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#16 中野吉之伴さんの指導をみて感じたこと(後編)

8月の初旬、大阪府熊取町で行われた指導実践に息子と参加しました。とても沢山の気付きがあったので、備忘録として書き留めたいと思います。今回は後編です。
前編はこちら。

後編は主に中野さんの人柄と、その日のトレーニングの雰囲気について書き留めておきたいと思います。

【人を見る目】
人を見る目、というのが正しいのかどうかは、わからないのです。が、その日初めて会った、主には子ども達になるけれども、コミュニケーションをとる中で、その子がどんな性格の子でどんなプレーヤ―で、どんなアプローチをしたら少しでも距離が縮まるのか、自分の言葉が響くのか、みたいなことを見抜くアンテナが、凄く高いのではないかな、と思いました。現に、超絶緊張していた息子と、その友人は、もちろんそんな場でストレスなくコミュニケーション出来る性格ではない。でも、中野さんの細やかなアプローチによって、徐々に心を開いてるのが、わかりました。息子の友人はどちらかというと控え目なタイプではありますが、中野さんに話しかけられた際、(この人は自分の話をしっかりと聞いてくれる人)という安心感を感じているのが、本当にわかりました。また、その逆に、自ら積極的にアプローチする子や、緊張はしているけれど、プレーでは強気、といったような子にも絶妙な距離感と関わり方で、子ども達の心をトレーニングに集中させていったと思います。でなければ、クリニック終了後のあの一体感は何だったのかとなるはず。魔法でもなんでもなく、中野さんの人心掌握術、故の事だった思います。

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【オープンマインド】
更に子どもたちを惹きつける、そして大人も惹きつけられたのは、紛れもないオープンマインド。言語化するのが難しいけれど、これは実際にご本人にお会いしなければ中々感じにくいです。

一言で言えば、纏うオープンマインド感が凄かったです。

私はどちらかというと人見知りで、(確か中野さんもオンラインの講習でも何度かそのように自分の性格を表現していたけれど?あれ?おかしいな。)自分の心を開いて、人と交流することがとっても苦手。まして不特定多数の人、となれば尚更黙ってしまいます。もちろん、指導者という立場もあるので、黙っているわけにいかないのは当たり前なのですが、子ども達がどんなことを言っても、どんなプレーをしても、受け入れてもらえて、なおかつリアクションもしてくれて、中野さん個人の感情も垣間みれて、の安心感たるや。保護者としてもとってもとっても居心地がよかったのです。

また、オンラインでは交流があっても初めて私もお会いするのに緊張していました。その垣根をひょいと飛び越えて冗談めいた言葉を投げられるユーモアのセンスに、すっかり私の心は安心感でいっぱいになりました。これは、やはりオープンマインドという表現がとってもぴったりな様な気がします。簡単なようで難しいですが、保育や子ども達と接する現場では、とてもとても大切な心持ちだなと改めて気付かされました。


【言語化できる知性】
オンラインの講習会でも、これは度々感じていたことなのですが、人の感情や物事の動き、その場の空気感みたいな様々な場面があるとして、中々言葉にできないこと、沢山ありますよね。そういうことを子どもたちや私たち保護者に、わかりやすく伝えたり、絶妙な言葉のチョイスだったり、こどもたちとのやりとりもリズミカルで、びっくりしました。
それから、アイスブレイクの際にこんな場面がありました。
「ドイツからくるのに、何時間かかったと思う?」
何人かの子どもたちが思いつくままに、答えた後中野さんはこのように応えました。
「正解は、13時間。でもいつもはもう少し早いんだ。なんでだと思う?」
次の質問は結構答えあぐねている子が多かったです。子どもたちから言葉がでたかどうかは私には聞こえなかったけれど、その次に中野さんはこのように説明してくれました。
「今、ロシアとウクライナの間に何が起きているか知っている?」
それについて流石の小学4年生、戦争~というような内容がちらほら聞かれて、中野さんもこのように応えてくれました。
「そう、だから今上空を飛ぶことが禁止されていて、遠回りして日本にきたんだよ。だからいつもより少しだけ時間がかかって大変だったんだ。」と。それでその話題はおしまい。
私はとても絶妙だと思いました。そこで、戦争について語るわけではない、だけれども身近な話題として自分の行動に紐づけて子どもたちに世界の状況を伝えるセンス。流石でした。

【人を惹きつける人柄】
オープンマインド、ユーモア、言葉のチョイス、人を見る目。中野さんのオンライン講習会や、著作の本、育成やブンデスリーガの記事等々から、随所に感じられる中野さんの人柄。その日も、沢山の指導者の方が中野さんの指導実践や生の言葉を体験しようと参加されていました。また、交流のある年齢様々な指導者が集い、トレーニングのサポートにも回ってくださいました。池上正さんもその一人ですが、本当に中野さんの人柄が人を惹きつけ、その日のグラウンドは、とても多幸感に溢れていました。指導者の方によっては少しは子ども達にとって窮屈な言葉がけも、あったようにも感じましたが、とてもとても、本当に、暖かい空気に包まれて、凄く良い経験をすることができました。過去にドイツに研修に行った方々が今も中野さんと繋がって、何かを学んだり、地域に還元しようとしている所以が、少しだけわかったような気がしました。知らないお友だちと知らない地域で、初めてサッカーする、ことを経験できた息子にとっても、素晴らしい環境だったと思います。敢えて言うとすれば、見学の保護者や指導者は、指示や矯正的な声かけをしないかわりに、ポジティブな声かけを遠慮なくもっと沢山しても良いのかな、と感じました。感じたことをシンプルに子どもたちに伝える、というアプローチは、池上さんや中野さんはとても長けていたように思いました。

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【指導者、保護者レクチャー】

指導実践のあとは、指導者と保護者の方がグランドの木陰に集い、質疑応答等のレクチャーがありました。中野さんは今日の意図や指導のねらいなど、とてもわかりやすく明確かつ的確な言葉で伝えてくれました。また、指導者の方からも質問がいくつかあり、その一つ一つに丁寧に応えてくれました。

中でも印象に残ったのが、長期オフの重要性について。日本の子ども達に長期のオフがないことにとても危機感を持っておられ、且つ、何故長期のオフや子ども達に余白の時間が必要か、をとても丁寧にしかもわかりやすく保護者や指導者に向けて、お話してくださいました。内容は省略しますが、息子と参加した友人のお父さんが、トレーニング後の夕食時に、あの話は凄く響いたし共感したし、気付きがありましたね、と教えてくれました。今年の夏に公開された中野さんのオフについての記事を以下に張り付けますので、是非読んでもらえたら、きっと気付きがあると思います。


そして、私はと言えば、質疑応答の際にずーっと悩んでいました。質問は特にありませんでした。なぜなら、完璧すぎたから。中野さんのトレーニングが。意図も伝わったし、子ども達の姿・様子で、もう十分すぎる程、何が大切かを私なりに感じることができたので。なので、聞きたいことは特にない、指導している子どもたちがいるわけでもなし!でも、今日の素晴らしすぎた空気感の事は伝えるべき?伝えたい?いや、でもかなり暑い、みんなきっと疲れているし、あまり長引いてもいけないし。(この時点で立ち話20分以上。前川先生どうして芝生に座っての座談会にしてくれなかったの?と失礼ながら企画した年長者を呪ってしまったほどです。。)など引っ込み思案の性格がこういう時には強く出ます。結局発言することは、できなかったのですが、終了後中野さんと1対1でお話する場面があり、「今日、どうでした?」と逆質問されてしまい、激しく後悔しました。やはり、全体の場で、私の感想を伝えるべきだったのだと。私のようなただの保護者の意見も、指導者の方にとっては、大切なのかも、と思い、「とても多幸感溢れるグラウンドで凄く幸せな気持ちになりました。」とお伝えさせていただきました。

池上正さんもよく仰っています。日本人の方は全体の場で質問しないけれど、後で個人的に質問に来る傾向があると。中野さんがドイツでの経験でお話されたことは、こんな個人的な疑問を質問したらみんなが迷惑と思うかもしれないけれど、以外とそれは他の人にとっても重要なことだったりするんですよ、と。だから、なるべく思ったこと、感じたことを直接全体の場で!勇気をもって、伝える機会は大切にしていきたいです。

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【真夏に行うトレーニングについて】

最後に真夏に行うトレーニングについて。中野さんも兼ねてより日本の夏は暑い、長期のオフの重要性、子ども達の夏休みの大切さ、は様々な媒体で執筆されています。その上で、いつもは冬期の一時帰国を今回は8月の、日本の夏休みと重ね、各地でのレクチャーや、指導実践にあててくださいました。

正直、長期のオフや真夏にトレーニングを行うことについて、とても葛藤はあったはずです。(憶測です)でもそれ以上に、日本の各地を回って伝えたいこともあっただろうし、繋がりたい人の輪もあったと思います。コロナ禍で、日本にしばらく来れていないという状況もあったと思います。

先日SNSで矛盾では?という意見を目にして、悲しい気持ちになりました。(名指しではないので、全く関係のない話かもしれません)

日本の夏休みが、子どもたちにとって、サッカーばかりでなく色々な経験が出来る夏に少しでも近づけるように、自分に出来ることを一歩一歩やりたいと思います。


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*熊取町立中央小学校のグラウンドのヤシの木と夏の雲が印象的でした。

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