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Withコロナ時代のアジアビジネス入門㉚「牛丼のすき家と東ティモール有機珈琲」@毎日アジアビジネス研究所

苦難の歴史と名産品コーヒーの美味しさ
 牛丼チェーンすき家で初めてコーヒーを購入しました。すき家などを運営するゼンショーホールディングス(東京都港区、小川賢太郎会長兼社長)が販売展開する東ティモール有機珈琲ドリップバッグです。薦めてくれたのはイリディオ・シメネス・ダ・コスタ駐日東ティモール民主共和国大使です。大使インタビューのため訪れた同大使館(東京都千代田区)で淹れてくれた同国産のコーヒーは驚くほど美味しく、帰り際に大使が「ゼンショー、ゼンショー」と指さした先に東ティモール有機珈琲ドリップバッグが置いてあったので、翌日すぐに購入しました。アジアで最も若い国として2002年に独立した同国の苦難の歴史を思うと、同国産のコーヒーの味もほろ苦く感じられ、だからこそ、名産品のコーヒーを少しでも広めることに協力したいと思いました。
<体裁よりもソウル(魂)>大使の人柄に惚れ込み
 イリディオ大使は本当に気さくでユニークな方でした。インタビューのため指定された同大使館内の部屋で待っていると、大使は白っぽいフリース姿でふらりと現れました。「インタビューの写真はこの姿でよろしいですか」と念を押すと、「これでいいんだよ。私は堅苦しいことが好きじゃないんだ」と最高の笑顔を見せました。<体裁よりもソウル(魂)だよ>とでも言いたげな大使の人柄に惚れ込んでしまい、同国への関心がいっそう高まりました。
 東ティモール民主共和国(首都ディリ)は人口約126万人、面積約1.5万平方キロメートル(東京、千葉、埼玉、神奈川の合計とほぼ同じ大きさ)。現在は石油・天然ガスの開発が進められており、輸出用にコーヒーの栽培に力を注いでいます。
 その歴史は16世紀にポルトガル人がティモール島を征服したことから始まります。その後ポルトガルとオランダによって東西に分割統治され、第二次世界大戦後もポルトガルが支配した後、1975年に東ティモール民主共和国として独立。しかし、翌76年インドネシアに併合され、分離独立闘争を経て2002年に独立しました。独立以後も国連PKOや国連東ティモール支援団による治安維持や支援が行われました。
ゼンショー 企業理念のもと「直接提携型」のフェアトレード
 ゼンショーホールディングスによると、独立時に生まれた混乱からの復興を目指して多くのNGOが現地で支援活動を続けていた2007年、東ティモールコーヒーのフェアトレード(Fairtrade、公正な貿易)を手がけていた日本のNGOが販路確保のために「ゼンショーでコーヒーを取り扱えないか」と持ちかけたことがきっかけとなり、企業理念との親和性が高いことから取り組み開始に至りました。2007年4月、すき家で東ティモール有機珈琲のドリップバッグの販売が始まったことを皮切りに取り扱いが拡大し、その後、同じく現地で支援活動を続けていた特定非営利活動法人パルシック(PARC Interpeoples’ Cooperation=PARCIC、東京都千代田区)と共同プロジェクトを組んで現在に至っています。ゼンショーホールディングスは現在、東ティモール有機珈琲をきっかけに「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という理念のもと、アジア、アフリカ、中央・南アメリカの計18ヶ国と「直接提携型」のフェアトレードコーヒー・紅茶の取引を行い、各国で生産者の支援を行っています。
 東ティモール民主共和国については2002年の独立や国際PKO派遣をめぐって盛んに報道されましたが、その後の国づくりはあまり伝えられていません。東ティモール有機栽培珈琲を飲みながら、同国を支援する気持ちを忘れず、継続してウォッチしていきたいと考えています。
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 毎日アジアビジネスレポートのトピックなどをもとに、所長としての視点をNOTEでまとめています。イリディオ・シメネス・ダ・コスタ駐日東ティモール民主共和国大使のインタビューは毎日アジアビジネスレポート2月号に掲載されます。レポートの購読や問い合わせなどはメールで毎日アジアビジネス研究所 <asia-biz@mainichi.co.jp>までお寄せください。

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