あったらいいな。森の病院
こんにちは。暖かくなって公園やキャンプ、山登りなど外に出たくなる季節になりましたね。
森にいくと、不思議と深呼吸してしまうのですが、それは自然な反応のようです。
「森林浴」という言葉は1980年代に当時の林野庁(農林水産省外局)が提唱した言葉で、実は日本発祥なのです。
当時から森林が人にもたらす効果は、さまざまな分野で研究されており脳の過活動を抑制したり、副交感神経を優位にしリラックスした状態を促す効果がある、というのがわかってきています。(*1)
そんな木のぬくもりが、病室に使われたらきっと良いに違いない。というのは想像に容易いですが、実際にカタチになっているケースがありました!
こちらは北海道森町(もりまち)の製材会社ハルキが立ち上げた「病院木質化プロジェクト」でつくられた病室で、セントラルユニや北海道市立大などと連携して北海道産の木材を病室に活用したケースです。
当時は前例がなく、「衛生面やアルコール食毒の影響などが不安」という医療現場の声に、実証実験を重ね通常の病院で使用されているビニール材などと有意差がないことを立証し、実用化にすすめたそう。
素晴らしいのは、既存の病室に1日で設置できる、というところ。厚さ2〜3cmのパネルを組み合わせて設置できるという優れものです。(*2)
こちらは、2016年産学官連携「病院木質化プロジェクト」ウッドデザイン賞2016ハートフルデザイン部門 林野庁長官賞(優秀賞)を受賞しています。
次に紹介するのは、住友林業が手がけたリハビリ施設。コンセプトは「リハビリテーション・リゾート」。ウッドデッキには屋久島の地杉をふんだんに使い、ホテルのような雰囲気に。あえて段差などをつくってあり、患者さんが早く自分の生活に戻れるよう、考えられた設計になっています。
「病院木質化プロジェクト」や木のリハビリ施設のように建築物の一部に木材を活用していくことを木質化(もくしつか)といいます。
2010年国土交通省が、国産の木材利用促進で地域経済の活性化や、森林を守っていこう!という法律をつくりました。その後、森林浴の人への良い影響も追い風になり、公共施設をはじめ医療施設などの天井、壁、床などに木材を活用しているケースが少しづつ増えているのですね。最近はオフィスの木質化なんかも進められているようですよ。
さまざまな場所や空間がより人間的な環境を求めている、ということなのだと思わずにいられないお話でした。
IN//SEKI 中尾
参考・引用
*1 独立研究開発法人 森林研究・整備機構 HPより
https://www.ffpri.affrc.go.jp/
https://www.nippon.com/ja/people/e00140/
*2 森林浴の効果を科学する:千葉大学の宮崎良文教授インタビュー
http://mori-haruki.co.jp/news_topics/925
*3 上から北海道新聞・ハルキHP・セントラルユニHP(下部受賞歴一覧)より
https://happymina.com/archives/1830
https://sfc.jp/mocca/case/case02_09.html
http://www.central-uni.co.jp/company/history/
アスクレピオスは医療環境の未来について、一緒に考え、カタチにしていくラボでもあります。
医療者のみなさんが、ふと思い浮かんだ「こんなアイデアはどうだろう?」「こんなものが、あったらいいな」があったらぜひお聞かせください!