『ワンダフルデイズ』大変だからこそ大切にしたい心の微笑み
なんやかんやを十分を超えて蓄えるなど、そんな余裕のなさの目立つ今日このごろ。そんな世の中だからこそ、無いものを嘆かず有るものを愛でる余裕を持ちたい。
今回は2006年から6年間連載されたコメディ4コマ、荒井チェリー先生の『ワンダフルデイズ』をご紹介します。
■どんな作品?
ちっちゃくても力持ちな体育会系女子「金子さち」と、大家以外全員妖怪なアパート住人との交流を通して伝える、さりげなくも確実にそこにある幸せ。
同室の食う寝る(お馬で)遊ぶ座敷オヤジの躾け、猫又と少年の青春、ろくろっ首の恋、毒舌犬女の最強への道、大家の妖精探索(※奇行)などなど、ちょっぴり?変わった日常を、キレのあるコメディテイストで描いた作品です。
主な注目点としては、以下の3つが挙げられます。
・クセのある登場人物
・安心感のある画風
・日常という幸せ
■クセのある登場人物
金子さちさん:幽霊が見える人。低身長コンプ。りんごを両手で割れる。
座敷オヤジ:座敷童子的な何か。土日の朝は競馬未勝利戦から始まる。
薫さん:人気男性絵本作家。見える人。たまに妖精さんを探しに出る。
うみさん:和服美人。正体は小型犬。バトル大好き♥ ちなみに負けなし。
しおりさん:清楚かつ乙女なろくろっ首OL。びっくりすると伸びる。
たきびさん:小学生の姿をした最年長の雪女。姉御肌。にじみ出る加齢。
珠樹さん:猫又女子高生。熱しやすく冷めやすい。耳も語尾も人と同じ。
零さん:放浪中の座敷童子。男子児童たちの公園アイドル。
・・・以上、主要人物を一覧としてまとめると、コメディを披露するに充分すぎるほどの個性が集っていると言えますね。可愛いだけとか同性間の濃厚交流だけとかじゃなく、ちゃんと笑えて、ちょっとした甘酸っぱさも感じられるような爽やか4コマに仕上がっています。
■安心感のある画風
ごちゃごちゃした描き込みがなくて、読んでいて疲れないです。
それどころかむしろ、癒やし、優しさ、安心感の伝わる、ヒーリングブック的な印象を受けます。
喧騒な世界とは真逆の空間、爽やかな匂いを感じ取れるというか。
そういう画風で描かれているからこそ、作品のテーマがよりはっきりと伝わってきて、更に好きになるという相乗効果を生んでいるのだと思います。
■日常を送れるという幸せ
主人公である社会人「金子さち」は、世間からすれば「不幸」の部類に入るのだと思います。
実家が大家族であるがゆえの貧しさで、
学生時代は牛乳配達や新聞配達をやってて、
外で焼き肉を食すのは未経験だったり、
別のアパートで幽霊に首締められたり短期間で5kg痩せたり、
植木鉢やら鳥のフンやらが空からたまに降ってきたりなどなど。
けれど彼女は、全然それを表に出さないんですよね。
決して不幸と思ってないわけじゃなく、不幸やら貧しさやらを飲み込んだ上での前向きさがあります。
ドキュメンタリーで見るような、発展途上国の子供たちの笑顔と同じ感じですね。日本の子供たちと同じ笑顔を、彼らも見せている。環境で言えば、比較にならない程に差があるにも関わらず、笑顔に貴賎がないんです。どんな環境下であろうとも、その環境でも芽吹く幸せは確かにあって、だからこそ笑うことができる。辛いこともあるけど、幸せは確かにそこにある。小さいものかもしれませんけど、大事なものには変わりない。
生存競争に勝ち残るため悪戦苦闘するだけじゃなく、ふと立ち止まって星空や月を見上げてみる、春を感じる道端の花を愛でてみる、そんな余裕、心の豊かさを大事にしたいと考えさせてくれる作品です。しかめっ面な生き方だと、笑えるものも笑えなくなりますしね。
■まとめ
いかがでしたでしょうか?
note執筆時点でどこもかしこも結構大変な状況だったりしますが、疲れた羽を下ろし、スイッチをオフにして心を回復したいなーという時におすすめな作品です。
お茶、和菓子と一緒に、まったりとした時間を過ごしてみませんか?
※書籍情報
著者:荒井チェリー
出版社:芳文社
巻数:全 6 巻(新装版全 2 巻)