講師 福島智さん
国際医療福祉大学大学院公開授業
2024.10.30
見えず、聞こえずの障害をもって生きるとはどんなことか、福島さんはこんな例え話をされた。
「テレビつけたとします。画面が見えず音だけ聞こえる人は視力障害者、画面だけ見えて音が聞こえない人は聴力障害者、テレビをつけているのにつけていない状況が私ですと。これはつまり情報が全くないことで、無限の隔たり、孤独な状況にいるのです」と。
教室では 福島さんを挟んで2人の女性、(点字通訳者)が座り、90分の授業を交代で通訳する。それが早いこと!しゃべるスピードに合わせてピアノを弾くような連打で両指が複数動く。それを瞬時に福島さんが理解する、とても人間技とは思えず、ただ、ただ、脱帽!
通訳する方も読み取る方も!!この指点字を考案した人も!
日本には福島さんのような「見えない、聞こえない」二重の障害をもつ人は推定2万人、自治体が把握しているだけでも900人、東京には50人ほどいるそうだが正確ではない。 福島さんの場合中途障害で(9歳で失明、18歳で失聴力)読み書きはできるが、生まれつきの場合は、もっと障害の壁は大きい。
盲聾の教育の歴史をみると、 日本で盲人聾唖者教育の始まりは1878年。それから約150年。 盲、あるいは聾唖、どちらか1つでも大変厳しいのに、重複となると、想像を超える。 福島さんはたとえ自分のような障害でも社会の制度を整えることで、生きやすくなると言う。
その一つが指点字通訳。指点字が社会と自分をつなぐ役割をもち、通訳者の養成も制度のひとつ。点字通訳ボランティアというそれまでなかった通訳方法で、それを考案したのはお母さん。お母さんがなんとすばらしい存在か。
最後に
たまたま数日前、群馬県の星野富弘美術館へ行って富弘さんの詩画を見てきた。星野さんは首から下が動かない重度障害をもちながら、口で絵を描く画家である。このお二人に共通していることは家族がいること。特にお二人とも母親が素晴らしい!家族がいる。これは当たり前ではない。私は両親を早く亡くした孤児だが世の中には死別だけでなく、虐待されたり、親から育てられない子どもたちもいる。養護施設で私を助けてくれたのはカトリックのシスターたちで、その存在で今の私がいる。
人生は時に理不尽で受け入れ難いことが度々起きる。けれども不思議なことに、どこかで誰かが見ていて、助けてくれる。たとえどん底の暗闇にいるような時でも、いつか光がさしこむ日が来るんだなあ、人智を超えた存在の重みを感じた授業だった。
NPO法人病気の子ども支援ネット遊びのボランティア 理事長 坂上和子
(ソーシャルワーカー、保育士、調理師)
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