しかし、そんな単純な話ではない気がするし、(他チームのことを悪く言うほど余裕が無いが)アビスパの抱える観客動員に関する問題は、鳥栖が抱える問題とは全く別物だし、思っている以上に深刻である。よく言えば伸び代しかない(本田圭佑)。

表2では平均値を加えて書いている。人口100人当たりの入場者数の平均は5.21である。この数値を今のJ1が持つポテンシャルと考えれば本来、佐賀県鳥栖市にホームタウンを置く鳥栖は3700人ほどしか平均入場者数は叩き出せないはずだ。

鳥栖市人口72,000 × 人口あたりの来場者数リーグ平均0.521 = 3753.90

このポテンシャル観客数3700人は割と当たってるはずで、昨季のホームゲームである天皇杯初戦(2回戦)のVS宮崎の入場者数は2,808人であり、Jリーグカップで最も入場者数が少なかったVS磐田戦はほぼニアピンの3,753人である。どちらのゲームも平日水曜日開催のカップ戦であり、「平日のカップ戦まで熱心に応援に行く激アツファン層」はこれくらいである。

本来鳥栖の人口規模で日本の今のサッカー人気であれば、年間平均3700人代であってもおかしくない。しかしながら年間平均1万人を出している。+6400人くらい人が入っている。この+の分はクラブの魅力と努力であると考えても過言ではない。

鹿島に関して言えば、本来3500人位であってもおかしく無い訳だが大きく上回る2万人越えだ。これはクラブの歴史と日本サッカーのプロリーグにいち早く参入した先行者利益としか言えない。クラブの歴史もJ1の歴史も、先行者利益も持っていないが、鳥栖の目指すべきはこの鹿島大先輩である。

つまりここで言いたいのは、鳥栖サポとして他のデカすぎる街にあるクラブと入場者の数だけで比較することなく、こんなちっさい街なのにこんなに客はいるのかよと言う自信と自覚。そして3700人を下回った時マズイと思う覚悟である。

2.減ってるのは事実、コロナ禍から戻しきれていないのも事実

ここまで「田舎なのにやれてるのが鳥栖」という話をデータで根拠づけながら書き綴った。しかしながら、粘ってはいるものの観客が減っているのは事実である。なんとなく読んでいて察しているかと思うが筆者の頭の中には「観客数=ホームタウンの人口 × サッカー(Jリーグ)の人気 × クラブの人気&努力」と言う計算式がある。

そして、観客数だけ見るとリーグ下位だが、それはホームタウンの人口が大きく影響していることを示した。ここからはその計算式の中でも、「サッカー(Jリーグ)人気」と言うところに焦点を当てて、観客数を見てみたい。

グラフ1:鳥栖の年間総観客数(青左軸)J1の総観客数(赤右軸)

グラフ1は鳥栖の年間総観客数とJ1の総観客数を棒グラフにしている。当然、実際の数はリーグ全体の方が大きいので左右で軸を割り当てていることに注意した上で、それぞれの数よりも前年との伸び率・落ち率の推移を見て欲しい。スタートはできるだけ揃えている。

基本的にはリーグ全体が伸びた時には一緒に鳥栖も伸びているし、コロナ禍の2019年と2020年の間は共に大きく落ちているのが分かる。鳥栖の観客数の伸びがリーグのトレンドより少し大きいのは、①2013年と2014年の間と②2016年と2017年の間の2つである。ここは単純に成績が良いというの大きな理由で、2014年はクラブ最高順位5位の年であり、2017年も8位と半分より上でシーズンを終えている。「観客が多いから成績が良かった」という選手を鼓舞したかどうかの検証は筆者の力量では難しいのでここでは行わない(行えない)。

2017年と2018年も割と伸びている。これは英雄フェルナンドトーレスが鳥栖に在籍しており、同時に割とタレント揃いだった事もあり得るだろう。この観客動員でその豪華な補強にかかったコストをペイできたかについても筆者の専門外ということで勘弁願いたい。

問題は2020年にコロナ禍でリーグ・クラブ共に落ちぶれた時より後である。青と赤のグラフの長さの差がおおきくなりつつある。それを次の表で数字にしてみよう。

表3:コロナ禍以前の観客数推移(鳥栖とJ1)※間の%は前年比

ターニングポイントのパンデミックは2020年の1月から。つまり2020年は全て一旦潰れてその後復活できているかが鳥栖の間客数を見る上での大きな鍵になる。まず2019年から2020年の間はリーグ共に前年比7割落ちた。落ちた割合が若干鳥栖の方が小さいが誤差の範囲であろう。2020年から2021年の間で情勢が変化し少し社会活動が大きくなってきたところで鳥栖は+74%と大きく復活している。リーグの42%より大きな復活だ。2021年と2023年の間ではリーグと比較して伸び率が小さくなっている。結果的に下の表4のような結果になった。

表4:2019-2023の間での比較(鳥栖とJ1)

コロナ前の2019年と完全に社会がコロナから復活した2023年の間でJ1はほぼほぼ生き返った。しかし、鳥栖はまだ瀕死であるように見える。戻りきれていないのだ。前半で述べたようにそもそも、人口に対して素晴らしいほどの観客のパワフォーマンスを見せている鳥栖だが、コロナ前はもっと凄かったのは事実である。

上位に食い込むという結果やトーレスのようなタレントがいないことが要因で、J1昇格後も鳥栖は観客数を伸ばしてきた。その期間の実力はもっと評価されるべきであろう。しかしながら、その期間で伸ばした観客層は非常に脆く一定期間離れればもう戻ってこなかったというのが実際なのかも知れない。

特にタレント(有名選手)を使った集客は、今まで興味をひかなかったいわゆるライト層に劇的に刺さったがその選手がいなくなると同時に離れていった。タレントへの応援をクラブに転換できていないと評価せざるを得ない。

表5:昇格初年度2012-昨季2023の間での比較(鳥栖とJ1)

ちなみに、昇格初年度と数値的に比較するとこうなる。まずはここまで戻すことが一つのゴールではないだろうか。現状鳥栖は債務超過解消という経営的ミッションを抱えている。この達成は絶対で、失敗=クラブの存続危機である。このミッションは達成へと向かっており、この再建を成し遂げた後はクラブとして安定した運営をすることを目指す必要があるだろう。

中盤で述べたように、「観客数=ホームタウンの人口×サッカー(Jリーグ)の人気×クラブの人気&努力」という計算式があると信じている筆者としてはここ数年でホームタウンの人口を爆増することは不可能であることは理解している。そして、サッカー人気に関して少し期待していたがこのW杯の快挙でこの盛り上がりであることでこの点にも期待していない。

この計算式であと変えることができるのは、クラブの人気&努力であると考えている。それは当然勝利することがいちばんの近道かも知れない。そしてその勝利には、地元サガテレビでの放送のタイミングでの勝利であればなお良いし、夏休みに初めてきた小学生の前であれば一生物のサポーターを獲得できるかも知れない。

勝利をどう勝ち取り、魅せるか。長々と書いたが結局そこに行き着くのである。ただ筆者が提案する知識を持ち合わせていないだけであることがバレないうちに書き終えるが、この記事では「意外と鳥栖は観客数という点では店では健闘している」という現状・現実と、「減ってはいるからここまでは戻したい」という今後のゴールを提示しておきたい。




出典

各地方自治体HP


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