なぜ"a my bicycle"とは言えないのか? | aは常に2つの意味を持っている
This is a my bicycle.
英語をある程度勉強してきた人なら、「この英文、ヘンだな」と感じると思います。そう、a my bicycle部分です。
でも、なぜダメなのか。
その理由を言葉でキチンと説明できますか?
「そんなのヘンだから、ヘンなんじゃない?」
そんな声が聞こえてきそうです。何を隠そう、私もそう思ってました(汗)。
しかし! そこには明確な理由があるんです。
時吉先生の「目からウロコ」の解説をどうぞ。
『英文法の極意』本文公開の第6弾は
第14ユニット「aは常に2つの意味をもっている」です。
(過去記事はコチラ → 第1弾/第2弾/第3弾/第4弾/第5弾)
時吉 ここではaの意味にもう少し詳しく触れていきます。aは2つの意味を持ち、その2つの意味が互いに連動することで、aの使い方が決まってきます。その2つの意味は以下の通りです。
❶ 形が丸ごと1つそろっていることを意味する。
❷ 同じカテゴリーのものが無数に入っている抽選箱の中からランダムに1つ取り出すことを意味する。
——先ほどは、an eggが丸ごと1つの卵、ということで、❶の話をしましたね。
時吉 そうです。しかし、この❶と❷というのはバラバラではないのです。両者が揃って初めてaが使われます。
【問題1】
「私の自転車」を意味するmy bicycleがなぜa my bicycleとは言えないのか、説明しなさい。
——うーん、a my bicycleとは言えない、ということはわかるのですが、なぜか、と言われると……。
時吉 自転車を分解した部品を見て「自転車」とは呼べないので、それ以上崩してはいけない形を持つ可算名詞だとわかります。ではThere is a bicycle parked in front of my house.(自転車が1台、私の家の前に停められている。)のa bicycleは「形が丸ごとある1台の自転車」のほかに、何を表そうとしていますか?
——うーん、❷の意味からすると、「世の中に無数にある自転車のうちからランダムに取り出した、とある1台の自転車」ということですか。
時吉 そうです。では、my bicycleに話を移します。これはなぜa my bicycleとは言えませんか?
——そうか。形が丸ごと1つある、という意味ではaの意味は満たしているけれど、「ランダムに取り出した、とある1つの」という意味を満たしていないわけか。
時吉 そうですね。myということは「他の自転車ではなく私の」という限定をしていますから、「なんでもいいから1 台」というわけにはいかなくなるわけです。
——じゃぁ、theとaが一緒に使えないのもそういう理由になりますね。
時吉 そうです。「さっき言ったその」とか、「我々が知っているその」という限定をするのがtheですから、「何でもよいからランダムに1つ」というaと一緒には使えないわけです。
【問題2】
あなたはPochiという名前の犬を飼っています。なぜI call my dog a Pochi.と言えないのか、説明しなさい。
時吉 まず例えば、a chickenとsome chickenの違いは説明できますか?
——はい。前回のan eggの例と同じように、a chickenなら1羽丸ごとの鶏がいる、ということで、some chickenならaがなくなることで、形が崩れて鶏肉になっているということですよね。
時吉 そうです。飼い犬のPochiは生きた1匹の犬ですから、形が丸ごとあって、 a Pochiと言ってもよさそうですが、なぜだめなのでしょう?
——それは、世の中にPochiが無数には存在しないからですね。Pochiはdogやcatといったカテゴリーを表す名ではない。世の中に無数にいるPochiのうちの、とある1匹のPochiということになってしまうと、おかしいですからね。
時吉 よくできました。つまりそれが固有名詞というものです。固有名詞にaが付かない理由がこれでわかりましたね。ちなみに固有名詞にtheが付かない理由も同じです。the Pochiとしてしまうと「ほかのPochiではなく、そのPochi」となってしまい、これもまた、前提としてPochiが他にたくさんいることになってしまいます。では、ここから応用編です。
【問題3】
以下の文のTokyoは固有名詞なのに、aがついています。その理由を説明しなさい。
Jeff said, ”This is a Tokyo that I have never seen.”
「『こんな東京は知らなかった。』とジェフは言った。」
——あー、なるほど。物理的に存在している東京は世の中に1つしかないけれど、見方によっては東京にはいろんな顔があって、その中の1つをランダムに切り取って取り出した、という意味か。
時吉 その通りです。直訳すると、「これは、私が今まで見たことがなかった、とある1つの東京だ」となります。ではこれなら?
——なるほど、これも、無数にある東京の側面のうち、「これこそがその東京」と限定しているわけですね。つまり、theにも「ほかに同じものがいくつもあるうちの」という前提があるわけだ。
時吉 そういうことです。では次に、「初出のa」と呼ばれる用法を考えていきましょう。
◉ 初出のa
時吉 ストーリーなどの中で、初めて登場する可算名詞にaが付くことを「初出のa」と呼びます。以下の例文を見てください。なぜ初登場のものにはaが付くのか、わかりますか?
——下線部のa catですね。確かにここで初めて物語の中に登場していますね。なぜ初めてならaなのか、ですか……。
時吉 そうです。aは❶ 1つの形が丸ごと揃っていることを表し、そして❷ 同じカテゴリーのものが無数に入っている抽選箱の中からランダムに1つ取り出す、という2つの意味を常に持っています。
——ここでも生きた猫だから1匹丸ごとの形は持っていますから、❶は満たしていますね。
時吉 そうです。そして今回は特に❷の「抽選箱から取り出す」という感覚が大事になってきます。
——どういうことですか?
時吉 取り出す、ということは、「今まで何もなかった舞台の上に、1つポンと取り出して、存在させてやる」という効果を持つわけです。
——なるほど、存在、ということは「登場」ですね。
時吉 しかもランダムに1つ出てきたものですから、「なんだかよくわからないが1つ、出てきた」ということです。「何か猫が出てきたよ、何だいあの猫は」という感じですね。
——それが「初登場」の意味に使われるというわけですか。
時吉 もう少し学習者に重視されてもよいと思うのは、aには「存在」という意味が隠れているということです。例えば、a fewは「2、3ある」という意味になるのに、aが消えてfewだと「ほとんどない」という意味になりますよね。こんな意味の違いが生まれるのはaに「存在」の意味があるからだと考えてよいでしょう。
——へぇ、そうなんだ!
時吉 この初出のaですが、初登場、ということは「今まで知らなかった情報」ということでもあります。つまり、今まで聞き手が知らなかった新情報を見せたり、話を切り出すときにもaは使われるのです。there is構文は新情報の存在物を示す構文ですが、意味上の主語にaの相性がよいのはそのためでもあります。
——こうやって眺めてみると、「可算名詞で単数だからaを付けないといけない」という無味乾燥なルールとは違った、ものの見え方を表現するためのaの使い方が見えてきますね。
(第14ユニット 了)
……
【本文公開予定】
全40ユニットのうち、以下の8ユニットを公開予定です
【第1項】そもそも英語で何を発信すればよいのか
【第4項】結果に注目する自動詞・原因に注目する他動詞
【第6項】原因が人に、結果を渡す
【第10項】とにかく現在形を使う
【第13項】英語話者は「モノ」の何を見ているのか
本記事 →【第14項】aは常に2つの意味を持っている
【第24項】allとeveryとanyの違い(4月12日公開予定)
【第33項】関係詞の制限用法と非制限用法(4月14日公開予定)
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