【014】無用になって気づいたガソリンスタンドの大切さ
電気自動車(EV)に乗っていると、ほとんどガソリンスタンドに立ち寄らない。だって必要なのはガソリンではなくて電気。充電スタンドを併設した給油所もあるようだけど、まだまだ数は少ない。
先日、久々にガソリンスタンドを訪ねたのは洗車のためだった。セルフ式の機械でホンダeを洗って、敷地の隅で水滴を拭っていたら、スタンドの店員に声をかけられた。「これ、なんていう車ですか?」。そりゃ知らないか。EVとガソリンスタンド、同じクルマ業界でありながら、パラレルワールドのようだ。
以前は、ドライブ中にガソリンスタンドを見かけたら、目の端で表示価格や店構えをチェックしていた。車列ができていれば、このあたりで一番安いのかな…とか。
いま、気になるのは、道の駅や自動車ディーラー。充電器が設置されている可能性が高いからだ。すぐに充電する必要がなくても、「EV」の青い看板を見ると、うれしくなってしまう今日この頃。
半年で身も心もEV乗りになってしまったが、縁がなくなって気づいたのは、ガソリンスタンドは給油するだけの場所じゃなかった、ということ。そういえば、タイヤの空気圧チェックや、バッテリーの点検、オイル交換、ウォッシャー液の補充など、定期点検以外のメインテナンスは、ほぼガソリンスタンド任せだった。効くのか効かないのかわからないタンクの水抜き剤も、何本入れてもらったことか。
完全セルフの充電スタンドには、そういう付加サービスはない。でもEVにも、点検やちょっとした整備は必要なはず。世の中のEVユーザーはどうしているのか。自動車ディーラーで充電するときに、相談していたり?
そんなことを考えていたら、1ヶ月点検からほぼ半年間、タイヤの空気圧をチェックしていなかったことに気がついた。あわてて足踏み式の空気入れを購入。
全国の給油所の数は、いま約2万9000か所。ピーク時から半減してさらに減少傾向。脱炭素の動きもあって厳しい状況は続きそうだが、電動化時代でもきっとニーズはみつかると思う。
スタンドの店員に車種を聞かれたとき、「ガソリン入れなくて、すみません」と恐縮したら、「洗車だけでも大歓迎ですよ」と笑顔が返ってきた。できればEVにも詳しいプロに、いろいろチェックしてもらいたい。水抜き剤は入らないけど。
(夕刊フジ/2021.12.2)