シリーズ:米国のアジア人脈⑥ 米連邦議会でアジア系が過去最高に--大統領選予備選に出馬したカマラ・ハリス上院議員
及川 正也
毎日新聞論説副委員長
米国では新たな議会の会期が1月3日に開会した。昨年11月の中間選挙の結果、上院は与党・共和党が過半数を維持したものの、下院は野党・民主党が多数派を奪還し、上下両院の「ねじれ」が生じる中での新議会である。反移民色が濃厚なトランプ政権への反動からか、非白人、女性、性的少数者(LGBTなど)など多様性に富んだ議会ともいわれるが、目立つのはアジア系だ。過去最高の20人を擁し、なかでも、2020年大統領選への出馬を表明したカマラ・ハリス上院議員(54)への注目度ががぜん高まっている。
■アジア太平洋選出議員は20人
今議会は第116期議会だが、1会期は下院議員の任期にあたる2年。つまり、米国で議会が始まって230年が過ぎ、今年1月から231年目が始まったことになる。現在の定数は上院が計100人、下院は計435人だ。もともと米国は英国の13植民地(現在の州)がつくった連邦国家だ。いわば州はそれ自体が大きな自主権を持つ「国家」と位置付けられていたため、各州の人口の多さに関わらず、「代表」として全州に2人が均等に割り当てられている。現在は50州のため、定数は100人となる。一方、下院は人口比に応じて選挙区が画定される小選挙区制だ。人口が多く、面積も広いカリフォルニア州は全米最多の55選挙区ある。下院は2年ごとの選挙で全議席が改選され、上院は6年任期で、2年ごとに約3分の1の議席が改選される仕組みだ。
それでは、まず、今の連邦議会におけるアジア系議員の構成をみてみたい。上院は3人、下院は14人がアジア系(太平洋島しょ部含む)で、ルーツは日本、中国、フィリピン、インド、台湾、ベトナム、タイ、韓国、サモアの計9カ国・地域に上る。
現在、上院の3人は全員が女性の民主党議員だ。メイジー・ヒロノ氏(ハワイ州選出)は日系、タミー・ダックワース氏(イリノイ州選出)はタイ系と中国系、カミラ・ハリス氏(カリフォルニア州)はインド系である。日本生まれのヒロノ氏には広野慶子の日本名がある。ダックワース氏はイラク戦争で両足を失った傷痍軍人で、オバマ前政権では退役軍人省の次官補代理を務めた。
下院は多様な国籍だが、昨年の中間選挙で当選した新人組では中国系の父とフィリピン系の母を持つT.J.コックス氏(カリフォルニア州21区)、韓国系のアンディ・キム氏(ニュージャージー州3区)がいる。上院と同じく、現職のアジア系下院議員は全員民主党だ。米国自治領などを代表する「代議員」のうち3人のアジア系(北マリアナ諸島、米領サモア、グアム選出)を含めると、アジア系議員は20人になる。
こうした中でとりわけ際立つのが、インド系の存在である。2016年大統領選と同時に実施された連邦議会選挙では、当選したアジア系のうち下院では4人中3人、上院では2人中1人がインド系だ。このうち1人が、今回紹介するカマラ・ハリス上院議員である。
■初のインド系大統領目指す
カラマ・ハリス上院議員=議員のフェイス・ブックから
ミャンマー西部ラカイン州のイスラム教徒少数民族ロヒンギャが、隣国バングラデシュへ大量に逃れる事態を招いた治安部隊との衝突から2カ月後の2017年10月、共和党のトッド・ヤング上院議員と民主党のジェフ・マーキー上院議員がニッキー・ヘイリー国連大使(当時)に書簡を送り、 ミャンマーに対し、軍と治安部隊がロヒンギャに対する「民族浄化」を中止するよう求めた。これには両氏を含め、21人の上院議員が署名したが、その1人が、ハリス上院議員だった。
カリフォルニア州生まれのハリス氏は、父親がジャマイカ出身のスタンフォード大学教授(経済学)、母親はインド・チェンナイ出身のがん研究者だ。ハリス氏は連邦議会で超党派の「アジア太平洋米国人議会コーカス(議員連盟)」(CAPAC)に所属し、「アジア系アメリカ人・太平洋島嶼出身者」(AAPI)問題に取り組む1人だ。
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