阪口鶴代展2021 阿曾美術
『不思議な作家だと、つくづく思う。そしてそれは、内奥を知りたいと思う不思議さです。』
阪口鶴代さんの展覧会が阿曾美術で開催中です。
今年一年間をかけて描いた七点を展示。
時間をかけてじっくり制作するため、その作品数が限度だとの事。
描かれているのは具象物ではなく、丸や三角、四角、ひし形などの抽象物。そこに天然岩絵具による色彩が加わります。また、ヘラや錐で引っ掻き傷をつけたり、穴を開けたり。鶴代さんによると、そうする事で作品に空気が通るとの事です。
そうやって描き、時間を置いて時折作品を俯瞰で観てみる。その時、作品が頷けばそれは『完成』、即ち、辿り着くべき場所にたどり着いた証なのだという事です。
また、こうも仰っておりました。「制作を頑張れるのは、何処かに必ず、辿り着くべき場所があると分かっているから。だから、描ける。」
創作にも、必ずそんな地点があるのですね。
初日に鶴代さんが在廊してくださり、様々なお話をお聴き出来ました。その中でも特に胸に刻まれたのは、「暮らしを整える大切さ」。毎日の生活の営みを先ずはしっかりとする。荒れた生活からではいい絵は生まれない、整っていないと真っ直ぐ絵の前に座れない。営みが基本。感性だけで描くのではどこか薄い絵になる、と。
阪口鶴代さんという画家に出会えて、本当に嬉しく思っております。