プロの視点から回答!相談者の『高齢者向け爪切り専門店』開業計画を検証
相談内容
先日、知人から「高齢者や肥満の方を対象にした足の爪切り専門店」を開業したいと相談を受けました。その計画は、最近よく見かける「10分ヘアカット」スタイルを模したもので、要点は以下のような内容でした。
施術は5分で1人、回転率を重視
健康な爪に限る
料金はワンコイン(500円)
彼は資格も経験もなく、医療に関する仕事に携わったこともありません。爪切りが医療行為ではないことを理由に「誰でもできる」と考えています。
私自身(相談者)、医療従事者として、無資格での高齢者向けフットケア事業には大きなリスクがあると感じています。
回答
フットケアの5分施術は現実的か?
「健康な爪」だけを対象にすることでリスクを避けようとしているようですが、基準が曖昧です。見た目には健康でも、細菌感染やその他の問題が隠れているケースも多く見受けられます。
さらに、5分で両足10本のケアを行うのは、経験者でも難しいでしょう。高齢者にはゆっくりと話をしながら、丁寧にケアを行うことが求められます。もしこのペースで施術を行えば、満足のいくサービスの提供は難しく、顧客満足度を高めることも期待できません。
<お客様例> 受付→施術→次回案内→お会計→見送り→片付け→準備
経営の観点からみた問題点
仮に500円で5分というペースで施術を行う場合、利益を上げるためには相当数のお客様を集客しなければなりません。経費(家賃・消耗品・広告宣伝費他)社会保険料、税金を差し引くと、手元に残る利益は一体どれくらいになるのでしょうか?
また、高齢者向けのフットケアを提供するには専門的な知識と技術が求められ、すでに多くの競合サロンが存在しています。
特に高齢者は、トラブルが生じるリスクを考慮して医療機関を頼る傾向があり、このような安価でスピーディーなサービスには不安を感じるかもしれません。
フットケアへの参入について
高齢者フットケアは、単に爪を切るだけでなく、疾患のリスクや高齢者の体調に配慮する必要があります。
見た目に何ら以上のない爪であっても、糖尿病などのフットケアで細心の注意が必要な病歴を持つ高齢者は少なくなく、見た目が健康でも潜在的なリスクが存在することもあります。
知識がない施術者が対応することでお客様に怪我を負わせる可能性が高まるため、非常に懸念しています。
ネイリストなどの爪に対する技術者が参入を考えるケースも多くありますが、フットケアはそれだけで簡単に提供できるサービスではありません。
フットケアのプロフェッショナルとして技術と知識を磨き、責任を持って対応することが求められます。
最後に
知人の方に、このようなリスクや必要な知識についてお伝えすることで、自分の考えを見直してもらえることを期待しています。高齢者フットケアの分野に参入を考えている方に、リスクと現実についてしっかり理解してもらうことは非常に重要です。私の記事や他のフットケア専門家の情報を参考にしてもらい、適切な選択をするきっかけになればと思います。
追記
この相談は、開業を検討している方の知人(医療従事者)からメールで相談をいただいたものです。
本来の弊社の業務とは直接関係のない内容でした。
しかし近年、高齢者フットケアに安易に参入を考える方が増えている現状に不安を感じており、同じような考えをお持ちの方への参考になればと思い、ブログ掲載の了承を得て回答しました。