「AIを使って書いた小説」全106事例のまとめ【2021/3/27 更新版】
どうも。AIを使った創作活動に取り組んでいる葦沢と申します。
本稿では、「AIを使って書いた小説」をまとめています。意外に思われるかもしれませんが、Web上で公開されている「AIを使って書いた小説」は増えつつあります。しかし、それらを一覧化した情報は存在せず、多くの人に知られる機会がありませんでした。こうした状況を少しでも改善し、先駆的文芸作品の再評価につながれば嬉しいです。
掲載基準
まず、本稿に掲載する基準を以下のように定めました。
・AIを使ったことが明記されており、かつ小説として公開することに主眼があると思われる活動について掲載する。
・AIを使って自動生成した後に、人間の手で文章を編集している作品も含む。
・論文で発表されているが小説として公開されていないアカデミックな研究、機械学習技術を試しに使ってみた系のブログなどは対象外とする。
・各作品へ直接リンクすることは避け、タイトル、作者名など、検索で辿りつけるであろう最低限の情報にとどめる。(リンクの掲載許可の確認、作品削除などへの対応コストを減らすため)
・Twitter bot、Twitter小説、BunCho内作品については、作品数が多いため、まとめて一事例として掲載。
・R18作品については、一部の作品タイトルに直接掲載するのがはばかられる表現があるため、一律してタイトルを伏せる。
なお、本リスト以外に、以前AIを使ったと明記されていたものの、それが削除された作品を2作確認しています。他にも、AIを利用して執筆されたが、そのことを公開していない作品については掲載しておりません。既に公開された作品でAIを使ったことが公表された場合は、本リストに掲載する予定です。
本リストに掲載されていない作品や、本リストへの掲載をやめて欲しいといった要望がございましたら、本記事のコメント欄か筆者Twitter(@AshizawaKamome)までご連絡ください。
作品リスト
表として掲載したかったのですが、noteには表を画像でしか貼れないため、以下の様式で記載しました。見づらくて申し訳ございません。
【様式】作者名(敬称略), 「タイトル」 初出年, 掲載サイト, 利用技術, 備考(あれば)
以下、作品リストです。全106事例。初出年、作者名順。
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫, 「官能小説自動生成ソフト七度文庫」として、第5回エンターブレインゲームコンテスト伊集院光特別賞受賞。複数パターン作成可能。各作品の中で内容が被っていると思われるものは省いた。
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫, 七度文庫が自動生成したシナリオを元に書き下ろした長編官能小説。初出年は推定。
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫, 七度文庫が自動生成したシナリオを元に書き下ろした長編官能小説。初出年は推定。
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫, 七度文庫が自動生成したシナリオを元に書き下ろした長編官能小説。初出年は推定。
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫, 七度文庫が自動生成したシナリオを元に書き下ろした長編官能小説。初出年は推定。
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2004, 作者個人HP, 七度文庫, 七度文庫が自動生成したシナリオを元に書き下ろした長編官能小説。初出年は推定。
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2005, 作者個人HP, 七度文庫, 七度文庫が自動生成したシナリオを元に書き下ろした長編官能小説。
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2005, 作者個人HP, 七度文庫, 七度文庫が自動生成したシナリオを元に書き下ろした長編官能小説。
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2005, 作者個人HP, 七度文庫, 七度文庫が自動生成したシナリオを元に書き下ろした長編官能小説。
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2006, 作者個人HP, 七度文庫, 七度文庫が自動生成したシナリオを元に書き下ろした長編官能小説。
・楠樹 暖, 「楠樹 曖 (bot)」 2011, Twitter, マルコフ連鎖、カットアップ, 4,867 件のツイート(2021/3/8時点)
・illumina, 「マルコフ文集」 2012, 小説家になろう, マルコフ過程,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2012, 作者個人HP, 七度文庫, 七度文庫が自動生成したシナリオを元に書き下ろした長編官能小説。
・きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ, 「コンピュータが小説を書く日」 2015, 研究室HP, オリジナル, 第三回星新一賞一次選考通過。AIを利用した作品として初めて文学賞の選考を通過した。Web上で試作が可能。
・きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ, 「私の仕事は」 2015, 研究室HP, オリジナル,
・きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ, 「人狼知能小説生成システム」 2016, 研究室HP, オリジナル, Web上で試作が可能。
・楠樹 暖, 「aiの呟き」 2016, 小説家になろう, カットアップ,
・木本雅彦, 「小説生成システム開発計画 - プロジェクトNUE」 2016, カクヨム, LSTM,
・妹尾雄大, 「アーティフィシャル・バトル・クライシス」 2017, 作者個人ブログ, マルコフ連鎖, ラノベ1万冊分(!)とのこと。
・ibis, 「【全自動小説執筆AI】Noveloid アイビスの創作記録」 2018, 小説家になろう, 多層LSTM, 製作者は、EEIC(東京大学工学部電気電子・電子情報工学科)所属(当時)。「小説家になろう」作者ページの活動報告に解説ブログへのURLがある。
・からあげ, 「異世界転生したら人工知能で「なろう小説」作家を美少女と目指すスローライフ」 2018, 小説家になろう, マルコフ連鎖、LSTM-RNN,
・ますとみけい, 「SFショートショート生成AI「KimagureShortShort」」 2018, 作者個人ブログ, オリジナル, 「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」関連のプロジェクト。
・葦沢かもめ, 「小説執筆AI「ロゾルス」がツイッター小説を書いてみた」 2018, 小説家になろう, マルコフ連鎖、GPT-2, ツイッター小説(140字小説)、合計490作。
・葦沢かもめ, 「水面の遺伝子」 2018, Kindle, マルコフ連鎖, AIの書いたあらすじを元に人間が執筆。
・超プリン体, 「なろう系小説のタイトルを自動で作ってみたぜイエ~~イ!!」 2018, 小説家になろう, オリジナル, 小説タイトルの生成のみ。
・唯乃なない, 「初めての小説(もどき)自動生成」 2018, 小説家になろう, オリジナル,
・books-company, 「BC号航海日誌45『AI小説第一出力作品』」 2019, 企業HP, マルコフ連鎖,
・books-company, 「BC号航海日誌48『AI小説第2回出力データ』」 2019, 企業HP, 不明,
・Futonize, 「素人による小説情報の自動生成」 2019, 小説家になろう, 不明,
・葦沢かもめ, 「リョウ」 2019, note, GPT-2,
・葦沢かもめ, 「兵、駆ける」 2019, note, GPT-2,
・葦沢かもめ, 「青じろい水」 2019, note, GPT-2,
・七度柚希, 「OpenAI の文章生成システムGPT-2が生成した文章、日本語訳付」 2019, カクヨム, GPT-2,
・@hoge1e3, 「ががかかがかかかががかかががか」 2020, カクヨム, オリジナル,
・@testtest, 「手遊びのマルコフ連鎖」 2020, カクヨム, マルコフ連鎖, マルコフ連鎖から着想を得て人間が書いていると思われる。
・kk_nf, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2020, pixiv, AIダンジョン,
・kk_nf, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2020, pixiv, AIダンジョン,
・kk_nf, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2020, pixiv, AIダンジョン,
・おっちぇ, 「高性能AIに100日後に死ぬワニの300日後を書いてもらったら宇宙戦争が始まったAIダンジョン」 2020, pixiv, AIダンジョン,
・カズ, 「GPT-2式赤ずきん1(翻訳)」 2020, pixiv, GPT-2(英語版),
・カズ, 「GPT-2式赤ずきん2(翻訳)」 2020, pixiv, GPT-2(英語版),
・カズ, 「GPT-2式赤ずきん3(翻訳)」 2020, pixiv, GPT-2(英語版),
・たいたい, 「世界探索」 2020, 小説家になろう, BunCho(GPT2),
・ふぃろ👿DMZ・DMN👿, 「ブロービニア」 2020, note, BunCho(GPT2),
・葦沢かもめ, 「東京の摩天楼が月光の冷たい息吹で凍る」 2020, 小説家になろう, BunCho(GPT2),
・葦沢かもめ, 「絡繰人形は物語を知らない ver.0.1」 2020, 小説家になろう, マルコフ連鎖, 作中の作家アンドロイドの作品に使用。
・葦沢かもめ, 「人工知能が書いた詩的短編集 無意識の向こう側」 2020, Kindle, GPT-2, 150文字以下の超短編小説を100作品収録。
・葦沢かもめ, 「砂漠のクジラ」 2020, note, GPT-2, 自動生成した文章を人間が編集。
・葦沢かもめ, 「AIが書いた小説をいくつか」 2020, note, GPT-2,
・葦沢かもめ, 「海辺の詩人にも似た美しい銃を」 2020, note, GPT-2,
・葦沢かもめ, 「【お題「犬」】Twitter小説まとめ」 2020, note, GPT-2,
・葦沢かもめ, 「しんのぼくについて」 2020, note, gpt2-japanese,
・葦沢かもめ, 「無題」 2020, note, gpt2-japanese,
・葦沢かもめ, 「壊れた用務員はシリコン野郎が爆発する夢を見る」 2020, バゴプラ, GPT-2, 第1回かぐやSFコンテスト最終選考通過作品。自動生成したあらすじを元に人間が執筆。AIを利用した作品として文学賞の選考を通過したのは2作品目。
・葦沢かもめ, 「サボテン・シャボテン」 2020, note, GPT-2、BunCho(GPT-2), 自動生成したあらすじを人間が編集した後、BunChoで自動生成しながら人間が編集。
・葦沢かもめ, 「無題」 2020, note, gpt2-japanese,
・葦沢かもめ, 「ハートシェイピール」 2020, note, gpt2-japanese, 「AI小説百話」より転載。自動生成した文章を人間が編集。
・葦沢かもめ, 「AI小説百話」 2020, Twitter, gpt2-japanese, AIが書いて人間が編集した小説を100日間毎日投稿する企画。人間のあらすじを元に自動生成した文章を人間が編集したものなど。自動生成した文章のみの作品も掲載。
・葦沢かもめ, 「吟遊作家リャカ」 2020, Twitter, gpt2-japanese, 3,010 件のツイート(2021/3/8時点)
・機械学習はいいぞおじさん(仮), 「機械学習を利用した小説(のようなもの)」 2020, ハーメルン, GPT-2,
・工藤知広, 「お父さん」 2020, カクヨム, GPT-2,
・工藤知広, 「猫物語(仮)」 2020, カクヨム, GPT-2,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2020, アルファポリス, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2020, アルファポリス, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2020, アルファポリス, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2020, アルファポリス, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2020, アルファポリス, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2020, アルファポリス, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2020, アルファポリス, 七度文庫,
・七度柚希, 「*****(R18のためタイトルは伏せます)」 2020, アルファポリス, 七度文庫,
・人間, 「吾輩は人間であるはずだ」 2020, note, BunCho(GPT2), (恐らくBunChoで)自動生成した文章を、開発者である大曽根宏幸氏が編集したもの。
・人間, 「吾輩はシリコンではない」 2020, note, BunCho(GPT2), (恐らくBunChoで)自動生成した文章を、開発者である大曽根宏幸氏が編集したもの。
・人間, 「AI失格」 2020, note, BunCho(GPT2), (恐らくBunChoで)自動生成した文章を、開発者である大曽根宏幸氏が編集したもの。
・人間, 「雨ニモマケズ」 2020, note, BunCho(GPT2), (恐らくBunChoで)自動生成した文章を、開発者である大曽根宏幸氏が編集したもの。
・人間, 「吾輩は人間である」 2020, note, BunCho(GPT2), (恐らくBunChoで)自動生成した文章を、開発者である大曽根宏幸氏が編集したもの。
・水麻衣似, 「夜職のグルメ(AIに続きを書かせてみたバージョン)」 2020, ノベルアッププラス, gpt2-japanese,
・大曽根宏幸, 「BunCho」 2020, 作者個人HP, BunCho(GPT2), 「AI TRPG」で、会話型での自動生成が可能な執筆支援ツール。その他に「あらすじ生成」「タイトル生成」ができる。ページ右上の「公開作品一覧」から、各作者がBunChoで公開している作品を読むことができる。複数の作品が公開されているが、試作して放置されたと思われるものもあるため、サイトのみ掲載。
・大曽根宏幸, 「ひびのべる」 2020, Twitter, GPT-2, 3.3万 件のツイート(2021/3/8時点)
・魔王の手下, 「ラリオンの魔法使い」 2020, 小説家になろう, AI Dungeon,
・@testtest, 「マルコフの憂鬱」 2021, カクヨム, マルコフ連鎖, マルコフ連鎖から着想を得て人間が書いていると思われる。
・ibis, 「【全自動小説執筆AI】 Noveloid2 アイビスの続・創作記録」 2021, 小説家になろう, ?, 「【全自動小説執筆AI】Noveloid アイビスの創作記録」の作者によるもの。詳細は不明。
・うすい, 「うすいのお茶の間開発日誌 -ノベル書きたくなるAI開発したい」 2021, ノベルアッププラス, GPT-2, BunCho(GPT2),
・うすい, 「[三題噺短編コンテスト] AI生成小説 『告白成功率0%の学校【バレンタイン物語編】』」 2021, ノベルアッププラス, BunCho(GPT2),
・葦沢かもめ, 「押入れ作家」 2021, note, gpt2-japanese, 「AI小説百話」32~38日目より転載。人間のあらすじを元に自動生成した文章を人間が編集。
・葦沢かもめ, 「永久の物語」 2021, note, gpt2-japanese, 「AI小説百話」71日目、企画内短編。人間のあらすじを元に自動生成した文章を人間が編集。
・葦沢かもめ, 「黒い骨」 2021, note, gpt2-japanese, 「AI小説百話」72日目、企画内短編。人間のあらすじを元に自動生成した文章を人間が編集。
・葦沢かもめ, 「森を歩く夢の中で」 2021, note, gpt2-japanese, 「AI小説百話」73日目、企画内短編。人間のあらすじを元に自動生成。
・水麻衣似, 「AIをオモチャにしてあれやこれやと弄んで小説家に嫁げない疵物にして汚したあげく小説を書いてみるか、と思ったが意外と勤勉なのでちゃんとした作品に仕立てて報いることにした」 2021, ノベルアッププラス, gpt2-japanese,
・星野☆明美, 「「小説公募に応募していたら、実際に飼っているセキセイインコが書いた小説を公募に出した」」 2021, 小説家になろう, BunCho(GPT2),
・兎庵あお, 「黒き血と、薔薇喰いの剣」 2021, カクヨム, BunCho(GPT2),
・兵頭浩佑, 「AI文芸誌『BungakuAI』」 2021, Twitter, ?,
・ルーナ, 「AI小説家 ver0.3」 2021, Twitter, GPT-2,
作品数推移
せっかくリストを作成したので、「AIを使って書いた小説」の年別推移をグラフ化しました。
まず2004年に一つのピークがあります。こちらは、七度柚希氏によって開発された「官能小説自動生成ソフト七度文庫」によるものです。七度文庫は、第5回エンターブレインゲームコンテスト伊集院光特別賞を受賞されています。現在も精力的に更新が重ねられており、多様なパターンの小説を生成することが可能になっています。作品数も34作で、堂々のトップ。まさにAI小説界の「レジェンド」の一人と言えるでしょう。
次に2011年頃にマルコフ連鎖を使った試みが見られるようになりました。ここで注目したいのは、楠樹暖氏による「楠樹 曖 (bot)」です。こちらはカットアップ手法を意識されています。カットアップ手法とは、ランダムに切ったテキストを繋いで新たな文章を作る方法です。ウィリアム・バロウズが小説に導入したことで知られています。楠樹暖氏の手法については、「aiの呟き」(2016年)の中で語られているので、そちらを参照して下さい。
2012年には、「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」が発足しました。星新一作品を分析して5年以内に面白いショートショートの自動生成を目指すことを目的としてスタートしたプロジェクトです。本プロジェクトの成果である「コンピュータが小説を書く日」が2015年に第三回星新一賞の一次選考を通過しています(※どの作品が一次選考を通過したのかは開示されていませんが、後にこの作品とともに経緯を記した書籍が出ているため、便宜上本作品を通過作品と見なしています)。Web上で実際に試作してみることも可能になっているので、試してみると面白いと思います。
2018年になると、ibis氏による多層LSTMを使った「Noveloid アイビスの創作記録」が小説家になろうに投稿され、Twitter上では「AIがなろう小説を書き始めた」として話題になりました(2021年に突如続編が投稿されていますが、詳細は謎のままです)。2016年頃から深層学習による文章の自動生成を用いた小説が散見されるようになってきます。マルコフ連鎖よりも精度はいいものの、AIだけで書くと意味がよく分からない文章になりがちでした。「コンピュータが小説を書く日」などは、あらかじめ人間が文章を書いておき、シーンごとに文章を選択したり、人物名などを変数として入れ込むことで、読める文章を生成していました。
2018年に制作し、2019年にBooks&Company社から電子出版された拙著「水面の遺伝子」も、マルコフ連鎖で生成した文章に着想を得て筆者が執筆したものです。Books&Company社は、キリロム工科大学と共同で小説を書くAIの開発に取り組んでいます。小説を書くAIの開発を目指す数少ない企業の一つです。
2020年の急激な増加の背景には、OpenAIが開発したGPT-2が2019年に発表され、2020年に入ってそれなりに良い精度の日本語の自動生成がやりやすい環境になってきたことが挙げられます。GPT-2を使用した事例は、英語版を翻訳したり、BunChoやAIダンジョンを使用したものを含めると49事例に上ります。その数はまだまだ増えていきそうです。ちなみに、AIダンジョンは2019年5月にリリースされ、最新版はGPT-3(GPT-2の発展版)を使用しています。
また2020年7月にGPT-2を利用した執筆支援ツール「BunCho」が公開されたことで、自らプログラムを作らなくても小説を自動生成できるようになった影響もあります。「BunCho」は、筑波大学の落合陽一研究室所属の大曽根宏幸氏によって開発されました。これまでに13作品が「BunCho」を使って公開されています。小説の自動生成へのハードルを下げた存在として、歴史的に意義があるといえるでしょう。大曽根宏幸氏は、自動生成した文章を自らの手で編集し、「人間」名義で作品の公開もされています。
2021年に入り、うすい氏による「うすいのお茶の間開発日誌 -ノベル書きたくなるAI開発したい」の連載がノベルアッププラスにて始まりました。他の方の作品を入力にしてGPT-2のモデルを作成するなど、周りの方々と交流しながら発展させています。AIとの創作活動の新しい形と言えるでしょう。文章の自動生成の高精度化に伴って、AIを創作活動へ持ち込むことに違和感の無い人、期待をする人が増えてきているように感じています。
2021年はこの4半期で13事例が確認されており、昨年と同等か、あるいは広く認知されればそれ以上の作品が発表されるものと思われます。現時点で作者数は31名(本リストの32名義のうち、同一人物による名義が少なくとも2つあるため)となっており、いよいよAIを使った小説だけでコンテストを開くことも夢ではなくなってきました。
一方で、AIを使った創作活動を行う作家が増えてきたことで、作家間で交流や情報交換ができる場が必要なのではないかと感じています(学会では何かあるのかもしれませんが)。現状では、「機械文芸部」というTwitter上のリストが作成されている程度です。どこかでゆる~く意見集めて、需要があるなら取り組んでみたいですね。
最後に
今後、AIの発展に伴って、AIを利用した小説は確実に増えます。かつては原稿用紙に書かれていた小説が、今ではPCやスマホ、タブレットで書くことが当たり前になったように、近い将来、AIを活用した執筆活動は珍しくなくなるでしょう。いずれはAIだけで人間と同レベルの小説が書けるようになると思います。
しかし現在に目を向けると、AIが書いた小説を歓迎する人もいれば、嫌がる人もいます。AIには心が無いのだから、良い小説なんて書けるはずがないという人もいます。
そういったAIへの偏見を変えるには、AIを使って良い小説を書くしかありません。本稿で紹介したようにAIを使った小説はそれなりに発表されており、中には文学賞の選考を通過した作品も2作品(「コンピュータが小説を書く日」と「壊れた用務員はシリコン野郎が爆発する夢を見る」。第8回星新一賞でもAIを使った作品が最終選考に残ったとの情報を確認している)ありますが、名作として評価されている作品は、まだありません。
もしかしたら、AIを使った最初の名作を書くのは、あなたかもしれません。ぜひ、試しにAIを使って小説を書いてみてはいかがでしょうか。
更新履歴
2021/3/27 作品リストに1事例を追加
2021/3/27 作者の解説を追加、作品リストに2事例を追加
2021/3/14 暫定版公開