見出し画像

『佐藤勝利のすべて』を観に行った

なぜ観に行きたかったのか?

『佐藤勝利のすべて』を観に行った、ニューピアホールへ。

私は、ダウ90000のオタクだ。2022年の8月から、スケジュールさえ合えばライブに行っている。2023年は全部で76本のライブを観に行っており、ダウが出演しているライブの8-9割は行っているはずだ。
一方で、佐藤勝利さんのことは殆ど存じ上げない。有名なアイドルで、今はNetflixでオーディション番組をやっており、ネットにいる人たちにおいては「地面師たち」と同じくらいの視聴率がある…という超漠然とした情報しかない。さん付けが正しいのかもわからないけれど、どうかお許しください。
それではなぜ『佐藤勝利のすべて』を観に行きたいと思ったのか。

『佐藤勝利のすべて』の脚本を担当している、ダウ90000の蓮見翔さんの書くネタは、さまざまな観点から評価されている。例えば、現代の恋愛の切り取り方。20代に刺さる固有名詞の使い方。会話劇の面白さ。それらももちろんあるのだが、私が一番すごいと思っているのが「当て書きの上手さ」だ。
蓮見さんはよく、他の芸人さんにネタを書き下ろしている。ダウ90000を知ってすぐの時に見たのが、残念ながら解散してしまったトリオ・ゼンモンキーに書き下ろした「花屋」というネタだった。
また、風穴(ママタルト・ストレッチーズ・ひつじねいり・さすらいラビーの面白すぎ漫才師4組ユニット)に書き下ろした「居酒屋」のネタも衝撃だった。そもそも、ゼンモンキーも風穴の4組も、個性を生かした自分自身のネタを持っている。にも関わらず、その個性を別の切り口から昇華させて、蓮見さんのテイストに落とし込んでいる。

ダウ90000は、男女8人組ユニットで、よく「個性がない」「陽キャ集団」などと言われているが、そもそもメンバーそれぞれのキャラクターを生かした当て書きだと蓮見さんは公言している。
ダウ90000における私の推しは、園田祥太さんだ。園田さんは、例えばコント「今更」では、幼馴染の女の子2人を好きになりながらも、関係を壊したくないからと黙っている情けない役を演じている。

園田さんは、泣いたり、焦ったり、悩んだりしている役が多く、なおかつそのような役を演じているとき、あまりにも輝いている。
そしてそれは本人の個性とも一致しており、長く付き合い、同棲もしていた彼女に「よく考えたらあんまり好きじゃなかった」(!)とフラれた話をしているうちに号泣している動画を観ていると、その情けなさや彼女への未練の引きずり方は、今配信している最新の演劇公演『旅館じゃないんだからさ』の片山という役ともリンクしている。片山は、千葉のロードサイドにあるTSUTAYAで働くフリーターで、元カノとの思い出を糧に日々を過ごしている、ちょっぴり空気が読めないけど心優しい男だ。
もし今回の「佐藤勝利のすべて」でダウ90000が気になった方は、演劇公演の配信が、今週末まで観られます!!!

つまり、蓮見さんのすごさは、その人の個性や思考を汲み取ったキャラクターとセリフを作り出し、演じさせるところにある、と私は思っている。

『佐藤勝利のすべて』の1話が公開されて観たときに、衝撃を受けた。これって、蓮見さんが「お笑いが大好きで、浮世離れした、超超顔の整っている国民的アイドル」である、佐藤勝利さんに完璧な当て書きをしている…!
蓮見さん本人も「20代の若者が8人集まっている場所がなかなかない」と発言しているように、ダウ90000として出来るコントや演劇はどうしても同じ人間に当て書きをすることになる。ただ、他の芸人さんにネタを書き下ろしているときは、その幅が広がるのでより新たな脚本の側面を知れる。風穴のときなら体重190kgの大鶴肥満さん、ゼンモンキーのときならロン毛でいかつい見た目のヤザキさんなど、ダウ90000にいない身体的や精神的な個性を生かしたネタには、毎回驚かされる。
これからダウ90000を、蓮見さんの書いたネタを追いかけていくなかで、こんなスーパーアイドルに合わせたネタを観るチャンスってあるんだろうか…!?

ダウ90000のファンにはFCがないので、さすがにtimeleszに疎すぎる私でも倍率が狂っているだろうことは分かった。だって、ニューピアホールって去年の年末にダウ90000でクリスマスパーティーをした会場だから。軍手、折りたたみ傘、軍手が特典で付くヘンなライブだった、楽しかったけども。

一般発売のときには、すでにFC先行で落ちたファンの方がたくさんいたと解っていたので、ダメでもともとと思いつつ申し込んだところ、奇跡的に当選!
いざ、約1年ぶりのニューピアホールに向かった。

現地での感想

私が観に行ったのは、11/12(火)の昼公演。平日14時開演にも関わらず、当然満員。おそろしく後ろの席だったが、ニューピアホールは後方の勾配が急なので、なんとか視認できた。

現地に着くと、女の子が9割でもじもじしてしまった。ダウ90000は恋愛をテーマにしているイメージがあるからか、女性ファンが多いと思われがちなのだが、実際本公演やコントの単独に行くと、7:3くらいで男性が多い。本多劇場のトイレで、長蛇の列を見て、女性だろうと勝手に決めつけて並ぼうと見たら男性トイレの列で驚いた記憶もある。もらったフライヤーを雑にカバンに放り込んでいたら、隣の方はクリアファイルにきちんと保管していて、己のオタクとしての適当加減が浮き彫りとなった。

90分のコントライブ。構成は、蓮見さんと佐藤さん2人のコント1本、ゲストの男性ブランコを入れた4人のコント4本、幕間とオープニング、エンディングのVTR。恐ろしくベーシックな、コントライブの構成…!!ダウ90000の直近の単独とも同じ。VTRの編集にお金と時間のかかり方を感じたくらいだ。

佐藤勝利さんの役柄は、先輩に懐いているけれどちょっと変な後輩、彼女のために香水をオーダーしようとしている彼氏、演劇に取り組む学生、彼女の誕生日を祝いたい彼氏、とてつもなく金持ちな御曹司。特筆したいのが、全てのネタにおいて「顔が超キレイ」というキャラクターが、全く付与されていない。あんなにも顔が整っていて、蓮見さんも黙っていたらお人形みたい、と言うほどで、誰が見たって分かることなのに。特に恋愛をテーマにしたコントだと、こんなにカッコいい彼氏なら~といったセリフも入れたくなりそうなのに。
その代わり、全ての役から「素直さ」「純粋さ」「真摯さ」が強く伝わってきた。きっと蓮見さんから見たときの、佐藤勝利という人物像なのではないだろうか。
また、男性ブランコのお2人が入ることにより、物語に広がりが生まれている。男性ブランコのコントのストーリー性の高さ、セリフ回しの面白さはずっと感じていたけれど、今回プラスして、表情や動きのすごさに圧倒された。セリフを言うまでのちょっとした間の表情や手の動きで、変わったことを言いそうな人だというのがすぐに分かり、すんなりとその先の流れに入れる。

特に、ラストのコントは、全員の素晴らしさが表現されていて感動した…!舞台は春日部のデカすぎるイオンモール。フードコートで食事をする青年、その横に座ってきた、大金持ちで浮世離れした、でも同年代の御曹司、御曹司を追いかけてくる2人のじいや。佐藤勝利さんの演じる御曹司は、当然フードコートなんて初めてで、どう振舞っていいかも分からない。けれど、この空間を楽しもうとしている姿は、ちょっと変だけど、何だか可愛らしい。戸惑いながらも庶民のリアルを教える蓮見さんという図は、これまでYouTubeの企画として観てきた「佐藤勝利のすべて」の終着点のようにも見えた。

ダウ90000のオタク視点から言うと、やっぱりいつものダウ90000単独ライブなら蓮見さんがしなさそうなことも盛り込まれていて、ニヤニヤした。
例えば、学生演劇のコント。おそろしくつまらない学生演劇をたくさん観てきた、とよく話している蓮見さんは、おそらく過去観た演劇のエッセンスを下敷きにしたであろうコントをたまにしている。(個人的な解釈ですが、30000の『10人用』など)が、演劇部だった男性ブランコのお2人を演劇部員役とした今回のコントは、もうちょっと直接的だった。
それから、コント同士の繋がり。コント、繋げないですよという幕間VTRを2回全体でしていたのに、今回仄かに…薄っすらと…!!!もちろん全部が事細かに伏線になっているわけでは全然ないので、ご安心ください…!

ダウ90000は、お笑い芸人以外の異業種の人とともにライブしていて、アウェイのなかに飛び込まねばならない時も多い。なので、西新宿ナルゲキや、下北ドーンのような、よくあるお笑いライブの会場で、自分の100倍ネタ見ているファンの人たちに囲まれている状態だとホッとする。それでも、最初はアイドルとのライブか~と緊張していた。うちわを持ってくるな!という動画も出ていたし、キラキラに巻き込まれたらどうしよう…と思っていたけれど、今回はお客さん全員がコントライブをすごく楽しんでいるのが伝わって、押しつけがましくて大変申し訳ないのだけれど、勝手に感動していた。佐藤勝利さんがお笑いがすごく好きで、コントライブを自分のファンに楽しんで欲しい、という真摯な思いを持っていて、それが伝わっているからではないだろうか。
ほんとにね、ネタ見慣れていない人の多いライブって、興味ないとスマホいじりながら足組んでたり、ネタ中に自分がツッコミしてやろうとぺちゃぺちゃ喋ったり、まあそういうこともたくさんあるんですよ…!仕方ないですけどね…!

今日の千秋楽で、2人のユニット名が「グラタングミ」に決まったとのことで、第2回もあるのならば是非観に行きたい。そのときはほかの芸人さんをゲストに迎えるのか、それとも男性ブランコのままなのか…男性ブランコとのコントももっとたくさん観たいし、ほかならだれが入ったら面白いかなあとつい想像を巡らしてしまう。

配信があるという心優しい仕様なので、あまりコントの詳細には触れないように意識したため、ダウ90000のオタクも観た方が良いです…!シャバいことしないから、という蓮見さんの言葉も、よくわかるネタでした。


今回もらったステッカーと、去年もらった蓮見さんのサイン入りステッカー



いいなと思ったら応援しよう!