【第1項】そもそも英語で何を発信すればよいのか
『言いたいことが100%伝わる! 英文法の極意』
時吉 秀弥/アスク出版
(2021年3月30日発売)
本書は、全40ユニットを通して、
人を説得する英語(※)を身に付けることを基軸にしており、
英文法を自分の英語にどう活かせばよいのか
がわかるようになります。
(※議論で相手を打ち負かすことではなく、
自分の意見と理由をしっかりと伝え
納得してもらう英語という意味です)
> 時吉 秀弥 先生のプロフィール
「英語を話せるようになりたい!」
だれもが夢見る目標ではないでしょうか?
でも、文法を学び、単語・フレーズをたくさん覚えても、
なかなか英語で会話が続かない——
この悩みを解決する鍵が「説得する英語」にあります。
まずは、そこのところを解説した
第1ユニットを公開します。
◉そもそも何を話せばいい?
時吉秀弥(以下、時吉) この本で講師を務める時吉秀弥と申します。よろしくお願いいたします。
相羽晴美(以下、省略)——よろしくお願いします。早速なのですが、私、仕事で英語が使えるようになりたくて、いろいろ勉強してきたのですが、いまひとつしっくりこないんです。
時吉 どういうところがしっくりとこないのですか?
——まず、文法はあくまでルールとして覚えているので、自分の気持ちと英語がシンクロしないんです。日本語なら感情に合わせて言い回しも微妙に変わるじゃないですか。そういう、言葉と感情のシンクロが英語にはなくて、本当にこれでいいのかな、っていう感じで……。
時吉 なるほど。それはよくあることですよね。この本では、認知言語学という人間の「世界の捉え方」をもとに文法を分析する学問をベースに解説していますので、感情と言葉のシンクロがしやすくなると思いますよ。
——でも、もっと根本的な問題があるんです……。
時吉 何ですか?
——そもそも英語以前に、何を話せばいいかわからないんです。ビジネス英会話の本とかを見れば、実際に使えそうなよいフレーズがたくさんあるのですが、その、もっと根本的な、話の組み立て方というか、そういうのがわからないのです。どちらかというと、日本語でもあまり得意ではなくて……。
時吉 大丈夫ですよ。そもそも何を話すのかが決まっていなければ、それをどう言葉にすればよいのかなんてわかるわけがありません。
何を話すかが決まらないから、「何でも話せるように」なっておこうとして、無限にたくさんの「便利なフレーズ」を覚えなきゃ、となることがよくあります。
話すことを決めるのは大切です。話すことが決まっているということは、逆に言えば何でもかんでも話さなくてもよい、ということでもあります。
——ではその、「本当に話すべきこと」って何でしょうか?
時吉 大学ではプレゼンテーションと論文に使う英語、ビジネスでは交渉・プレゼンテーション・レポートに使う英語が必要だと言われています。ここで質問なのですが、これらに共通することって何でしょう?
——人に自分の意見や考えを聞いてもらうことですか?
時吉 その通りです。要するに「説得する」ことです。
——それって、議論で相手を打ち負かすということですか?
時吉 そうではありません。勝負の話ではなく、相手にストレスを感じさせずに、スムーズにこちらの意見を理解してもらい、理由を聞いて納得してもらう、ということです。こちらの意見の論理立てが不十分だと、相手は「何が言いたいんだ?」とストレスを感じてしまい、話を聞きたくなくなります。
——なるほど、そういう意味での「説得」ですね。そのためにはどういう話し方をすればよいのですか?
◉「意見+理由」を核に話を組み立てる
時吉 究極的に煮詰めれば「意見+理由」が言えればいいです。英語の資格試験でのライティングやスピーキング、大学受験での自由英作文などを思い出してみてください。問われていることは全て、「これについて賛成か、反対か。理由を添えて自分の意見を述べよ。」ということでした。すべて、「意見+理由」が求められているわけです。
——でも、話の組み立て方ってありますよね?
時吉 もちろんです。それこそが、資格試験で求められるライティング、つまり「意見+理由」を核にして、効率的に話を組み立てていく「エッセイライティング」と呼ばれる形式です。エッセイライティングの型をベースにライティングもスピーキングも話を組み立てていくことをお勧めします。
——でも、エッセイライティングはあくまでライティングですよね? スピーキングとは無関係なのでは?
時吉 エッセイライティングで使う言葉は論文とは違い、少しフォーマルな話し言葉程度のものです。ビジネスシーンに向いている話し方です。そして、エッセイ全部を使って人と話せ、というわけではありません。エッセイの型さえ覚えてしまえば、そしてその型が口をついて出るほどに体に染み込めば、あとはシーンに応じて必要な部分の型を取り出して使えばいいのです。
——つまり、それが、「何でもかんでも話せるようになる必要はない」ということですか?
時吉 その通りです。説得する英語に必要なことは、大体がエッセイライティングの型の中に入っているのです。それは単に「便利なフレーズ」だけではなく、話を組み立てるための「思考方法」も含まれています。
——なるほど、少しほっとしました。
◉日本語話者は「理由」を述べるのが苦手
時吉 さてここで、日本語を話す我々にとって困ったことが1つあります。「説得の英語」の核は「意見+理由」なのですが、日本語話者は、理由を述べるのが苦手です。ちょっと日本語と英語の会話を比較してみましょう。
【日本語の会話例】
「食べ物は何が好き?」
「私は、焼肉が好き。」
「わー、焼肉、いいよね~。」
【英語の会話例】
“What is your favorite food?”
“I like steak.”
“Oh, do you? Why do you like steak?”
“Eating meat makes me strong.”
時吉 ご覧のように、日本語というのは、共感を優先する傾向が強い言語です。一方で、英語は理由を重視する傾向があります。
——そう言えば、英語話者と話すとやたらwhyを聞いてくるなぁ。
時吉 日本語の会話は英語と違い、理由に立ち入らないことをよしとするので、日本語話者は理由を考えるのに慣れていないのです。「説得する英語」のためには、理由を思いつく訓練が必要です。
——訓練のしかたがあるのですか?
時吉 私のところでよくやっているのが、Comparison Game(比較ゲーム)と呼ばれるものです。
【Comparison Gameの行い方】
❶ ice cream vs. cake(アイスクリーム 対 ケーキ)、summer vs. winter(夏 対 冬)、studying abroad vs. studying in your own country(留学する 対 国内で勉強する)など、複数のトピックを用意しておく。
❷ 相手がいればペアを組み(いなければ1人でも大丈夫です)、じゃんけんをして勝った方が好きなトピックを選び、また、そのトピックの好きな側(例:ice cream vs. cakeならice creamか、cakeか)を選ぶ。
❸ “A is better because 〜 .”というフォーマットで、おたがいが交互に、理由を2分間言い続ける。コツは、理由を考えるというよりは連想ゲームだと考え、できるだけ単純な理由を思い浮かべること。例えばアイスクリームなら、連想する「冷たい、安い、胃にもたれない、バニラが好き」など。相手と理由が被っても全くかまわない。とにかくたくさん思い浮かべることが大事。
【例】
A: Ice cream is better because it’s cold.
B: Cake is better because it’s sweet.
A: Ice cream is better because it’s cheaper.
B: Cake is better because it’s expensive.
時吉 …これを2分間続ける。
——2分間というのは結構大変そうですね。
時吉 大変です。「理由」はできるだけ短いものにしてください。最初から長く複雑なものになると、人は聞いてくれません。足りないくらいの情報のほうが、相手は「それってどういうこと?」と興味を持ってくれて、そのあとの話が広がりやすくなります。次項で解説するエッセイライティングのイントロダクションには、自分の意見に加えて、それを支える3つの理由が必要になります。その時にこの訓練が役に立つことになります。
(第1ユニット 了)
……
【本文公開予定】
全40ユニットのうち、以下の8ユニットを公開予定です
【第1項】そもそも英語で何を発信すればよいのか
【第4項】結果に注目する自動詞・原因に注目する他動詞
【第6項】原因が人に、結果を渡す
【第10項】とにかく現在形を使う
【第13項】英語話者は「モノ」の何を見ているのか
【第14項】aは常に2つの意味を持っている(4月10日公開予定)
【第24項】allとeveryとanyの違い(4月12日公開予定)
【第33項】関係詞の制限用法と非制限用法(4月14日公開予定)
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