コロナウィルス:消毒はすべき?
4月5日付アメリカ疾病予防管理センター(以下、CDC)発行のレポートによると、机やドアノブなどに付着したウィルスを媒介とするコロナ間接接触感染の可能性は、0.01%と予想外に低い数字となっています。そして、手指消毒が感染対策として有効であるとする一方、机等の付着ウィルスの消毒には、過敏になる必要はないと記されています。これを鵜呑みにして良いのでしょうか。
消毒をめぐる論争
このレポートを受けて、アメリカ『アトランティック』誌は、過度な消毒は「形ばかりの衛生管理」と論じる記事を掲載しています。
『アトランティック』誌は、すでに昨年夏頃から、必要以上の室内消毒に批判的な記事を掲載してきました。その背景には、公共施設を中心に、また家庭においても、日に何度となく消毒を繰り返す人々の姿がありました。ちょうど当時は、プラスティックなどの表面に付着したウィルスは、数日間感染力を保つといった研究が報告されていた時期です。
これに対して異を唱えるコメントが、医学ジャーナル『ランセット』誌に掲載されたのは、7月3日のこと。多くの研究が現実世界ではあり得ない実験的環境下で、過度に多くのウィルスをサンプルに用いて得られたものとの指摘がありました。
実際には……
では、実際のところ、現在リオープニング、すなわち経済再開を進めるアメリカでは、どのように対応しているのでしょうか。大学図書館のひとつ、カリフォルニア州立大学サンタバーバラ校の例を紹介します。
オンラインサービスのみの提供を続けてきた同校図書館が、部分的ながらも開館に踏み切ったのは3月29日のこと。春クォーターの開始にあわせて、学習スペースの一部を学生たちに解放しました。
当時カリフォルニア州のワクチン接種完了者は20%弱。1回の接種を済ませたのは、人口の35%ほどでした。大学生にはまだ接種機会は回ってきておらず、州内の日毎の感染者数は3000人を数えていました。とはいえ、カリフォルニア州では年末年初のピーク時には、1日4万人を超える新規感染者がいたわけですから、この時期ワクチン接種の効果もあって状況は劇的に改善していたわけです。
それでも、再開したサンタバーバラ校図書館の対応はきわめて慎重なものでした。高等教育機関向けに定められたガイドラインに従い、収容人数は定員の25%以下に設定。すべての座席は予約制で、席間は9フィート、すなわち3メートル弱も離し、さらに消毒用ナプキンで衛生管理を入館者一人ひとりが行うことを奨励しました。もちろん、マスク着用は「義務」。グループ学習は不可。離席の際には、つねに6フィート(2メートル弱)のソーシャルディスタンスを保つことが求められます。ドリンクの持ち込みは可能ですが、その慎重ぶりが見て取れます。
4月15日以降カリフォルニア州では、大学生のワクチン接種も可能になりましたが、現在も同様の措置が続いています。今後、リオープニングが本格化するにつれ、若い世代が多く集う大学がどのように規制を緩めていくのか、注目していきたいと思います。
消毒は続ける
カリフォルニア州立大学図書館の例が示すのは、消毒は続けるという姿勢です。レストラン等の飲食を伴う施設では、なおさらそうでしょうし、公衆衛生を保つことは決して否定されるべきではありません。
また、CDCも咳・くしゃみなどによって付着した飛沫ウィルスが無害であるとは言っていません。あくまでも、日常生活における間接接触感染の可能性はきわめて低く、それに過敏になる必要はないということです。重要なのは、手指消毒を適宜実践することで、間接接触感染はほぼ完璧に防ぐことができるということです。その確率は0.01%なのですから。