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虫の鳴き声と人類の歴史

こんにちは!セントラルユニの西尾です
前回に引き続きクリティカルケア学会での本田先生の講演内容をお伝えします。前回は、情報も私たちにとって必要な環境の一部だと認識され始めたきっかけについて、過去の実験を振り返りながら紐解いてきました。
今回は、2つめのテーマである「情報環境が私たちの健康に及ぼす影響について」のお話しです。

あってはならない情報となくてはならない情報

物質・エネルギー環境と情報環境で比較してみると、環境化学物質など人体や環境への毒に当たる「あってはならない物質」は事細かに網羅的に客観的な指標で定められているのに対し、「あってはならない情報」は一部について検討が始まったばかりです。

例えば、住宅地における騒音は音量が定められていますが、熱帯雨林の虫の鳴き声等による環境音は、住宅地の基準値70dBを超えていますが、快適に眠ることができます。つまり、音の質については何がどういいのか?悪いのかは定められていないのです。

また、必須栄養素などの「なくてはならないもの」に関しては、細かく数値化され情報も溢れるほどありますが、健康に生きていくために「なくてはならない情報」については、前回のnoteで紹介したような、人間の脳から感覚情報を著しく遮断すると異常をきたす、という実験結果が得られているにもかかわらず、検討された形跡がないのです。

情報環境について本田先生たちは、人間にとっての必須栄養素があるように、人間に必須の情報があるのはないのか?と考えました。

虫の鳴き声と人類の歴史

そのヒントは、人類の歴史にありました。
人間はこれまで天然食品を食べて生存してきたことから、天然食品には生存に必須の栄養素がすべて含まれていると仮説を立てることができます。

同じように、先生たちの研究チームは、人間にとっての必須な情報も、進化のなかで人類の遺伝子と脳がつくられた「本来の環境」の中に含まれているという仮説も立てました。

そして、2000万年かけて進化し人類の遺伝子を育んだ熱帯雨林での情報環境と都市の情報環境とではどう違うのかをはるばる、アフリカ熱帯雨林とボルネオ島熱帯雨林まで検証しに行ったのです。(すごい!!)

人間の耳が音として感じることのできる周波数の上限は20kHzだと言われています。都市にあるマンションは遮音性能に優れているため、テレビやオーディオをかけなければほとんど無音状態となります。テレビやオーディオ、工事現場の音もほとんどが耳で聞こえる周波数で、20kHz以上の音はほとんどありません。

研究チームが部族の人々と1週間生活してみて分かったことは、都市の環境音と比較すると、意識で捉えることができない、耳に聞こえない20kHz以上の超高周波数に満ちていたということでした。これらの音は水のせせらぎや葉の擦れる音など様々でしたが、最も強いものは昆虫の鳴き声だったのです。

ハイパーソニック・エフェクトの誕生

しかし、この耳に聞こえない20kHz以上の超高周波が、本当に人間にとって良いものかどうかを検証する必要があります。研究チームは、同じ音源にこの超高周波を入れて聞かせた場合と入れずに聞かせた場合の人間の脳の反応を調査しました。

結論は、脳にいい!ということでした。
どういうことかというと・・・

超高周波を含む音源を聞かせると、中脳や視床下部といった脳の深い部分の活動が活性化するという実験結果が得られました。

中脳や視床下部は健康の脳機能とも呼ばれ、自律神経や内分泌系を司る中枢のため、免疫機能に対しても非常に大きな影響を及ぼします。

さらに、免疫機能に関わるNK細胞の活性化と、ストレスホルモンと呼ばれるアドレナリンやコルチゾールの有意な低下もみられ、前頭葉側に広がる本能的な行動を快感と感じる報酬系神経回路が活性化したのです。

つまり、高周波を含む場合は音をより美しく快適に感じ、より大きな音量で聞こうとするという反応がみられました。別の研究では認知機能の向上も報告されています。

このように人間の聞き取れない高周波を含む音を聞くことによって引き起こされる反応をハイパーソニック・エフェクトと名付け医療に応用する情報環境医療が提唱されるようになったのです。

今回はここまで。

人類の歴史からヒントを得るという発想と、アフリカの熱帯雨林まで行ってしまうその情熱と探究心に感服しました。

次回はこのハイパーソニック・エフェクトをテクノロジーで叶えよう!というおはなしです。

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