コロナウィルス:ブレークスルー感染って?

日本でも少しずつ進みはじめたコロナワクチン接種ですが、2度の接種後に感染するブレークスルー感染が、少数ですが報告されています。専門家によれば、きわめて珍しいとのことではありますが、4月10日付のアメリカの文芸誌『ニューヨーカー』では、スタッフライターのマシャ・ゲセンが、自らのブレークスルー感染を報告する記事を書いています。

簡単にまとめてみましょう。

家庭内感染

ゲセンはシティで、ガールフレンドのジュリアと息子と3人暮らしです。これまで感染を避けて自粛生活を続けていましたが、3月最初の金曜日、家族でニューヨーク州北部の湖畔で、スケートやクロスカントリースキーなどを楽しみました。

 片道5時間の往復は自家用車。とくに誰と接することもなかったようです。また、ゲセンは2度のワクチン接種を済ませ、ジュリアも1度目の摂取を受けていました。

 幼い息子は、家族での一年ぶりの旅に喜んでいたようですが、土曜日には疲れからか、午後になると3時間もの昼寝をしたそうです。目覚めた息子は回復し、日曜日にはスノースポーツを満喫した後、家路につきました。

 帰りの車で、久しぶりの旅で疲れたのかジュリアはずっと寝ていたとのこと。家に戻るとベッドに直行しました。そして、翌日目を覚ますと鼻水が止まらず、抗原検査を受けた結果はコロナウィルス陽性でした。

 この時点でゲセンは陰性。無症状の息子は陽性。すぐに寝室・洗面所を別にしました。その後数日で、息子はPCR検査で陰性に。そして、発症から10日間ほど苦しんだジュリアも回復しつつあった頃、今度はゲセンに症状が現れ、PCR検査は陽性でした。

 すでに2度のワクチン接種を済ませていたゲセンの例は、典型的なブレークスルー感染にあたります。倦怠感に襲わたゲセンの目は腫れ上がり、鼻水は止まらず、嗅覚は機能しません。ただ、ワクチンの効果でしょうか。それ以上悪化することはありませんでした。

そのほかの事例

快復後、ゲセンは周囲に似たような症例がないかと探しはじめます。するとブレークスルー感染をした3人の女性に出会いました。

 特徴的なのは、3人すべてがこのパンデミックの間、プロフェッショナルでありながらもリモートワークのおかげでほとんど外出もせず、自宅アパートのエレベーターも利用しないといった徹底した自粛生活を送っていたこと。それにもかかわらず感染したのは、ゲセンのように家族に感染者がいたケースが一人。感染した友人と接触していたケースが一人。

 最後の一人は60歳のアーティストで、2度のワクチン接種後に久々に訪れた画廊で、二重マスクをつけながら会話を交わした友人が後日、陽性と判明。念のために受けたPCR検査で陽性となったケースです。

 幸い3人とも重症化はしなかったものの、発症後ひと月を経てなお倦怠感に苦しんでいるケースもあります。

ワクチン効果だけでは……

結局のところ、ワクチンは効くのでしょうか。答えはイエスです。ゲセンらのケースはいずれも重症化していません。それはワクチンの効果といえます。一方、ワクチンのみで完全に感染を防げるのかというと、それは難しいのかもしれません。マスクの着用や充分な換気、ソーシャルディスタンスの維持など、社会で感染が続いているかぎりは、これまで通りの対策が必要となります。

それでも、やがて集団免疫が達成されれば、そうした感染予防のレベルを徐々に落としていくことが期待されます。摂取率が60%に近づき、1月のピーク時には1日7000人を超えていた新規感染者数が、現在では200人を切っているイスラエルがその先行例です。同国では現在、経済活動もほぼ再開しています。

 一方で、人口500万人弱でワクチン接種者がまだ10万人程度ながら、日々の新規感染者を10人以下に抑えているニュージーランドや、人口2500万人強ワクチン接種率5%で新規感染20人以下のオーストラリアなど、ワクチンに頼らずとも徹底的な封じ込めを実践してきた国もあります。

 ワクチン供給が安定化し、世界レベルで公衆免疫が達成されるまでは、私たち一人ひとりの行動が引き続き感染抑制の重要な要素といえます。

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