棗いつきさんアルバム『HYPNO SONIC』感想
注意
この記事は棗いつきさんのアルバム『HYPNO SONIC』とその特典小説の内容を含みます。
ご注意ください。
はじめに
ようやく休みの日が来たので棗いつきさんの小説と音楽の感想です。
投稿にも書きましたが、10万字の小説と6曲の楽曲の複合の感想を140時でまとめようとすると「面 白 か っ た で す ! !」としか書けなくなるのでここで記載します。
ちなみに私は『音楽を聴く→小説を読む』という流れです。
また小説の内容にふれますのでご注意ください。また考察という名の妄想を含みます。
1.イノリゴト
一言感想
小説読了前:かそかそさんの音楽はやっぱり好き。
小説読了後:なるほど。この曲はオープニングソングかな?
この曲は誰の心情を歌ったものなのでしょうね?
物語は『夜日』君を主軸に進んでいっているので、おそらく彼の物なのだと思いますが。「これ以上の幸せなんて無い 今が穏やかに続けばいい それでもなお 時は無情に とめどなく移ろっていく」の部分は『蝶花』の事件に巻き込まれいく部分を表していそうなんですけど。
ただ「臆病な手」や「祈った」などのフレーズがあまり似つかわしくないように感じたんですよね。これはもう一人の主人公(私がそう思っているだけです)の『麗生』の心情も混ざっているのかな、と思えましたね。
あと上手いなぁ、と思ったのが『蝶花』が物語ではほとんど登場しないのです。
彼女のイメージがどうとでも出来るというか。作中で「『蝶花』は『夜日』との関係、思いをあまり外に出さない」「人見知り」「この学校に彼女の友達はいない」等のフレーズがあったのが気になります。私の中で勝手に「自分の本音をあまり外に出さない」「内面にため込んでしまう」「信頼している人が少ない、だからこそ選んだ相手には本音を話す」ようなキャラクターがイメージされています。
『蝶花』が夜日との関係をどう感じていたのか。またどのような気持ちで作中の行動をしたのが全く描写されていないので、読者がどうとでも想像できてしまうのがにくい。
多分読者の中でも『蝶花』のキャラクター像はばらけそうですね。
曲の感想ですか?
内容的にも事件に巻き込まれていく歌詞とオープニングソングのような曲調に感じました。
好き。
2.無条件Surrender
一言感想。
小説読了前:ノリが良い曲だけど、このテーマの小説にどう組み込むんだろう? え? エピローグ? この曲が?
小説読了後:なるほどこれはエピローグですね(白目)。
XFDで聴いた時と読了後で印象が変わった曲①です。
これは小説読んだ人がほとんど同じ感想を抱いたのでは無いでしょうか?
「禁忌(タブー)」「遺伝子のバグ」「どんな蝶も花も君にかなわない」がまさか兄妹愛に歌った物なんて思う訳無いじゃ無いですか……。
多分『夜日』が『蝶花』に心情を歌った物、のはず、ですよね?
君の魅力には敵わないよ、ってやつですね。
なるほど棗いつきさんが歌うとこうなるのか、という感想です。
曲単体なら困難の中でも愛を歌う歌、と聴けますね。
好き。
3.Secret of my heart
一言感想
小説読了前:今回は近未来悲恋SF物なのかな?
小説読了後:失恋ソングでしたか。
この曲は『露李』の心情を歌った物で良い、はず。
ただ初め聴いた時はてっきりここから主人公との恋愛に発展してくのかと思いました。
いえ、小説を読んでいる中ではあの展開は予想出来るのですけど、この綺麗な歌だけで本当にそのまま振られるとは思わなかった……。てっきりこれから恋が発展していくのかと。バッサリでしたね。
夜のドライブに合う曲、という事でもの悲しさを感じながらも爽やかな曲の印象です。
好き。
4.夏の残り香
一言感想
小説読了前:あれ? XFDの印象よりも不穏な感じの曲だな。え? これがプロローグ?
小説読了後:あの関係を歌った歌でしたか。
XFDで聴いた時と読了後で印象が変わった曲②です。
XFDでは「夏から秋に変わる寂しさを歌った曲なのかな?」と思っていましたが「夏から秋に変わり、夜の時間が増えていく事の不穏さを歌った曲かな?」とさらに暗いイメージに変わりました。
そして小説ですね。
おそらく『麗生』と『歩楼』の出会いと関係性を歌った曲ですかね?
『麗生』の絶望と諦観と、そのに伸ばされた『歩楼』の手を表していそうですね。
ただ「ブレーキ音」とかがですね……。
小説を読むと意味が分かるという。意味が分かると怖い話ですかね?
全部わかって聞くと歌詞がまたいちだんと不穏ですね……。
ちなみにダークな曲は好きです。「純情サクリファイス」等も好きです。
結果この曲も好きです。
5.son macabre
一言感想
小説読了前:これが人を殺す曲かな?
小説読了後:あぁ、やっぱりそうなのか、けどこれは……
ある意味予想通りだった曲です。XFDで聴いた時から「ぜったいこれが人が死ぬ音楽だ……」とは思ってました。
予想外だったのはここまで中毒性があるなんて聞いて無い事です……。
延々とループして聴いてます。大丈夫ですよね……? 頭から離れないんですけど……。
あとはドーパミンって確か統合失調症に関係するんでしたか。なるほど、急性的に陽性症状を引き起こすのでしょうか。
作中では『歩楼』の心情を歌った曲なんですかね。
「見下ろす街」は社会的地位が高い。
「苦しいよと悶えても 別に私じゃない」は嗜虐的な思考。
「私だけがこのセカイを 独り占めできるの」は狂ったような傲慢さ。
「普通で陳腐なこのセカイ」は今まで特に不幸を感じた事が無い幸福な、けどそれが当たり前の刺激の無い環境。
余談なのですが私の好きな言葉があります。「幸福とは痛みが無ければ実感する事ができない」という物です。私が好きな作家さんの言葉です。
幸福が当たり前になってしまえば、その人間はそれを幸福だと実感する事ができない。
生まれた時からすべてが手に入り、物質的に充足している。これは言い換えれば幸福を、ひいては刺激を感じる事ができなくなると思います。
だからと言ってあの『歩楼』の精神を理解、納得、共感できるかは別の話ですが。
曲についてですか。
アルバムで一番好きな曲をあげろと言われれば下記の「son joyeux」です。けれど一番聴いているのは「son macabre」です。
頭から離れません。延々とループしてしまいます。助けてください。
好き。
6.son joyeux
一言感想
小説読了前:絶対感動する奴
小説読了後:絶対感動する奴
絶対感動する曲。以上です。
はい。真面目に話します。けどこの曲はわざわざ話す事が無い気が。
内容は『麗生』の最後の心情を歌った曲ですね。
「Garbage Flower」でも思いましたが、棗いつきさんのRDさんとの楽曲は「辛かったし苦しかった事もあった。けどその経験があったからこそ、私は今の気持ちを持つことが出来た」という「辛い過去の受容。未来への希望」が根幹にある気がします。
誰だって辛かったこと、嫌だったこと、失敗してしまった事、落ち込んだことがあると思います。
けどだからこそ、人にやさしくすることが出来るし、今頑張る事ができている。
そんな事を歌っているからこそ、誰かの感情を動かすことが出来るのでないかという私の想像です。
ちなみに読む前は「son macabre」でおかしくなった人を「son joyeux」で回復させるのかな、と思ってました。
けど正解はもっと確実で直接的な方法でしたね。
人をおかしくする曲なら聞かせなければいい。
どうやって?
それ以上に素晴らしい音楽を聴かせる。
作品的に見れば、独善的な「son macabre」と共感的な「son joyeux」のどちらが支持されるのかという話ですね。
あの世界は貧富の差が大きいようですし、『露李』の兄のように困難な生活をしている人も多いのでしょう。『夜日』の家系はおそらくかなり余裕のあるフリーランス(『蝶花』を格式ある学校に通わせている事から)、『露李』の家系は弁護士と言う社会的地位の高い職業。けれど大多数はそうではない。
だからこそ、困難の中でも歩み続ける、そして幸福を歌った「son joyeux」はきっと多くの人の心に届いたのではないのかと思います。
曲について
最後の「世界を変える力も 私には無いのだけど」の声が、ですね。凄い好き。
なんであんな綺麗な声が出せるんでしょうね。いや棗いつきさんの努力のたまものなのでしょうけど。
終わりに:作品についての妄想などの雑記
妄想①:HYPNO SONICについて
幻覚や攻撃性、自殺など。
作中でもドーパミンや神経伝達物質等の単語が出ましたね。
この辺りはあまり専門では無いのですが、これらのバランスが崩れる事で引き起こされる精神疾患があったはず。
なら「弔鐘」はいったいどういう曲なのかな、などなど考えたり。(ノルアドレナリン? セロトニン?)まぁ、碌な物では無いのでしょうが。
妄想②:楽曲について
イノリゴト:???(夜日? 麗生? 蝶花?)
無条件Surrender:夜日
Secret of my heart:露李
夏の残り香:麗生(&歩楼)
son macabre:歩楼
son joyeux:麗生
小説を読んでこの感想を書きながら感じたイメージです。
先にも書いたとおりにイノリゴトは『夜日』のイメージに少し違和感があるフレーズがあるというか。私の勘違いかもしれませんが。
感想を書きながら「もしかして『蝶花』の心情なのかな?」と思っても答え合わせはできませんし。主人公格である『夜日』と『麗生』の複合な気もしますし。
こんな風に物語について考えている時間って好きなので、今とても楽しいです。
妄想③:名前の由来
御崎屋 夜日:日々夜夜?(毎日毎夜?) 分からない……。
御崎屋 蝶花:蝶よ花よ(大切に育てられた娘?)
都鹿野 三月:分からない……。
心井 露李:心情を吐露する? 作中で夜日に思いを伝える事から?(ロリって呼んでごめんなさい……)
霊叢 病:魂が群(叢)がって病める? 分からない……。
春樹 麗生:最後に自信をもって生きる事を決意する事から? (麗らかに、はれやかに生きる)
有栖川 歩楼:虚(ほろう)から? 虚ろな楼閣。中身の無い外面だけ?
ハルキ・キョウゴ:漢字が分からない……。ただ著名な人物として「村上春樹」さんと「京極夏彦」さんが思いつきはしましたけど……。たぶん違う……。
特徴的な名前なので何か意味が含まれてそうですね。そう言えば西尾維新さんのキャラクターもかなり特徴的な名前をしてましたね。
小説の感想としては、これで文章を書くのは得意ではないとか嘘でしょう?
とても面白く読ませてもらいました。
他の人も言われてましたが、これは是非紙でほしいですね。
プレッシャーになってしまうかもしれませんが、次回以降の物語も楽しみですね。
CDとは別に売られていても迷わず購入するでしょう。
そして今更ながらにアンダーテイカーなどの時のボイス付きグッズが購入できない事の後悔が……。あれも物語に関係する物語が込められていたのでしょう?
もう手に入らないのですね……。
しかしこれは後悔してもしょうがないですね。次回以降は迷わず購入します。「son macabre(造語版)」が届くのが楽しみです。
ここまで読んだくださった方がいらっしゃるのならありがとうございます。
毎回思いますが、棗いつきさんの曲を聴いた時と物語を読んだ後などで曲の印象や解釈が変わる感覚がとても好きです。
絶対に140字では感想が納まらないので、備忘録も含めて書きなぐりました。
楽しんでいただけたのなら幸いです。