Withコロナ時代の北海道ビジネス入門⑥「ベトナム人実習生 派遣企業で学習交流」@広尾町・拓殖工業
1月の気温差30度の北海道に着任
北海道十勝管内広尾町は人口6,705人で漁業と農林業を基幹産業とする街です。日本相撲協会理事長で第61代横綱、北勝海の生まれ故郷としても知られています。昨年11月4日、同町の拓殖工業株式会社(武田孝会長)に2人のベトナム人技能実習生が配属になりました。ベトナム南部アンザン省出身のグェン・ゴック・バオ・チャウさん(30)とホーチミン市出身のブイ・ニュー・ロンさん(27)です。広尾町の1月の平均気温はマイナス4・5度でホーチミン市は平均26度ですから、実に約30度の気温差があります。私も北海道出身なので冬の寒さは分かりますが、2人はどのように暮らしているのでしょうか。
地元の中高校生と一緒に夜間学習
拓殖工業は教師経験のある山本伸平専務夫妻が地元の生徒たちへの教育支援をしています。チャウさんとロンさんが生活している同社の独身寮の空きスペース(旧食堂)を利用し、広尾町内の中高校生を集めて学習指導を続けています。現在は、新規生徒をとらずに縮小している段階ですが、在籍している12人の生徒たちは月・火・水曜日19時~22時まで学習塾代わりに勉強をしています。
こうした環境の中で、チャウさんとロンさんも月・火・水曜日の19時30分ごろから21時ごろまで生徒たちと一緒に勉強しています。生徒たちに毎日書いている日記の漢字をはじめ日本語を教えてもらっています。逆に、簡単なベトナム語を教えたり、ベトナムの文化を話したり、互いに大好きなアニメやゲームの話を交えながら、楽しい学習交流をしています。山本専務らは2人が午前4時に起きて弁当を持ち、同5時30分には現場に向かうため早く寝てもらいたいと思い、生徒たちとの学習交流を“強制終了”することもあるそうです。
小さなグローバル人材共生社会が誕生
拓殖工業によると、同社は本当に大切な社会貢献は、地域の人づくりであり、それは子どもたちへの「教育」を支援することだと考え、積極的な現場見学会やインターンシップ、職場体験などを近隣の小中高校に協力して実施してきました。ここ数年、「一現場一社会貢献」を目標に掲げて取り組み、達成しています。そこに年長者であるベトナム人技能実習生のチャウさんとロンさんが加わって、小さなグローバル人材共生社会が生まれつつあります。
チャウさんは「広尾町の冬は寒いですが、景色がとてもきれいな所です。日本には四季があり、春は桜が咲いて暖かいので一番好きです。仕事は忙しいけど、とても楽しい」と話しています。ロンさんは「広尾町は景色がとても美しく、静かで、誰もがとても親切です。日本らしい文化にも触れ、日本が世界でも優れた国だという理由が少しずつ分かってきました。会社は常に安全を第一に考えているので職場では安心です」と述べています。
長引くコロナ禍 監理団体と送り出し機関が奮闘
コロナ禍で海外渡航が制限され、2人を仲介した日本の監理団体「公益財団法人東亜総研」(東京都千代田区)、ベトナムの送り出し機関「エスハイ」(ホーチミン市)ともに対応に苦慮しています。2020年4月より技能実習生の入国は完全にストップしましたが、10月3日、東亜総研で6カ月ぶりに北海道内の6社に12人の技能実習生が入国することができました。その後、11月は8社に29人、12月は11社に43人が無事入国しました。しかし、首都圏などへ緊急事態宣言が発出されたことも影響し、今後の入国は現時点で不透明な状況です。東亜総研理事の長澤薫さんは「一日も早くコロナ感染拡大が収束し、技能実習生、特定技能や留学生などが一時帰国できるようになってほしい。現在、技能実習3号(3年修了後さらに2年間)に進むベトナム人が3年間の実習修了時もしくは4年目に1カ月以上母国に帰国することになっておりますが、昨年の4月以降、一時帰国も叶わないでいるのは何とかしてあげたい」と切実な思いを吐露しています。
北の大地に生まれつつある小さなグローバル人材共生社会が、全国に広がり、そして根付くように応援したいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?