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【第10項】とにかく現在形を使う

言いたいことが100%伝わる! 英文法の極意
時吉 秀弥/アスク出版
(2021年3月30日発売)

本文公開の第4弾は
第10ユニット「とにかく現在形を使う」です。
(過去記事はコチラ → 第1弾第2弾第3弾

◉説得の英語は、とにもかくにも現在形

時吉 現在形は「今」というよりは、「いつもそうだよ」ということを表すための時制です。これまでに出てきたボディパラグラフを例として見てみましょう。

Working from home is better than working at the office because companies can hire more skilled workers. Working from home makes it easier for some people to join the workforce. It is especially difficult for women raising children and handicapped people to work at the office. It is regrettable for companies to lose those skilled workers just because they cannot work at the office. Allowing those people to work from home will benefit more companies, and this will boost our economy. Since companies can hire more skilled workers, working from home is better than working at the office.

——ほとんどすべて、現在形ですね。これは偶然なのですか?

時吉 エッセイライティングなど、人を説得していくことを目的とした文章は、必然的に現在形が中心になります。意見とその理由を述べる時に、「いつもこうだ。普通こうなる。だからこうすべきだ。」という文脈になるのが普通で、したがって、現在形は「説得する英語」で最もスタンダードな時制だと言えます。

——上の文章でも現在形の動詞以外は助動詞を使っていますね。

時吉 助動詞は、普通の動詞の現在形とはニュアンスが異なり、「事実ではなく思っているだけのこと」を表します。つまり話者の「予想・判断・意見」を表す時に使われます。これは次項の、助動詞の項でまた詳しく説明します。

——「説得する英語」では過去形は使わないのですか?

時吉 もちろん使うときはありますが、現在形の出現頻度と比べると、極端に少ないです。使うとすれば、現在の状況との対比のために使ったり、過去のデータを扱ったりするときに使うくらいです。つまり、過去形は説得に必要なデータの吟味を行う時に使われる時制だと言えます。

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——なぜ過去形は出番がそんなに少ないのですか?

時吉 過去形は物語など、過去に起きた事の顛末を語るときに使うのがその典型です。しかし、「説得する英語」というのは「世間や身の回りに現在存在する問題」を扱うのが一般的で、「今現在、いつもこうですよね」ということを語る現在形を使うのが普通なのです。

◉現在形以外によく使う時制

——現在形以外によく使う時制はないのですか?

時吉 現在形に比べれば出番は少ないですが、現在完了もよく使われます。「過去から今に至るまでの変化」、あるいは「過去から今に至るまでずっと続いている状況」を表すために使うのが一般的です。

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——現在完了と過去形との違いは?

時吉 英語の過去形というのは「あの時のことであって、今は関係ない」という意味です。つまり、現在とのつながりはないわけですが、現在完了はhave(今抱えている)という言葉が使われていることで分かる通り、「過去から現在に至るまで抱えている状況」という、「過去と今のつながり」がその意味です。

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——現在完了と現在完了進行形との違いもよくわからないのですが。

時吉 現在完了も、現在完了進行形も、「過去から今に至るまでの変化」を表すという点では同じです。しかし、進行形というのは「動作の途中」、別の言い方をすれば「まだ終わっていない・未完了」を表すわけで、現在完了進行形なら「過去から今に至るまで、変化し続けている最中で、その変化はまだ途中であり、終わっていない、これからも続く」という意味を出します。

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——現在進行形と現在完了進行形との違いは?

時吉 現在形と現在完了との違いでも出ましたが、「時間の切り取り」の有無です。現在進行形は、「今まさにある動作の途中・最中」であるということだけを表しますが、現在完了進行形は「いつから動作の途中・最中がずっと続いているのか」を表す形式です。

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——最後にもう1つ。過去完了は使わないのですか?

時吉 レポートやエッセイライティングでは、ほとんどないと言っていいでしょう。しかし、可能性がゼロというわけではありません。要点を述べておきます。過去完了は「その時にはもう、~という状態を抱えていた」ということを表す形式です。

——「過去の1つ前」ではないのですか?

時吉 「その時にはもう」という感覚がなければ、過去完了ではなく過去形を使うのが普通です。

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——なるほど、同じ状況でも捉え方の違いで過去完了を使うかどうかが決まるのですね。

時吉 レポートや、プレゼンなど「説得の英語」では、過去形と同様、過去完了もデータの吟味に使う表現ですね。

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【まとめ】
✅ レポート、プレゼン、エッセイライティングなど、「説得の英語」で使う時制は現在形が一番よく使われ、その役割は「普段いつもこうである」という事実を表すことにある。

✅ 2番目に使われるのが現在完了で、「過去のある時点から現在に至るまでの変化」という、時間の切り取りを表す。

✅ 現在進行形は「今何かをしている最中・途中であり、まだ終わっていない」ことを表し、現在完了進行形は「過去のある時点から現在に至るまで、何かをしている最中の状態がずっと続いており、これからもまだ続く」ことを表す。過去形と過去完了は、データの吟味に使う時制で、「説得の英語」ではあまり出番はない。

✅ 過去完了は「過去の1つ前」というよりは「そのときにはもう、~という状況を抱えていた」ことを表す。

(第10ユニット 了)

……

【本文公開予定】
全40ユニットのうち、以下の8ユニットを公開予定です

【第1項】そもそも英語で何を発信すればよいのか
【第4項】結果に注目する自動詞・原因に注目する他動詞
【第6項】原因が人に、結果を渡す
【第10項】とにかく現在形を使う
【第13項】英語話者は「モノ」の何を見ているのか
【第14項】aは常に2つの意味を持っている(4月10日公開予定)
【第24項】allとeveryとanyの違い(4月12日公開予定)
【第33項】関係詞の制限用法と非制限用法(4月14日公開予定)

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