【絵本レビュー】 『さよならともだち』
作者：内田麟太郎
絵：降矢なな
出版社：偕成社
発行日：2018年2月
『さよならともだち』のあらすじ：
キツネの思いつき「ともだちや」を始める前の、キツネとオオカミのお話。さよならは寂しいばかりじゃない、さよならは出会いの始まり。「かわが うみに であったように キツネが オオカミに であったように オオ カミさま！ オオ カミさま！」ふたりの歌声が満月の夜の森に響き、心が熱くなります。
『さよならともだち』を読んだ感想：
「えー、ともだちやです。
ともだちは いりませんか。
さびしい ひとは いませんか。」
だれよりも さびしい キツネは、
さびしさを ふきとばすように
おおごえで さけんでいました。
これだけで、この絵本を選んで良かったと思いました。
自分が寂しいから、寂しい人を助けてあげる。なんて素敵な考え方なんでしょう。少し前の私はオオカミと同じでした。寂しくて仕方なくて独りでなんでもして独りであることをさらに身に沁みて寂しく感じる、そんな生きかただったと思います。
それがこのパンデミックで変わりました。理由がよくわからずに幼稚園に行かれなくなり毎日退屈している四歳児と過ごす毎日。一人っ子の息子は周囲に子供がいないので、必然的に私の注意を引こうと四六時中「ママ」の連発。リストにあること全てをするのは無理でも、せめて一時間だけでも仕事をしようとすると息子がやってきて妨害される。隣で防音ヘッドフォンをつけオンラインミーティングで冗談をかわして笑っている旦那を恨めしく思う日々。ロックダウンが始まってまだ一週間だというのに、私はすでに打ちひしがれていました。パンデミックという見えない敵と戦っているのは私一人という気さえしてきました。でも独りでこもっていることさえ許されません。息子は二十四時間私にしがみついているし、私が引きこもろうとすればするほど、私を必要としてきます。
ああああ、もうやだ！
そう思った時他のママ友達の顔が思い出されました。ロックダウンについて話していない。幼稚園がなくてどうしているのかも聞いていない。いったい彼女たちがどう過ごしているのかも知らない。もし私と同じ状況だったら？
「どうしてる？」
そんなメッセージを送る代わりに、こう書きました。
「絵本を一、二冊読むけど、〇〇ちゃん興味あるかな」
数人のママ友達が二つ返事で見にきてくれたのは、きっと私と同じ気持ちでいたからだと想像しました。私の「ともだちや」は口コミでいっぱいになっていきました。誰もロックダウン中の大変さは話しません。その代わり、私たちは一緒にゲームをしたり、歌ったり、工作をしたりしています。お店が開いていなかったり、買いに行く時間がなかったりして材料が完璧に揃わなくってもいいんです。同じ気持ちの人たちが一緒に何かをしていることに意味があるんだと思います。
その中から数人のママさんたちが集まって、絵本を使った自分探しの旅を始めました。ヨーロッパの別な場所に住む私たちが集まって、自分自身に焦点を置いて話し合う時間を持てることは、コロナが発生しなければなかったかもしれません。幼稚園や近所のいつものママ友と会って、いつものように旦那の愚痴を言っていたのかもしれません。パンデミックでそんな、ある意味居心地のいい団体からはじき出されて独りになって初めて、自分でいられる、心を許せる人に出会えたような気がします。
私はまだ叫び続けています。もしかしたら声をかけたくても恥ずかしくて「おい、風の子！」って言えない人のために。
え〜、風の子です。
ともだちは いりませんか。
絵本を使って 自分探しをする旅のお供をしています。
一緒に 旅をしませんか
お知らせ
9月15日、16日から自分探しを目的とする新しい大人の読み聞かせグループを開催したいと思います。定員６人。最低３人から始められます。
グループ１：毎週水曜朝１０時から（日本時間１７時）
グループ２：毎週木曜日正午から（日本時間１９時から）
料金なども含め、興味のある方はメッセージください。
グループの目的は自分探しです。絵本はそのきっかけを作ってくれる教材として使います。絵本の登場人物と一緒に、自分との対話してみませんか。
『さよならともだち』の作者紹介：
内田麟太郎
1941年福岡県大牟田市生まれ。個性的な文体で独自の世界を展開。『さかさまライオン』（童心社）で絵本にっぽん大賞、『うそつきのつき』（文渓堂）で小学館児童出版文化賞、『がたごと がたごと』（童心社）で日本絵本賞を受賞。絵本の他にも、読み物、詩集など作品多数。 他の主な作品に「おれたち、ともだち！」シリーズ（偕成社）、『かあさんのこころ』（佼成出版社）、『とってもいいこと』（クレヨンハウス）、『ぽんぽん』（鈴木出版）などがある。
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