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Entwicklung歌詞解説

曲の動画はこちらから


はじめに

やあやあ、おしゅんです。今回は2024年12月7日~12月8日にAroh様(X:@ismprfmtar)によって開催された「ボカロオルタナティブ祭2024」に投稿させて頂いた「Entwicklung」の歌詞の心理学的な部分の解説をしたいと思います。

今回はざっくりざっくり言ってしまうと「赤ちゃんの曲」です。実はこの曲は投稿しようとしていた1曲目のものが没になって、急遽1週間前くらいに作り直した曲なんですわ。Xとか見てると皆さん投稿祭3,4日前に予約投稿完了してて自分も余裕もって投稿祭に参加したいとは思ってるんですがね…。まあギリギリにならないとアイデア浮かばないし仕方ないね。ちなみにこの曲を作るためにもともと好きだったthe cabsを全曲聴きました。高橋國光氏のすごさを改めて実感しましたわ。

それでは歌詞解説行ってみましょう。

歌詞全文


図1 歌詞全文

口唇期 Aメロ

以前『箒星』で紹介したフロイト氏の心理=性的発達段階の一番最初(0~1歳半ごろ)の段階です。
まずフロイト氏は人の行動の基となる根源的な欲求やエネルギーであるリビドー(すなわち性的エネルギー)という概念を提唱し、身体的活動には身体的エネルギーが必要なように、心的活動には性的エネルギーが必要であると考えました。

心理=性的発達段階はリビドーの充足を満たす性感帯から人間の発達をとらえたものになります。そして発達が進むにあたってリビドーが集中する場所が変わるといった感じです。

そんな概念における「口唇期」はリビドーが唇にある時期で、口唇部位の活動によって欲求が満たされます。当初の赤ちゃんは「お母さんと一体になった感覚を持っている状態」のために自体愛的なものだったのが、ミルクを与えてくれる母親への対象愛へ変化することで母親との基本的信頼感が形成されるという経過をたどります。

また心理=性的発達段階には「固着」という概念があり、これはその発達段階においてリビドーが満たされない経験をすると生じやすい性格の特徴のことになります。
口唇期における固着は落ち込みやすい、ひがみやすい性格になりやすいとされています。

ほどよい母親 Bメロ

イギリスの小児精神科医のウィニコット,D.W.が提唱したもの。
臨月から出産数週間後の母親は赤ちゃんに対してかかりきりの状態(原始的没頭)になるが、産後の経験を取り戻すとともにその状態ではなくなっていく。そして赤ちゃんの身体・精神的発達により完全な母性的かかわりを加減していくようになります。

さて、そんな変化が母親に生じるときに赤ちゃんはどう感じるでしょうか。「何でもしてくれるお母さんじゃなくなっちゃった」「自分の一部であるお母さんなのにどうして」と感じると考えられていました。しかしそう感じるおかげで、母親からの分離と現実世界への適応ができるようになります。

これらを踏まえて「ほどよい母親」というのは、言ってしまえば赤ちゃんにちょうど良い程の自立を促すものということでいいでしょう。赤ちゃんに対してずっとつきっ切りで何でもしてしまうと自立につながらず依存的になってしまうし、逆に赤ちゃんの訴えにうまく反応してあげられない、もしくはそもそも反応してあげないと孤独感につながってしまいます。ということで文字通り「ほどよく」赤ちゃんに構ってあげることが大切というわけです。完璧な母親になろうとしなくても良いのです。

妄想・分裂ポジション 1サビ

オーストリアのメラニー・クラインが提唱したもの。
クラインは前述したフロイトから学び、さらに自分の理論を展開していった人です。

妄想・分裂ポジションとは生後3~4か月ごろに赤ちゃんが体験するもので、母親のことを部分的にしか捉えることが出来ない状態のことを指します。自分の欲求を満たしてくれる母親を良い対象(乳房)、欲求を満たしてくれない母親を悪い対象(乳房)と捉えるとされています。

そのためにミルクをくれる母親であるにもかかわらず、母親のことを嫌ってしまっていたという自分に気づくタイミングがあります。そのタイミングが次に紹介する抑うつポジションです。

またストレスから自分を守ろうとする心の働きである「防衛機制」というものがあるのですが、この時期に働きやすいもので「原始的防衛機制」というものがあります。まあ、この話はまた別の曲で取り上げようと思います。

抑うつポジション Cメロ

妄想・分裂ポジションと同じくメラニー・クラインが提唱したもの。
生後4か月~2歳ごろまでに赤ちゃんが体験する心理状態のことで、赤ちゃんの知覚能力が向上したために母親を部分的でなく全体として捉えることが出来る様になる時期を指す。

妄想・分裂ポジションにいた赤ちゃんは嫌っていた対象が母親だったということに気づき抑うつ的になり、母親に対する罪悪感や「母親を失うのではないか」という分離不安を感じるとされている時期です。

移行対象 2サビ

「ほどよい母親」でも紹介したウィニコット,D.W.が提唱した概念。
ぬいぐるみや毛布など、赤ちゃんが特定のものに愛着を示す対象のこと。

母親が赤ちゃんにかかりきりになる中で赤ちゃんは、その万能感から「母親の乳房は自分が作り出したものだ」と錯覚する。しかし成長にするにつれてその考えから脱し、現実世界に適応していきます。

移行対象は現実世界に適応していく際の分離不安(母親と離れてしまうのではないかという不安)や欲求不満を低減し、赤ちゃんの心の中の世界と現実世界の橋渡しをする役割があるという感じのものです。

安全基地 ラスサビ

メアリー・エインズワースが提唱した概念。
一言で言ってしまえば母親が心の拠り所として機能することである。

母親が心の拠り所として機能するからこそ、赤ちゃんは周囲の環境に積極的にかかわろうとするとされています。
そして心の拠り所として機能するためには十分な愛着が形成されている必要があり、基本的信頼感の存在もとても重要となってきます。

さいごに

最後まで読んでいただきありがとうございました!
ここまでお疲れさまでした。
これにて『Entwicklung』の解説を終わりたいと思います~

年内の新曲はこれと自己紹介曲投稿祭のもので最後です。
来年一発目はボカコレルーキー2024冬ですかね。
新年初手からぶちかましていこうと思います!

ではでは。

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