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トロント、絶望の家探し


———去年の5月


私はカナダのトロントで家探しをしていた。

とにかく手当たり次第、内見に行きまくっていた。


トロントではワーホリや学生は主にWEBサイトや知人の紹介で家を探すのが一般的で、トロントに着いたばかりで知人が一切居ない私は、家探しサイトでオーナーに内見希望の連絡をお願いし、返信をくれたオーナーに片っ端から連絡を取り、家を見て回るしかなかった。

トロントに着いて既に二週間ほど経っていたが、
ちょっとでも、いいね!という家が一向に見つからない。
なんなら「まあここはちょっと微妙だけど、妥協すればいいか〜♪」
というレベルの家すら出会えてなかった。

私の探してる部屋の条件は

・シェアハウス (5人以下)
・男女人種問わず
・プライベートルームあり(鍵付き)
・駅もしくはバス停から徒歩15分圏内

以上。


しかし私が見てきた家は上記をクリアするどころか、

・部屋に窓が無くドアが壊れている
・ドアがない
・倉庫を空き部屋だよと紹介される
・オーナーとベッド供用
・住人がみんな薬中(※合法の大麻ではない)
・毎晩乱行パーティー会場となる家
・空き部屋の中心にガス台がひとつ置いてあるだけの家     

などなど、私の予想を遥かに超える
とんでもない家たちとの出逢いがあった。
おまけに詐欺にも遭いそうになった。

というわけで、家探しが難航していた。

トロントに着いてからというもの
私は家探しか寝るかしかしてなかった。

もうあの時は気を抜くとすぐにでも号泣しそうだった。
よくわからないがめちゃくちゃ焦っていたのを覚えている。

誰かに相談すれば良かったのだろうが、カナダに来たばかりで知り合いが誰一人もおらず、こんなに必死に家を探しているのにまともな家に一件もぶち当たらない。もう心が折れそうだった。

・・・私、前世で何かしましたか?


そしてある家の内見日。
この日もまた住めそうにない家だった。


もう限界だった。


最悪だ。



帰り道、道に座り込み、うずくまって泣き出してしまった。

「どうしたの?」

顔を上げると、シャーロックホームズとかにでてきそうな、絵に描いたようなイギリス紳士風の気の良さそうなおじいさんが居た。

「ここは似たような通りが多いから、道にでも迷ったかい?」
と言い、不安そうにこちらを見る。

「いいえ、ちょっと嫌なことがあって・・・取り乱しててすみません。けど、もう大丈夫です。」

うずくまって泣いてるところを見られた恥ずかしさもあり、直ぐにその場を立ち去ろうとした。

「本当に?もし良かったら話を聞くよ。こんなに泣いちゃってお節介かもしれないけど放っておけないよ。そこに公園があるから、とりあえずベンチに座ろうか?」

結局、優しそうなおじいさんに引き止められ、気が付いたら目の前の公園のベンチに座っていた。

私は見ず知らずのおじいさんに、最近初めてカナダに来たこと、ずっと家を探しているが全然見つからないこと、詐欺に合いそうになったこと、仕事も早く探さなくてはいけないのに、家すら決まらず焦っていること、こちらに全く知り合いがおらず心細いことなど、この二週間の出来事をひとしりき話した。

おじさんはただただ優しく相槌を打ち、私の話を聞いてくれた。

「苦労したんだね。もう起きた出来事を無くすことはできないけど、もし良かったら私が持っているアパートがあって、今は使ってないんだ。
・・・だからもし君さえ良ければだけど、内見するかい?長いこと使ってなくて掃除とかメンテナンスは多少必要かもしれないけど、気に入れば住んでもらっていい。掃除とメンテナンスさえしてくれれば、タダで住んでもいいよ。」



・・・神様か何かですか?



もう泣いて喜ぶとはこういうことか!と思った。

私は心からの感謝を述べ、また明日内見することを約束し、おじいさんと別れた。




———この出会いから、私の一生の思い出となるであろう約1年のトロント生活が始まった。





・・・みたいな下りを、5万回は想像した。笑


そんなうまい話はもちろん無い。
「最悪だ。」から以下の文は、全私の想像であり、妄想であり、フィクションである。

割とキツイ状況なのに想像力だけは生き生きしてやがるぜ・・・と、この時期思っていた。

実際は、それから数日後、とりあえず!と言えそうな家にやっと出会うことができ、遂に住む場所が決まった。

もし今この記事を読んでいるあなたが、カナダで家を探しの情報を探しており、この記事を読んでいるのなら本当に謝りたい。

けれど、(今はコロナで難しいかもしれないが、)いつかカナダへ行こうと思ってる人が、私みたいな苦労をして欲しく無いので、家探しに有益になりそうなことは、また別の機会に記事にしたいと思う。



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