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”a grape”と聞いて、何をイメージしますか?/英語話者は「モノ」の何を見ているのか

"a grape"

このフレーズを聞いて、何をイメージしますか? 

もし、下のような画像を思い浮かべられたら、英語話者の「モノ」の捉え方が身に付いています(詳細は以下の本文で解説してます)。

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時吉先生によれば、英語話者は「モノ」——つまり名詞に相当するもの——を2通りに認識しているとのこと。

冠詞や可算名詞、不可算名詞の使い分け、ややこしいですよね? でも、英語話者の「モノ」の捉え方を理解できれば、それもすんなり習得できるのだそうです。

言いたいことが100%伝わる! 英文法の極意
時吉 秀弥/アスク出版

本文公開の第5弾は
第13ユニット「英語話者は『モノ』の何を見ているのか」です。

(過去記事はコチラ → 第1弾第2弾第3弾第4弾

時吉 日本語を母語とする人間も、英語を母語とする人間も、同じ人間で、体や神経の仕組みも同じです。ですから違う言語の話者といえども全く違う世界を見ているわけではありません。

——とは言っても、英語の可算名詞とか不可算名詞の説明を見ていると、「この人たち、いったんどんなふうに世界が見えているんだろう」って思ってしまいます。

時吉 可算名詞と不可算名詞の区別は人間が5歳までに身につけると言われている認知能力が元になっています。ですから、5歳以上の人間なら、だれでも基本的な仕組みは理解できます。

——そうなんですか?

時吉 人間というのは5歳を過ぎた辺りから、モノ、言語で言えば名詞に相当するものを2通りの見方で認識することがわかっています。1つは「形」として認識する、もう1つは「材質・性質」として認識する、です。

——どういうことでしょう。

時吉 例えば、机やコップをバラバラの破片にして、その破片を見て「これは机だ」「これはコップだ」と認識しますか?

——しないですね。

時吉 つまり、机やコップの「形」をしているから、それを机だ、コップだ、と認識できるわけです。そうかと思えば「材質・性質」としてモノを認識している場合もあります。例えば、氷を砕いて、氷の破片を見てそれを「氷」だと認識しますか?

——しますね。氷はいくら砕いてもやっぱり氷です。

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時吉 ですよね。砂糖の山をいくつかに小分けして、分けた砂糖のかたまりを「砂糖」だと認識しますか?

——します。

時吉 つまり、これって、「これ以上崩したらもはや氷と呼べない、砂糖と呼べない」というような「形」が存在していないことになります。

——つまり「形」では見ていないと?

時吉 そうです、形ではなく「氷や砂糖という材質・性質のもの」として認識しているわけです。材質の大きな特徴は、どこを取ってみても同じ、という「同質性」です。氷はどこを割っても氷だし、砂糖をどこで分けても、砂糖ですね。このように、

✅ 人間はモノを「形の仲間」「材質・性質」の仲間の2つに分けて認識している

✅ 英語でいう「1個」の正体は「それ以上崩したら、それと呼べなくなる形」のこと

ということなのです。

——すると、「形」として認識する物体には「1個」が存在する、ということですね。だから「数えられる名詞」だと。ところが、「材質・性質」で認識するモノは、氷や砂糖のようにいくら崩しても氷は氷、砂糖は砂糖、という同質性を示し、「それ以上崩してはいけない」という形が存在しないから、「1個」も存在しない、つまり、それが「数えられない」ということなのですね?

時吉 その通りです。では次の問題を考えてみてください。

【問題1】
日本語でパン1個、チョコレート1枚、チョークは1本と言いますが、英語ではこれらは「数えられない名詞」です。その理由を説明しなさい。

——これはわかります。チョコレートを割って、そのかけらをチョコレートだと呼ぶことができます。チョークやクレヨンを折ったその破片を、やはりチョークやクレヨンと呼ぶことができます。つまり、私たちはパンやチョコレート、チョークやクレヨンを形ではなく材質だと認識しているということですね。これらは「それ以上崩したらパンやチョコレートと呼べなくなる形を持っていない」わけだから、「1個」がない、つまり「数えられない」わけですね。

時吉 そういうことです。英語の1個の正体は「それ以上崩してはいけない形」がある、ということです。そして、その形が「まるごと1つ揃っている」ことを表す言葉があります。それが冠詞のa/anです。

—— aとかanというのは、何か「名詞に付けなきゃいけない」みたいなルールがあって、ものの見方とはあまり関係ないように思っていましたが…。

時吉 a/anは、ただ付いているのではありません。意味を表す単語なのです。

2種類の可算名詞

時吉 可算名詞には2種類あります。1つは「完全な可算名詞」とでもいえるものです。例えば自動車やパソコンはさまざまな「異なる」部品が集まっ
てできあがっています。一方で、「形がある間は可算名詞で、崩したら不可算名詞」というものがあります。例えば、an eggといえば、1つの形が丸ごとある卵を意味します。殻ごととか、茹で卵の丸ごと1個とかですね。ところが卵を割って、スクランブルエッグとかにすると、形が崩れて、どんなに分けても卵、という同質の材質のみがそこにあるわけですから、不可算名詞、つまり(some) eggとなります。

——そこが自動車やパソコンとは違うところですね。例えば自動車は形を崩しても、「どこをとっても自動車」ということにはならないですし。

時吉 そういう意味で卵やバナナ、魚など、形を崩したら不可算名詞になってしまうものは自動車のような「純粋な可算名詞」と水や砂糖などの「純粋な不可算名詞」の中間的存在といえます。これら中間的存在の名詞は、どういう見方をするかで可算にも不可算にもなります。形が丸ごと1個そろっていることをa/anが表し、その形が崩れたらa/anも消えてしまうわけです。

——a/anが名詞に付く、というよりは、a/an自体が「形が丸ごと1つある」ことを表現しているのですね。「形が丸ごとあるよ」ということをわざわざ言葉にするなんて、英語は「形」にこだわる言語なのですね。

時吉 その通りです。では、英語話者が日本語話者に比べて、どれくらい「形」に注意を払っているのか、の一例を見てみましょう。

【問題2】
以下の英文は一般常識から考えて少し不自然です。どこが不自然かを説明しなさい。
I went to the supermarket and bought a grape and a grapefruit.

時吉 どこが不自然かわかりますか?

——うーん。

時吉 aが表す「形」に注目してください。a grapefruitで、グレープフルーツ1個まるごと、というのは自然です。けれどもa grapeが表す「1つの丸ごとの形」というのは、どういう「形」でしょうか? 例えばひと房のぶどうから実を2、3粒取り除くと、それはぶどうと呼べますか?

——呼べますよ。

時吉 そうです。ひと房の形を崩してもまだぶどうと呼べます。つまり「ぶどうひと房」というのは英語の可算名詞の「形」ではないことがわかります。

——すると……、あ、もしかして、a grapeというのはぶどうの実「1個」のことですか?

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時吉 そうです。ぶどうの実1粒です。ですから、一般的に「ぶどう」というときにはgrapesで、ひと房のぶどうならa bunch of grapesです。

——ぶどうの実の1粒なんて……そんなところにまで「形」を意識しないなぁ……。

時吉 それ、とても大事なポイントです。言語学者の研究では、日本語話者と英語話者では、英語話者の方が「形」に注意が向きやすいことがわかっています。可算名詞と不可算名詞の基本的な考えは、人間なら誰でも理解できるのですが、それでも、母語に可算不可算の区別がある言語の話者は、それがない言語の話者に比べて、普段から「形」と「材質・性質」の区別に敏感なのです。

——じゃぁ、英語らしい英語をマスターするためには、「形」のあるなしや材質の「同質性」を意識しながら名詞を使う練習をするべきだ、ということなのですね。

時吉 そうです。「とにかくルールを覚える」という姿勢ではなく、「英語らしい物の見方を身につける」という姿勢こそが、結果的に多くのルールを使いこなすことにつながります

(第13ユニット 了)

……

【本文公開予定】
全40ユニットのうち、以下の8ユニットを公開予定です

【第1項】そもそも英語で何を発信すればよいのか
【第4項】結果に注目する自動詞・原因に注目する他動詞
【第6項】原因が人に、結果を渡す
【第10項】とにかく現在形を使う
【第13項】英語話者は「モノ」の何を見ているのか
【第14項】aは常に2つの意味を持っている(4月10日公開予定)
【第24項】allとeveryとanyの違い(4月12日公開予定)
【第33項】関係詞の制限用法と非制限用法(4月14日公開予定)

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