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爆弾魔 / ヨルシカ ―覚えておくために、吹き飛ばす― 勝手に曲紹介


爆弾って魅力的ですよね。
 
人が吹き飛ぶ姿なんて見たくはありませんが、形あるものが木端微塵になって炎に包まれる姿には不思議な魅力があると思います。何かを創るよりも壊す方が簡単だとは思いますが、壊し方にも美学があります。

どーせやるなら、跡形もなくやってくれ。
そんな思いが伝わるような破壊力が爆弾には秘められています。

今日の曲はヨルシカさんの爆弾魔。もちろん、何かを吹き飛ばす曲です。

爆弾魔 / ヨルシカ


死んだ目で爆弾片手に街を歩く
誰も見向きもしないんだ 爆弾を翳したとて

爆弾を作る人は鬱屈した思いを抱えているので好きです。
そして、何かを創る大変さを知っている。

具体的な内容は表されていませんが、どうしようもなくなった「今」を爆弾を片手に歩く姿が浮かびます。残っているのは君との記憶だけ。

美しい思い出が、僕を歪ませています。

今日も出来ませんでした
今日もやれませんでした
青春の全部を爆破したい
君のことを歌にしたい

爆破=破壊
歌にする=創造

この対比は捩れた心の表象でしょう。

爆弾を題材にした曲は良い。破壊と創造。この命題に絡むような曲が多いと思うのです。創造と言っても、もちろん意図して創ったものばかりではないでしょう。たまたまの偶然から生まれた美。それもある。

でも、偶然だからこそ、自分でも再現できない美。それが悔しくて、人は爆弾を作るのかもしれません。

この日々を爆破して
心ごと爆破して
ずるいよ、優しさってやつちらつかせてさ ずるいよ全部

もれなくこの曲の主も爆破を望んでいます。
幸せだった日々の爆破。

ずるい、という言葉がずるい。自分じゃどうにもならない無力感。抗いがたい君の魅力。全て取り戻せない過去。楽しかった時間とそのギャップに苦しむ現在。過去は美化されていきますから、余計に美しさを研ぎ澄ませ、その身を切り裂いているのですね。

僕にはこの曲は単に別れた君への歌とは思えません。むしろ、もう君には絶対に会えないことを確信しています。

安っぽいナイトショーのワンシーンみたいな夢がみたい
散れば咲けよ百日紅

このフレーズが死(もしくは離別)を暗示していますから。

ナイトショーのワンシーンは再会、その夢
→願望。叶わない妄想。

百日紅(サルスベリ)
→再会を誓った相手が埋葬された場所から幹を伸ばしていたという伝説。

だからこそ「僕」はこの現実、事実を爆破しにかかるのです。

この夜を爆破したい
君だけを覚えていたい
だから今、さよならだ
吹き飛んじまえ

記憶も、感傷も、何もかも吹き飛ばします。
この先、もう二度と創られることのないものを、自らの手で爆破します。

忘れるためじゃないんです。
覚えておくために、何もかもを吹き飛ばすんです。

 

やっぱり爆弾って魅力的ですよね。

創るために壊す。
僕が僕の中に抱えた矛盾も、非合理だと嘲る主張も、他人の価値も、何もかも――。

全部吹き飛ばしてくれる気がするんです。


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