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Challenger Banking News #4

隔週で欧米のチャレンジャーバンクのニュースを配信しています。

前半は、特に大きなニュースを3つピックアップし、背景や周辺情報を深堀りしています。

後半では、主要なニュースを10程度リストアップし、ショートコメントを添えて紹介します。


N26, Brexitを受けてイギリス撤退へ

2020年1月末をもって正式にイギリスがEUを離脱し、Brexitの移行プロセスが開始しました。これを受けて、独チャレンジャーバンクN26はイギリスからの撤退を発表しています。2020年4月15日をもって、同社によるイギリス国内利用者の口座提供は終了となります。

撤退の直接的な理由ですが、EU圏内であれば銀行免許を取得国以外でも流用できる"Passporting"という制度があり、Brexitによりイギリスがこの制度の適用から外れることにより、N26が独の銀行免許をイギリスで利用できなくなる点にあります。

逆もしかりで、イギリスで銀行免許を取得しているチャレンジャーバンクはEUで銀行サービスを提供できなくなります。ただし猶予期間が設けられており、イギリスが"Passporting"の適用から除外されるのは2020年12月末の予定ですので、それまでに各企業は何らかの対応を求められます。

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[What is ‘passporting’ and why does it matter? - BBA Brexit Quick Brief]

一方、N26の撤退理由について、実態としては、イギリスにおけるチャレンジャーバンク市場の競争が激しく、顧客獲得に苦戦していたことが影響していると見られています。

pymntsが報じているように、N26は2018年10月にイギリス進出して以来、会員獲得数についての正式な情報は出ていませんが、1年半かけて200,000人程度と見込まれている一方で、2019年にアメリカに進出し、5ヶ月で25万人獲得を達成していました。顧客獲得効率の観点だけから考えても、今回の撤退は妥当な判断だと思います。

個人的には、N26のサブスクリプションモデルは、大手銀行において口座維持手数料が原則発生しないイギリスよりも、免除要件はありつつも口座維持手数料が課されているアメリカの方がフィットしやすく、収益性の観点からも妥当な判断だと捉えています。

Fintech Insider by 11:FS(イギリスのFinTech関連のpodcast)でも、N26は、元々イギリスでのビジネスが不調だったところ、Brexitをイギリス撤退のスケープゴートとして利用したに過ぎないとのコメントも出ており、500万人の会員を有するN26もイギリスでは風当たりがやや強い印象を受けました。


一方、やや蛇足しますが、Revolutは、Brexit以降のEU圏内でのサービス継続については、2018年に既に取得しているリトアニアの銀行免許と、今後追加でアイルランドで取得予定の銀行免許を用いてサービス提供を続けることを発表しています。

中央/東ヨーロッパではリトアニアの免許を使い、西ヨーロッパでアイルランドの免許を使う予定とのこと。Revolutは800万会員のうち約1/3が英国、2/3がEU圏内との情報もあり、Brexitを見据えて周到に準備を進めてきたことが伺えます。なお、今後イギリスでも銀行免許を取得予定とのことです。


LendingClub, 米FinTechとして初の銀行買収

米国レンディングプラットホームのLendingClubがRadius Bankを買収予定です。買収が成立すれば、米国FinTech企業による初の銀行買収となります。買収にあたっての当局による審査に12-15ヶ月程度を要する見込みとのこと。

Radius Bankは1987年創業、支店を持たないデジタルバンクで、14億ドルの当座預金残高を保持しており、APIを通じてBrexといったFinTech企業への銀行サービスをBaaSモデルで提供しています。

数ある銀行のうち、LendingClubはなぜRadiusを選んだのか?

Forbesは、買収の真の目的は、Radius BankのBaaSにあると言います。LendingClubは長期ビジョンとしてマーケットプレイス化を掲げており、今回の買収を通じて、Brexをはじめ多くのFinTech企業に対して預金機能を提供できるようになるからです。

LendingClubはP2Pのレンディングプラットホームのため、借り手と貸し手の両方を確保することが必要ですが、預金機能は新たな自社による貸し手の調達方法の一つとして有効な一手でしょうし、顧客獲得の観点から見ても、Radius Bankが既に複数のFinTech企業にBaaSを提供していることからも、効率の良い顧客獲得チャネルとして期待が持てそうです。


Morgan Stanley, E-Tradeを$13bnで買収

Morgan Stanleyがオンライン証券のE-Tradeを130億ドル(約1兆4600億円)で買収することで合意しました。買収は株式交換方式によるとのこと。

E-tradeは顧客数520万、資産残高3,600億ドル(約4兆円)を保有しており、一方のMorgan Stanley側は顧客数300万人、資産残高2.7兆ドル(約300兆円)です。

2019年11月には競合Charles Schwabがオンライン証券のTD Ameritradeを買収しており、2019年に株式売買手数料の無料化が進んだことによる低コスト化の圧力が強くなっていることが影響しています。

その他の主な記事

ここからは、その他のチャレンジャーバンク関連記事をご紹介します。まずはアメリカから。

Varo, FDIC加盟承認を受けて銀行免許に一歩前進

VaroがFDIC(連邦預金保険公社)という銀行破綻時の預金保護機構から加盟承認を取得しました。アメリカではネオバンクモデルが主流のため、既存銀行と提携するパターンが主ですが、Varoは初めてFDICから加盟承認を得たFinTech企業となりました。

チャレンジャーバンク/ネオバンクの違いやプレイヤー分類といった前提整理については以前noteでもご紹介していますので、よろしければ。


Chime, 800万会員到達

Chimeが800万会員到達とのこと。2018年5月に100万会員でしたが、2年足らずで700万会員増えた計算になります。

金利1.6%の貯蓄口座の提供も予定しているとのことで、競争激化していますが、今後も拡大傾向が続きそうです。


Level, 還元率1%デビットカードと金利2.1%の貯蓄口座を提供開始

アメリカのネオバンクLevelが新しいプロダクトをリリースします。決済還元率1%のデビットカードに金利2.1%の貯蓄口座(FDIC預金保護対象)が付き、Chimeと同様に給与前払いにも対応するとのことで、かなり競争力のあるプロダクトかと思いますので注目したいですね。


JPMorgan Chase, イギリスにデジタルバンクとして参入へ

JPMorgan Chaseが2020年内にイギリスでデジタルバンクとして参入を表明しました。GSは2年前にMarcus UKをイギリスでリリースして先行しており、それを追う格好。JPMorgan Chaseはイギリス当局FCAの元監督局長官を数年前に採用していて、イギリスでのデジタルバンク設立を目指すようです。


Intuit, Credit Karmaと買収合意

チャレンジャーバンク関連ではないですが、ビッグニュースなので。個人向け税務/会計ソフトウェアサービスを提供するIntuitが$71bn(約7,870億円)でCredit Karma買収です。Credit Karmaは消費者向けに与信スコアを無料で提供しており、利用者数は1億人超、MAU3,700万人とのこと。


続いて、イギリスのチャレンジャーバンクのニュースをいくつか。

Revolut, 550億円追加調達

Revolutは、時価総額評価$5.5bn(約6,090億円)で、550億円を追加調達したとのこと。現在Revolutは1000万人超えており、以下主要な指標です。

- ユーザー総数は2019年に169%成長
- デイリーアクティブ顧客は2019年に380%成長
- 売上高は2018年に354%増加
- プレミアムサブスクリプションの売上高は2019年に154%増加


Starling Bank, P2PレンディングのZopaと提携

StarlingがP2PレンディングのZopaと提携。Starlingは会員数ではMonzoやRevolutに劣るものの預金残高は£1.25bn(約1,800億円)まで伸びており、1人あたり平均預金残高は高くなっているため、プロダクトの相性は良いものと見られています。


Monzo, 信用情報機関Experianに利用者情報提供へ

Experianは10億人の与信データを持ち、クレジットスコアFICOを提供している信用情報機関ですが、Monzoは今後Experianに対して利用者の信用情報を提供するとのこと。


英FinTechのCurve, アメリカ進出へ

イギリスのFinTech企業Curveがアメリカ進出を表明しました。同社は90万人の会員を抱えており、海外決済手数料無料、1%キャッシュバックといったベネフィットのあるデビットカードを提供しています。ちなみに、同社のカードイシュイングはWirecardとの提携によるものです。


今週のニュースは以上です。

次回の配信は3月9日の予定です!

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