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【抄訳】ERPの語られない世界|VRChatドキュメンタリー

VRChatはその利用規約において、性的コンテンツの公然たる利用を厳しく禁止している。しかし、実際には「バーチャルセックス」という現象が、このバーチャル空間で一部のユーザーにとって確立された文化として存在していることは否定できない。センセーショナルな話題性がある一方で、VRChatが単なる性的行為の温床として誤解されることは、プラットフォームとそのユーザーにとって不本意であり、避けるべき状況だ。だからこそ、この現象を単なるスキャンダルとしてではなく、一つの「文化」として適切に理解し、紹介する必要がある。

近年、日本国内でもメディアやインフルエンサーによる「バーチャルセックス」をテーマにしたコンテンツが増加しているが、その多くがセンセーショナルな視点に偏りがちだ。しかし、このテーマは本来、「自己理解」「ジェンダーとアバターの可能性」、そして「性的同意の重要性」といった側面から深く掘り下げられるべきもだと、信じている。

今回紹介するのは、海外のVRChat系YouTuber「The Dapper Saint」さんが2021年11月に投稿した「The Unspoken World of ERP | A VRChat Documentary」というインタビュー動画だ。日本国内では「Just H」「バーチャルセックス」などと呼称される「ERP(Erotic Role Playing)」を、2人のユーザーのインタビューを通して紹介する内容となっている。センセーショナルに扱ってしまいがちな「ERP」について、公平で教育的な観点からの情報提供に努めており、個人的に「ドキュメンタリー」として高く評価している動画だ。

抄訳はあくまで個人の責任で行っており、動画の投稿者とは一切関係ない。この翻訳が、より健全な議論と理解を促進する一助となることを願っている。翻訳の誤りや疑問点があれば、指摘してほしい。

引用元動画:抄訳したインタビューパートは4:50頃~


ファントムセンス(VR感覚)とERPの定義

インタビュアー: まずは自己紹介から始めましょう。

N: 僕の名前はNick Nackです。VRChatを始めて約1年になります。

K: 私はKAOURAです。VRChatは2017年からプレイしています。

インタビュアー: まず最初に聞きたいのは、ERPをどう定義しますか?ERPはあなたにとって何ですか?

N: それは基本的にバーチャルセックスです。まあ、実際の接触がない以外はあまり違いはありません。とはいえ、強いファントムセンスを持っている人もいます。

インタビュアー: ファントムタッチを感じることはよくありますか?

N: 最初にプレイを始めた時は、ファントムタッチが何か理解していませんでした。最初はハーフボディ(※筆者注:3点トラッキング)でのプレイが多かったですね。ERPに関することが出てきて、ヘッドパット(頭を撫でられる)などがあり、それが少し変な感じになりました。実際の触感ではなく、触れられる予感を感じるんです。つまり、長くプレイしてフルボディトラッキングを使うと、動き方を理解してきて、脳が少しずつ騙されるようになるんです。

K: そうですね、皆それぞれファントムタッチの感じ方が違います。私の場合、ファントムタッチを感じるのは3か所あります。腕と、顎の下と、そして奇妙ですが耳にも感じます。動物の耳がないのに、耳に触れられると動くのが見えて、脳がそれを「引っ掻くように」感じるんです。これはちょうどASMRのような感じです。初めて聞くと、脳が「これは何だ?」って感じるのと似ています。

インタビュアー: それは素晴らしいですね。でも、ERPをしている人たちはどれくらいの期間やっていますか?

K: VRChatの初期の頃から(※筆者注:2018年頃のことを指す)、人々が性的なことをしているのは知られていました。だから自分も試してみようと思ったんです。文字通り、みんな欲望に駆られているので、試してみました。

N: 僕もERPを「そういう気分になりたい」という欲望の一種だと思っていました。ここでは皆そう感じているので、そんなに難しいことじゃありません。ただ、気を付ける必要がありますね。

K: 当時、「Void Club」というワールドがあって、それは元々ダンス用のワールドでしたが、徐々に地下のセックスクラブのように使われるようになりました。それは最初のプライベートルームを持つワールドの一つで、ドアをロックして、そこで知らない人と会って一夜限りの関係を持つことができました。今までに226人とERPしました。

ERPにおける「性的同意」について

インタビュアー: バーチャルリアリティでの同意はどう機能していますか?VRChatでの同意に関して、良いシステムがあると思いますか?それとも、まだ問題があると思いますか?

N: このゲームには、年齢を偽る未成年者がいます。特に彼らがミュートである場合には要注意です。僕にはVRChatで絶対に守る2つのルールがあります。一つ目は「全員が男性だと思え、証明されるまでは」。二つ目は「ミュートを信用するな」。少なくとも、誰かと話している時には、声が子供っぽくないかなどを聞くことができますが、それでも注意が必要です。ERPをする相手には本当に気を付けるべきです。

ERPが自己認識に与える影響は?

インタビュアー: VRChatは自己認識やアイデンティティを発見する興味深い方法だと思いますか?ERPという言葉は、人々が自分の興味や可能性について考える際に影響を与えると思いますか?

N: このゲームを最初に始めたとき、僕は100%ストレートだと思っていました。でも友達と遊んでいるときに、「同性の相手とERPをすることはあるか?」という疑問が出てきて、友達を見た時、「もしそれが彼となら、まあ、ありかもしれない」と思ったんです。それが最初の男性で、新しい何かだと思いました。

K: それはいい質問ですね。VRChat全体が自分自身に関する学びに大きな影響を与えました。VRChatを始める前は、僕はもっと内向的で、注目を浴びるのが嫌いでした。性的なことについても同様で、ゲームを始めた時には、99%ストレートだと思っていましたが、ゲームをプレイするうちに、人々の見た目ではなく、彼らが誰であるかを見るようになりました。

N: もう一つ、このゲームで僕の考え方が変わったのは、トランスコミュニティに対する認識です。以前はトランスの人々を理解していませんでしたが、ソーシャルメディアではその最悪の部分しか見えなかったんです。しかし、VRChatで多くのトランスの人々と話すことで、彼らが本当にフレンドリーで、多くのことを学び、リスペクトを持つようになりました。振り返ってみると、僕はただ無知だったんだと思います。VRChatは新しいコミュニティに対して目を開かせてくれました。

インタビュアー: それは本当にクールですね。まったく考えていませんでした。

N: 僕が言いたいのは、みんな一度はVRを試すべきだということです。それはまだ新しい技術であり、実験的であったり、高価であると思わないでください。確かに高価かもしれませんが、それだけの価値はあります。たとえそれがERPでなくても。

K: ERPに関する誤解があります。ERPは気持ち悪いものではありません。ただの二人の大人が「一緒に楽しみたい?」と言うだけのことです。それがすべてです。

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