『にっぽん縦断こころ旅』旅人・火野正平さん死去

火野正平という俳優を皆さんは知っているだろうか?
時代劇や二時間ドラマに出演されていて、年配の方には"モテ男"として有名だっただろう。
私にとってはたまに上沼恵美子さんの『快傑えみちゃんねる』のゲストとして稀に上座に座って
何も話さずに帰っていくというくらいの本当に薄い印象だった。
だが2011年秋、兵庫の山間を自転車で行く五人組をテレビで見た。
二十歳前後、私も趣味で隣町あたりまで自転車でウロウロしていたことがあって、
再放送を含めほぼ毎日朝晩放送されているその番組を見るようになった。
それがNHK BSプレミアム『にっぽん縦断こころ旅』。
俳優・火野正平さんが旅人となって視聴者から届いた手紙の思い出の場所を自転車"チャリオ"などを使って尋ねるという番組。
何気ない紀行番組だったが、アンビエントな環境ビデオとしても良い番組で、
たまに起こる"チームこころ旅"と呼ばれるスタッフや出会う町の人らと面白いことがあった。
番組の流れは、まず手紙を読み、交通機関や自転車で視聴者の思い出の場所を訪ね、最後にそこで手紙を読むという30分。
何も起こらなそうとお思いだろうが、その番組には色んな名物シーンがあった。
手書きの手紙・印刷の手紙、城・ダム、見晴らしのいい場所、目的地までの地図の確認、下り坂・上り坂、
晴れ・雨・風、夏前の暑さ・冬前の寒さ、バスや電車・船・飛行機・タクシーなどで交通機関で乗り合わせた人とのやり取り、
離島・古い町並み・田舎道・田んぼのあぜ道・都会の喧騒、昆虫や動物・小動物との出会い、とりあえず口に入れてみる謎の木の実、木や植物の蘊蓄、
各地の名水・湧き水、休憩で訪れた喫茶店、食事で訪れた飲食店、お弁当じゃんけん、道を尋ねた地元の人、道端で出会った番組ファン、美女、救いのヒッチハイク、
旅人が苦手な高所や橋、NHK権力でしか通れない道、各地の名所・観光地、何気ない場所、地元の風習、
神社・仏閣、巨木・大樹、山・川・峠、海のキラキラ、駅・学校・廃線・廃校、建造物、夕日・夜景、沈下橋・潜水橋、地元の人の差し入れ、頂き物や地元の人形、
写真の場所との照らし合わせ、聞き込み、旅人によるロケハン、Bカメ、スタッフとのやり取り、
ぜいぜいハアハア、タバコ、濃いコーヒー、老眼鏡、あの帽子、ナポリタン、オムライス、きつね入りカレーうどん、しーんかーんせーん、とうちゃこ…
2011年から今年2024年までの13年間、旅の回数1239日(実際のロケ日は回数となる日数よりいくらか多い)、
思えば火野正平という旅人に支えられた楽しい日々だった。
ふざけたことをしたり冗談を言ったり、女性と握手するときには「妊娠するぞ」と言ったり(元々は2ちゃんねるのネタ)、
「人生下り坂最高」という名言も出たり、お手紙の思いに寄り添いつつも、陽気で楽しい人だった。
2024年春の旅一週目・鹿児島の旅で腰が痛いと漏らし、春の旅二週目からは腰痛を理由に休んでいたが、まさか亡くなるとは…
また腰を治して戻ってくると思い込んでいた矢先の訃報だった。(2024年11月20日)
最後の番組出演は、2024年春の旅期間再放送後の特集「“こころの風景”は、いま」での出演だった。
地元(奈良県)の自分が走っていた道も走ってくれたことがあったなぁ。
サントラも全部持ってたし、一時期はTwitterで実況もしてた。
しんどい時も何もない日でも入院していた時以外は毎日見ていた番組。
私が選ぶベストこころ旅の回は、2011年秋の旅・55日目、山口県下関市「絶対、“角島”」。
彼氏を変える度に見に行くという絶景の角島が目的地というふざけたハガキ一枚から始まる旅は、
旅人・火野正平が苦手とする角島大橋が待ち構えていた…!
あの頃、自分の人生の絶頂期で毎日が楽しかったのも相まって楽しい記憶がある。
番組は現在、ピンチランナーを迎えて続いているが、来期以降続いていくかは分からないが、私にとっては一区切り。
やっぱ旅人は、火野正平じゃないとなぁ…
康一くん、こころ旅めっちゃ面白かったョ!

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