「全力で推したい バナナ」
お祭りがやって来た。
フランクフルト、たこ焼きなどの屋台にまじって、
バナナのたたき売りをしている。
しかしこのたたき売り、ふつうのたたき売りとは違っているようだ。
「さぁさぁ、そこのお客さん、ご用とお急ぎのない方はいらっしゃい。 さあさ、全力で推したいバナナのたたき売りだよ~~~~さあ、いらっしゃいいらっしゃい!」
「さあて、とりい出したるこのバナナ、そんじょそこらのバナナとはぜんぜんちがう。ご覧よこのカーブの美しいこと。この色も、たまらないねえ。
しかもこれは、ただのバナナじゃあない。
どこがどう違うのか。
さあ、これを見て欲しい。遠くにいる人でも通話できるバナナだよ。
これが電話になって、親しい人と会話が出来るってシロモノだ。この曲線の下に口を当て、
「もしもし」とやれば、どんな人とも親しく話せる。
大統領とだって、芸能人とだって、
思いのままだ! それがたったの1000円!」
客が、笑い始める。
「ほんとかよ? ためしに、電話してみてくれよ」
たたき売りは、困った様子になる。
「むちゃ言うんじゃねえや。相手にも都合ってもんがあらぁ。いきなり電話したら
迷惑ってもんだろう」
「バカにするな。だいいち、1000円なんて高いぜ」
「高いか?~~高くてよいのは栄養価だが、低くてよいのがカロリーってもんでね。幸いにも、
このバナナは糖質オフなんだ。ダメかい? うーん。じゃあ、700円!」
「まだまだ高いね! 電話だなんてありえないし」
「よーし、それほど言うなら、証拠を見せよう。
ルルルルル」
たたき売りは、バナナを取り出して、電話を始める。
なんと、電話は一流のセレブに通じた。
「なによ、用もないのに電話しないで!」
その声が、観客にもハッキリ聞こえる。
「すげえ、ホンモノだ!」
驚く客。たたき売りはトクトクとして言った。
「判ったかい。ただ、定期的に買い換えなければ腐っちゃうけどね!」