崇城大学 IoT・AI センター、バーチャルとリアルが融合した仮想空間スタジオに TriCaster TC410 Plus を導入
崇城大学 IoT・AI センターには、最先端の ICT テクノロジーを学び、 IoT や AI による近未来空間が体験できる 10 以上の多様なスタジオを完備。学生が主体となり、仮想空間スタジオ、IoT・AI スタジオ、プレゼンスタジオ、ナビゲーションスタジオ、SCB 放送スタジオ (ラジオ・テレビの番組制作) などさまざまなスタジオで、技術と実践力、そしてイノベーション創発手法を学び習得している。
『仮想空間スタジオ』 ではバーチャルとリアルが融合した、まったく新しい可能性や体験をもたらす 『リアルメタバース』 の研究・開発を実施。そして、このたび新たに開設された 『eスポーツスタジオ』 と 『仮想空間スタジオ』 の組み合わせによるリアルメタバース空間では、eスポーツ配信を通じてバーチャルとリアルの両空間の行き来(バーチャルとリアルの双方向の写像)を体験できる。この eスポーツ配信に、TriCaster TC410 Plusが活用されているのだ。
四方面に映像投影できる最先端の XR と eスポーツ配信を融合
崇城大学 IoT・AI センターは 2020 年 4 月に創立された。IoT や AI によって生み出される、近未来空間を体験できる最先端の ICT 施設だ。同センターは実学・実践志向による ICT テクノロジーが学べる場であり、プロフェッショナル、イノベーター、DX 人材の育成が行われている。
最先端の ICT 施設である IoT・AIセンターは、地域や社会の課題を解決する実践的な力、あるいはイノベーション創発手法を学ぶ場としての注目度が非常に高い。設立2年間で、国内外問わず 100 を超えるさまざまな産官学団体が訪れている。また「学生自らがプログラミングで施設を進化させる」 をテーマとしており、仮想空間スタジオ、IoT・AI スタジオ、プレゼンスタジオ、ナビゲーションスタジオ、SCB 放送スタジオなど、未来の情報社会の構築へ向けた研究・開発が行われているのだ。
今、崇城大学ではもっとも情報学部が注目されており、近年の受験者数は増加。その背景には、崇城大学 IoT・AI センターが進めているDX人材育成、DXハブ・プラットフォーム構築、普及活動、最先端の学びの場の提供など、これまでの取り組みが貢献している。本記事では、最先端の仮想空間スタジオで TriCaster がどのように活用されているのか、3 名のキーパーソンにお話を伺った。
IoT・AIセンターの推進戦略、ならびに、仮想空間スタジオの基本構想と設計、を担当されている、 崇城大学 IoT・AI センター長 (情報学部 教授) の星合隆成氏 (以下、星合氏) 。
スタジオ施設にあたり、技術・人材の提案と全体コーディーネートを担当された、一般社団法人ジョブラボぐんま 副理事長の小保方 貴之氏 (以下、小保方氏)。
配信環境の機材選定・施工、TriCaster® TC410 Plus 制御の技術支援を担当された、株式会社ラストイズムの周藤 寿和氏 (以下、周藤氏)。
仮想空間を再現する巨大な 3 次元空間モニターと eスポーツ配信
仮想空間スタジオは、星合氏の構想をもとに、最先端の技術・環境、未来への拡張性、柔軟に活用できる場所として施設された。高さ・広さをはじめとして、センター内の既存のスタジオとはまったく異なる環境だったため、構想を実現するためにさまざまな点が考慮された。
星合氏「3 階建てくらいの天井が非常に高い吹き抜け構造になっている、広大な空間を活用した最先端の技術・環境に触れられる場所。今までにない近未来空間体験をもたらす場所を構想しており、仮想空間を再現する巨大な 3 次元空間モニターが実現しました。天井に 4 機のプロジェクターを設置して映像を照射し、部屋 (空間) を一つのディスプレイとして使用できます」
現在、巨大な 3 次元空間モニターを使用したさまざまなアプリケーションや構想が練られ、実践されている。空間演出の実例としては、海外とネットワークをつないでダンスコンテンストを開催し、同時に参加しているような臨場感のあるイベントなど。
また、仮想空間スタジオでは、仮想空間 (メタ空間) とリアル空間を融合したまったく新しい可能性や体験をもたらす研究・開発の試金石の一つとして、リアル空間から仮想空間への写像と、仮想空間からリアル空間への写像の相互作用を体験できる、リアルメタバース空間での eスポーツ配信を目指している。
eスポーツ配信を行うにあたっては、今までにない特殊な空間での配信、また崇城大学 IoT・AI センターの理念と合致する機材・技術を考慮しなければならず、三つの要望を解決する必要があった。一つ目は、配信だけが目的の施設ではないこと。二つ目は、実際の現場・実務で使用されている配信機材。そして三つ目は最先端の技術を学ぶ場にふさわしいということである。
これら三つの要望を解決するにあたり、技術・人材の提案と全体コーディーネートを担当された小保方氏と配信環境の機材選定・施工を担当された周藤氏は、 TriCaster TC410 Plus BASE バンドルが最適な選択だったと話す。
このバンドルは、2RU サイズの TriCaster TC410 Plus 本体と、TriCaster シリーズに最適化された TC1SP コントロールパネルがセットになった製品だ。
単一メーカーによる多様な製品モデル
配信だけが目的の施設ではないため、配信設備はシンプルかつ単一メーカーでの構成という点が考慮された。
小保方氏「仮想空間スタジオは特殊な空間です。 eスポーツ用の配信機材が常設できないため、柔軟に機材を設置・格納できなくてはいけません。ラックサイズにおさまる構造や、配信機材とコントロールパネルが同じメーカーという安心感は、選定のポイントとなりました」
周藤氏「最初に TriCaster Mini シリーズが候補として挙がりましたが、拡張性の視点から TriCaster TC410 Plus に決めました。TriCaster には多種多様なモデルが用意されており、さまざまな現場に合わせて柔軟に選択ができるのが良い点です。また配信用スイッチャーだけでなく、エンコーダとしても使用しています」
eスポーツ配信に最適な現場で使用される機材
実際の現場・実務で使用されている配信機材を重視した結果、 導入事例の多さが決め手となった。
小保方氏「アナログミキサーを長年使用した経験から、ハードウェアの操作性と対応性は現場において必須です。また、配信業務に携わる会社や現場のユーザから、TriCaster を制御できる学生を採用したいというお声を聞いていました」
周藤氏「TriCaster については、10 年前から名前を知っていました。そして、導入事例が多いということは、多様な現場で使用され、あらゆる現場に対応できる柔軟性があるということです」
NewTek 社が開発した IP 映像伝送プロトコル NDI
最先端の技術を学ぶ場にふさわしいという点から、 NDI によるIP映像伝送も決め手の一つだった。NDI (ネットワークデバイスインターフェイス) は、 NewTek 社によって開発された IP を利用した映像伝送プロトコル。映像、音声、メタデータを、イーサネット環境にて、NDI 互換のさまざまなシステム、デバイス、 PC などへリアルタイムに相互で映像伝送することができる。
小保方氏「崇城大学 IOT・AI センターの大ききな特徴が、最先端のテクノロジーの学びの場である点。そのうえで、知識・技術・実務性として NDI を学び使用できるのことは重要です」
周藤氏「イーサネットケーブル 1 本でのシンプルな構成は、今後の拡張性も検討できます。 NDI の可能性は非常に高く、あらゆる用途に使用されていくことでしょう」
仮想空間スタジオの eスポーツ配信機材構成
TriCaster TC410 Plus は、仮想空間スタジオの没入型 eスポーツ配信機材の中核システムとして使用されている。 4 系統の SDI ビデオ入力 と 8 系統の NDI 入力の中から 6 系統を選択し使用できるライブ映像制作システムだ。 施設内の eスポーツ配信は 4 対 4 の 2 チーム による対戦が想定されており、出演者は司会 1 〜 2 名 と 2 チームのゲームプレイヤー 8 名となる。 司会用のカメラが 1台とチームごとのカメラが 2 台、 合計 3 台がコンバーターにて HDMI -> SDI に変換され、TriCaster TC410 Plus に入力されている。
ゲームのプレイ画面 ( HDMI ) の 8 系統は、 Blackmagic Design 社の ATEM Mini Extreme に入力。そして、 MAIN OUT の映像出力がコンバーターにて HDMI -> SDI に変換され、 TriCaster TC410 Plus に入力されているのだ。 また、 NewTek 社から発売されている、スタンドアロンで動作するテロップ制作ソフト LiveText がインストールされた Windows PC のテロップが、 NDI 経由で TriCaster TC410 Plus に入力されている。
音声は、司会のマイクが 2 系統、2 チームのゲームプレイヤー用に各 2 系統の合計 4 系統。さらにゲームのプレイ画面 (映像・音声) 8 系統は ATEM Mini Extreme に入力され、 MAIN OUT 映像出力からコンバーターを経由して音声が分離される。すべての音声は会場の PA ミキサーに入力され、PA ミキサーからのミックスがメインアウトから出力。TriCaster TC410 Plus のバランス XLR ステレオペアに入力される。
仮想空間スタジオへ観客が投影され、リアルと一体化した eスポーツ配信
TriCaster TC410 Plus は合成機能が充実しており、最大 6 レイヤー、4 M/E が使用可能だ。司会とゲームプレイヤーの 2 チーム、ゲームのプレイ画面、 LiveText の合計 5 レイヤーを柔軟に合成している。
また、 eスポーツでもっとも重要であるスコア表示といったリアルタイムのテロップ出しには、 NewTek 社の LiveText を使用。コストパフォーマンスにすぐれたテロップ作成専用ソフトウェアであり、TriCaster シリーズとの親和性は非常に高い。もちろん、TriCaster 上でもテロップは作成可能だ。しかし、専用のソフトウェアを使用することで TriCaster のオペレーターはスイッチングに集中でき、テロッパーは並行して作業できる。また、同じメーカーの専用ソフトという信頼性と、相性の良さも享受できる。
バーチャル空間とリアルが融合された eスポーツ配信。これを実現した星合氏に、率直な感想を伺った。
星合氏「通常の eスポーツ配信だと、視聴者は会場の様子を視聴するだけです。しかし、仮想空間スタジオでは、 四方面に映像を投影できるため、オンラインからの視聴者が壁面に表示されます。スタジオにいる司会やプレイヤーは、観客席から応援されているような、バーチャル世界の没入感が体験できるのです。また、視聴者は壁面の映像と現場のカメラ映像から、バーチャルにて会場に参加している様子を体験できます。これは、我々が目指しているリアルメタバースの一つの形だと考えています。
配信というのはライブ性が重要であり、学生が落ち着いて対応できることが必要です。そのため、優れた操作性がもっとも重要なポイントでした。専用のコントロールパネルは学生や教員が直感的にすぐ使えて、操作性が抜群です」
導入結果
昨今では、 eスポーツが世界的に盛り上がりを見せている。崇城大学 IoT・AI センターがある熊本県の高等学校では、eスポーツのクラブ活動が非常に活発化しており、教育機関から新たな eスポーツクラブ活動の場が欲しいと要望の声が。そして、仮想空間と eスポーツ配信が融合した体験は、学生に新たな刺激と感動、興味をもたらした。このような期待に応えられる崇城大学 IoT・AI センターの取り組みが広く理解されることで、学生のやる気の醸成や、近年の受験者数の増加に寄与できたと星合氏は話す。
星合氏「TriCaster は実務を学べる製品です。また、学生が柔軟な発想で新たな配信や表現などができる潜在能力もあるため、今後の活用に期待しています」
TriCaster と NDI の親和性の高さ
小保方氏と周藤氏は導入時に TriCaster の有償トレーニングを受講し、非常に面白い製品だと感じたという。また、周藤氏は崇城大学 IoT・AI センター向けにマニュアルを作成している。
小保方氏「現在、返しのモニターを HDMI で表示していますが、今後は映像や音声の入力・出力など NDI の活用を検討しています。現在の環境にプラスして NDI で拡張でき、イーサネットケーブルでシンプルに配線できるのも非常に良い点です」
周藤氏「コントローラーを見て、製品の質の高さがわかりました。思わずテンションが高くなり、使用するのが楽しみに感じたのです。また、 PTZ カメラのコントロールができるといった、拡張性の観点でも優秀ですね。 M/E へさらに M/E を合成できることや、NDI の活用などを是非とも学生の皆様にご紹介できればと思います」
今後の展望
星合氏はTriCaster TC410 Plus について、使用するほど新たな発見があり、アイデアや表現が浮かんでくる製品だと話す。
星合氏「配信をともなうサービスやアイデア、構成などは非常にたくさんあります。eスポーツ配信だけでなく、今後さまざまな配信に活用したいと考えています。また、 TriCaster シリーズは、あらゆる場所で使用される可能性を秘めていると思います。崇城大学 IoT・AI センターではさまざまな企業と連携開発していますが、TriCaster は施設と一緒にご紹介できる製品です」
配信における強力な機能や拡張性を持つTriCaster シリーズは、まったく新しい最先端の施設にも柔軟に対応し、導入できる製品であることがわかった。そして、あらゆる配信現場で活用され、これから配信を行なったり実務を学んだりする学生や教育機関向けにも、最適な映像配信システムだと言えそうだ。
即戦力として企業や官公庁、教育が求める配信業務の人材育成、そして配信業務を担える製品として、今度も産官学のあらゆる場所で導入・活用されていくだろう。
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