お風呂上がりに窓を開けると

お風呂上がりに窓を開ける。

化粧水を何回も重ね付けすると良い、と聞くので、お風呂から出てすぐに1パシャして、窓を開けて夜風を浴びる。乾いたらもう一度洗面台に戻って、1パシャして夜風。1パシャ夜風、1パシャ夜風を5回くらい繰り返して、最後に乳液を1とろりして、夜風する。

私の部屋は角部屋なので、ベランダの他に小さな窓があるのだ。1パシャ夜風のための窓。6階だけど、別に眺めは良くない。隣の古ぼけたビルの屋上が見える(そこにはすごく雑に畑が作ってある)。あとはマンションとか道路とか色々。目で楽しめるものはなにもない。そもそも夜だし。

でも、私はその窓で夜風を感じる時間がとても好きだ。どこからか知らないお家のお風呂の匂いが運ばれてきて、あぁ同じ夜を過ごしているんだなという気持ちになる。


変態チックでありながら、路地裏や住宅街で香るお風呂の匂いがとても好き。全世帯が同じシャンプーを使っているわけではないだろうに、何故かいつも同じような安心する匂い。

きっと子供時代を思い出すんだろう。夕方まで友達と遊んだ帰り道によくかいだ匂いだ。薄暗くなった帰り道、少し心細くなって足を早めていても、お風呂の匂いがするとどこかほっとした。家の明かりが見えてくる頃には心にパワーが戻ってきて、一歩踏み入れた瞬間に光がはじけて、不安だったことなど全て忘れてしまう。


お盆には実家に帰りたいなと思っていたけれど、状況を見るとそう簡単には行かないのだろう。心細い心にパワーが必要なときなのに。

私は頬を掌で包みながら、誰かのお風呂の匂いを味わう(ハンドプレス、大事ですよ)。私にとってもあなたにとっても、健やかな夜でありますように。


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