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Withコロナ時代のアジアビジネス入門㉓「<不安な平和>不確実性の世界2021」@毎日アジアビジネス研究所

アジアビジネス入門はマクロ経済と政治の定点観測が大事
 コロナ感染拡大に歯止めのきかないまま2021年を迎えました。
今年のキーワードとして<不安な平和>という言葉が浮かびました。
 この言葉は中国・清華大学国際関係研究院の閻学通院長が米中関係を見立てたものです。
 <不安な平和>不確実性の世界のアジアビジネス入門はマクロ経済と政治の流れを定点観測することが大切だと思います。
中国は第14次5カ年計画(2021~2025年)の理解
 なぜ、そう思うのでしょうか。
 毎日アジアビジネス研究所シニアフェローの陳言氏(北京在住)によると、今年1月20日に米国の大統領がトランプ氏からバイデン氏に代わっても、米中対峙の遺産が引き継がれ、バイデン時代は方式を変え、トップをすげ替えた新たな<不安な平和>不確実性の世界を迎えるというものです。こうした見方の中国は、米中対峙の長期化対応、中国国内の経済循環の強化、対日アプローチをとることは明らかです。
(1)米中対峙は中国の第5世代移動通信システム(5G)技術などの排除において、トランプ氏は恣意的なアメリカ・ファーストで行っていましたが、バイデン氏は日本、欧州など同盟国と組織的な共同排除を行う見通しなので、依然として対立は長期化する。
(2)中国は第14次5ヵ年計画(2021年~2025年)と2035年まで長期目標に国内と国際のの「双循環」成長戦略を盛り込む方針を決定し、米中対峙と国内構造問題の対応のため、国内のサプライチェーン強化を最重視している。
(3)中国は米国以外の外資導入に主眼を置き、東アジアの地域的な包括的経済連携協定(RCEP)の締結に加え、習近平国家主席は日本が主導する環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11)の参加を示唆。技術力が高くサプライチェーンのつながりのある日本には環境や介護・医療分野を中心に提携を求めている。
米国はバイデン政権のアジア政策決定力学の把握
 こうした中国側のスタンスに対し、米国、日本の対応はどうなのでしょうか。
 バイデン次期政権の通商代表部(USTR)代表に就任する台湾系米国人の女性、キャサリン・タイ氏に注目が集まっています。タイ氏はオバマ政権下のUSTR担当時に中国の輸出補助金問題を世界貿易機関(WTO)に提訴した経緯がある「対中強硬派」と見られ、米議会では民主党のみならず共和党からも支持されていると言われています。毎日アジアビジネス研究所シニアフェローの及川正也によると、国内政策会議委員長に就く大統領補佐官(国家安全保障担当)を経験した元国連大使のスーザン・ライス元大統領補佐官(国家安全保障担当)が雇用や賃金など中間層対策の政策全般を調整するとみられ、国内政策会議の調整が進まない限り、それと裏返しの通商政策が決定しずらいとされています。タイ氏の出番はそれまではなく、重要なアジアでの通商問題でさらに米国が出遅れる懸念は大きくなっているのも事実です。しかも、過去に外交・安保を担当したライス氏は「中国に優しく、日本に厳しい」といわれた人物であり、この辺の力関係が米中貿易にも微妙に関係しそうです。
日本は対米原則と対中利益のバランス
 菅義偉首相は1月3日、ニッポン放送のラジオ番組で、中国のTPPへの参加について「TPPのルールは非常にハイレベルで、国営企業で運営しているところは厳しいことに当然なっているので、今の体制では難しいと思う」と語り、現状では困難だという認識を示しました。菅首相の発言は、国営企業を基軸とする中国経済の構造を問題視しつつも、実はバイデン政権との「同盟原則」を意識して中国を牽制したものとみられています。
 冒頭、アジアビジネス入門はマクロ経済と政治の流れを定点観測することと申しましたが、特に中国のマクロ戦略である第14次5ヵ年計画と米国のバイデン次期政権のアジア政策決定の力学が重要になります。今後、それらについて私自身の定点観測を報告します。
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 毎日アジアビジネス研究所が毎月配信する毎日アジアビジネスレポートのトピックなどをもとに、所長としての視点をNOTEでまとめています。レポートの購読や問い合わせなどはメールで毎日アジアビジネス研究所 <asia-biz@mainichi.co.jp>までお寄せください。

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