ワクチンをめぐる希望と不安
いよいよ日本でもワクチン接種が本格的にはじまりました。当初の遅れを取り戻すべく、大規模会場を設置するなど思いのほか順調に接種は進んでいるようです。
そんななか言われはじめたのが、ワクチンの安全性です。すでに、本ブログでも紹介してきましたが、コロナワクチンの有効性はとても高く、とりわけ日本で接種されているmRNA型ワクチンの効果は、インフルエンザワクチンとは比べものにならないレベルです。
一方で、接種後の副反応については、比較的強い痛みや倦怠感、ときにはアナフィラキシー等があることが知られています。また、二度目の接種後には高熱が続くことも少なくありません。そうした副反応があったとしても、そのメリットはデメリットを遙かに凌ぐというのが、これまでの認識です。
ただ、接種が進む欧米でも、若年層の接種には若干の懸念を感じている人々が少なくないようです。今回は、ワクチン接種にあたり知っておきたい点をいくつかまとめてみます。
若年層の接種に向けて
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によれば、10代の接種者の間に心筋炎を患うケースが少なからず見られるとのことです。その頻度はまれで、また多くの場合は軽症であることから、10代への接種は依然として強く奨励されていますが、気になる点ではあります。
結論から言えば、これまでのワクチンに比べ、きわめて短い期間に開発・実用化されたコロナワクチンについては、中長期的な人体への影響などわかっていないことは少なくないといえるでしょう。
ただし、すでに触れたように、短期的なワクチン効果はとても高く、5月21日付のワシントンポスト紙によれば、ほぼ人口の半分が1回目の接種を終えたアメリカでは感染が激減しています。これは非接種者との比較でより顕著で、非ワクチン接種者の間での感染は、ワクチン接種者に比べ70%近く高いとのことです。同時に、入院患者数も非接種者に多く見られ、ワシントン州では非接種者の場合、高齢者層では11倍、45歳から64歳では18倍も感染後の入院率が上がるそうです。つまり、接種後に感染をしたとしても、重症化する危険は低いということです。
同記事はアンカレッジデイリーニュース紙でも読めるので、リンクを貼っておきます。
秋学期に向けて
こうしたことから、現在400を越すアメリカの大学では、秋学期に向けてキャンパス登校時のワクチンの奨励・義務化を進めています。また、接種を済ませた学生に対してはマスク規制の緩和を実施しています。ワクチンを奨励する大学には、ハーバード大学、イエール大学、カリフォルニア大学バークレー校などの有名校が含まれています。
そうした大学のひとつ、ヴァージニア大学のニューズレターによれば、秋学期を前に接種を受けなければならないのは、学生だけではなく大学で働く教職員も含まれます。健康上、もしくは宗教上の理由からワクチン接種を受けられない場合を除き、大学サイトにて接種証明をアップロードすることが求められています。
子どもたちの接種をめぐり
現在、ファイザー、モデルナの両社は12歳から15歳へのワクチン認可申請を進め、CDCはサマーキャンプの季節を前に、より多くの子どもたちがワクチン接種を受けることを奨励しています。
ただし、これには反対の動きがあることも事実です。5月20日には、右派の医師団から成るアメリカ・フロントライン医師団が、16歳以下の子どもへのワクチン接種の一時停止を求める訴訟を起こしました。
これまでも、ファイザー製ワクチンの危険性を強く指摘してきた同医師団ですが、感染予防におけるマスクやソーシャルディスタンスの非有効性を主張するなどの活動も展開してきました。ちなみに創始者の医師シモンヌ・ゴールドは、1月のアメリカ国会議事堂襲撃に加わったかどで逮捕されたひとりです。
また、ワクチン接種後のさまざまな副反応等については、女性の生理に関する疑問がアメリカでも指摘されています。そこで、イリノイ大学で自然人類学・女性学を専門に教えるケイト・クランシー准教授は、自らのインターネットサイトで、ワクチン接種後の18歳以上の女性を対象にした生理状態の調査を始めました。4月にはじまったこの調査の結果が出るには、まだしばらくの時間が必要とのことです。
"Worse Than the Disease?"
ところで、5月10日、ピアレビューで成り立つオープンアクセスのインターネットジャーナル The International Journal of Vaccine Theory, Practice, and Research 誌に、マサチューセッツ工科大学コンピュータ科学AI研究所上級研究員ステファニー・セネフとオレゴン州ポートランドで癌治療を行う医師グレッグ・ナイが共著論文 "Worse than the Disease? Reviewing Some Possible Unintended Consequences of the mRNA Vaccines Against COVID-19" を発表しました。
論文では、ファイザー、モデルナのmRNA型ワクチンに関する、多くの懸念が指摘されています。とくに中長期的にmRNAワクチンが人体に与える影響については、短期開発ワクチンの治験においては確認されてこなかっただけに気になるところです。
ただし、この論文における議論の多くは、mRNA型のワクチンがコロナ感染症に対する免疫を人工的につくりだすことから、感染症そのものがもたらす疾患をも複製してしまう危険性を指摘することに終始しているようにも思えます。よって、この論文で指摘される懸念点もまた、中長期的な視点で判断されざるを得ず、なにを確かめようにも一程度の時間と経過観察が必要であることになります。
現実を見る
結局、パンデミックのさなか、私たちにできることは目の前で起きている現実をしっかりと見つめ、そこから自らのとるべき行動を導き出していくことではないでしょうか。
ワクチン接種が進むにつれて、多くの国々であれほどひどかった感染がおさまり、屋外ではマスクなしの日常が、さらに屋内でもレストラン等が再開しつつあることは事実です。
一方で、ワクチンをめぐる重大な副反応については、厚生労働省のホームページで確認できます。
こうした資料を自らの目で確かめて、進めべき道を歩むというのが、今私たちの置かれている、コロナ以前にはなかった厳しい現実なのかもしれません。
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