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天涯比隣
こちらは『鎧伝サムライトルーパー』というアニメの二次創作小説です。
二次創作というかパラレルワールドというか、
アニメのストーリーに沿ったものではありませんのでご注意下さい。
また、このお話はふた昔ほど前に同人誌として作成したものに、
加筆・修正をしたものになります。
もしかしたら、あまりにも世界線が違いすぎて、トルーパーを知らなくても読めてしまうかもしれないです。
長い話になりますが、よろしければお付き合い下さい。
天涯比隣 ~序~
その時代、地上は平面であった。世界には、「果て」というものが確かにあった。そして、地上があれば地下の世界もあった。
地上と地下は完全に分かれており、ただ唯一、二つの世界をつないでいたのは中央にぽっかりと口を開けている不気味な洞穴だけであった。
言い伝えとしてしか残っていないほど昔には、その洞穴を通って行き来していた者もあったらしいのだが、今ではそんな無謀なことをする者は居ない。
地上の世界において、洞穴の真上あたりに浮いている城は天空城と呼ばれていた。
天空城から東にあるのが光輪城。西にあるのが烈火城。南が水滸城。北が金剛城である。
その城の主は城の名で呼ばれ、それぞれの地域の民から神のようにあがめられ親しまれてきた。あくまで神のように、であって、彼らは神ではなかった。言うなれば、神のごときものから地上を見守るよう使命を受けた者、といえよう。
神のごときものは、カオスと呼ばれた。いやしかし、カオスさえも、神とも悪魔ともつかぬ存在であるかもしれない。何故ならばカオスとは混沌であり、すべての始まりとされているものだからだ。
カオスは城主たちに始まりを見せた(あるいは与えた)に過ぎない。
始まりとは簡単に言えばきっかけである。
それは事象や、抽象的な思想や、きわめて物的な現象として、過去にも世界に表れていた。
しかし、まさか城主たちは思うまい。
自らの跡取りとして生まれ来る者が、”始まり”を手にすることなど。それがこの世界の混沌を内に秘め、宝珠という形を成し、跡取りたちのちいさな手に、しっかりと握り込まれて生まれ落ちてくることなど。
光輪城では萌木色の宝珠が。
水滸城では薄浅葱の宝珠が。
烈火城では深紅の宝珠が。
金剛城では山吹色の宝珠が。
天空城では青藍の宝珠が。
不思議なことにそれぞれの城で、同じ年にそれぞれ授かった赤子の手に握られていたそれらの宝珠は、更に不思議なことに彼らの成長と共に、少しずつ大きくなっていった。
その不可思議な宝珠について、人々は何の答えも持ち合わせてはいなかったが、気高く、魔除けさながらの光を宿す水晶のごとき珠は大切に扱われた。そして、いつしか大きくなることをやめた宝珠は、年若き跡取りたちの佩玉として、常に彼らのそばにあり続けた。
それから十五年の歳月が流れ、跡取りたちはそろって城主の権利を正式に受け継ぐこととなる。
平定の世に、若き五人の城主が誕生したのである。
即位の儀式を終えた夜。若き城主たちは揃って似たような夢を見た。
それは、五霊。つまり、麒麟・鳳凰・老亀・龍・白虎の現れる夢であった。
東の光輪は龍を、西の烈火は白虎を、南の水滸は鳳凰を、北の金剛は老亀を、中央の天空は麒麟を傍らにしていた。
五人は輪を作り、まるで旧知の友人であるかのように、穏やかで凪いだ瞳のまま何も言わず、ただ立ち尽くしている。
どのくらいの時が過ぎたのか、ふと気付けば五霊の姿はなく、眼前に各々の宝珠がふわりと浮かび、優しく柔らかく輝くのみ。
夢はそこで途切れた。